歯医者に行ったら、思いがけず、その場で親知らずを抜いたはなし
今日はお休みなので、歯医者に行った。大人になってから歯医者に行ったのはこれで2回目だ。ここで僕の歯に関する話。
大学1年生の時。筑波の天久保宿舎、5角形の6畳に、ベッド、洗面台、机が置かれている、極狭宿舎での出来事。飯食っていたら、左下奥歯の詰め物が取れた。水を飲むと染みる。飯を食べると痛い。普通であれば、すぐに歯医者へ行くのだが、数日迷った挙句、歯医者に行かなかった。理由は「面倒だから」その後も行かなかった。
痛みはいずれ慣れるのである。しかし、僕の奥歯は深い穴が開いたままだった。開いたまま、大学生活を過ごし、社会人となった。
数年前の話。金曜飲み会で翌日起きると、「ん、前歯がざらつくな」鏡で見るとほんの少し欠けている。なぜ欠けたかは、分からない。路上でケンカなんて絶対にしないし、理由は分からない。恐らくカラオケに行ったので、酔ってマイクを噛んだか、マイクで前歯をぶつけたか、、、。まあ理由は分からないが、いずれにしても僕の前歯は欠けている。よく見ないと分からないけど、前歯が欠けているのはカッコ悪い、恥ずかしい。そこで、高校生振りに歯医者に行くことにした。
これから平日に行くことも考えると、池袋の診療時間が長い歯医者を選択した。予約時と先生に診てもらう時に「なぜかわかんないんですけど、前歯が欠けまして、、、」と伝えるのは恥ずかしかった。
治療は、欠けた前歯を削って滑らかにして終わり。しかし、前歯以外に虫歯が4個あることが発覚した。「まあ歯医者行ってないから、そりゃそうだろうな」と思いつつ、「虫歯ってなっても私生活に全く影響ないんだな」と思う。
と同時に、「歯科助手?のお姉さんて可愛い人多いなー」と改めて思う。制服とマスク効果は絶大で、雪山と同じく通常の30%増しでかわいく見える、つまり盛れるのだ。
前歯を当日直して、その後2個虫歯を治療したのだが、仕事が忙しく、行くのが面倒になり、残り2個の虫歯は放置したままにしてしまった。
そして今日である。
半年前位に、ランチ後左上の奥歯に、食べかすが詰まっているのが気になった。思わず指で取ると、もちろん食べかすが挟まっていた。そして臭い。これは口臭の原因になると思い、それから、左上奥歯を念入りに磨くようになった。
この左上奥歯がすごく、歯磨きをすればする程、食べかすが出てくる。「え、俺の奥歯はブラックホールかなんかにつながっているのか?それとも四次元なの?」と思う程、次から次へと食べかすが、無限に出てくるのである。
それから、歯磨きの最後に奥歯のブラックホールを攻めるようになるのだが、攻めまくって血が出る程磨いた後でも、食べかすが出てくる。磨いて赤い唾と一緒に食べかすが出る。5回ほどこれを繰り返して、歯磨きを終える。
ある日、ラーメンを食べた後、その奥歯に麺が挟まった。指でも、つまようじでも、舌でも取れない。歯ブラシで取れたのだが、1.5㎝くらいの麺が挟まっていた。「どんだけ収納力あんだよ!」と思わず心で奥歯に突っ込んでしまった。
奥歯に気づいてから、約半年。とうとう本日歯医者に行くことにした。まず、どこの歯医者に行くか迷う。家の近くにある歯医者にするか。「でも、住宅地にある歯医者に可愛いお姉さんなんていないだろうなー」と思い、職場近くの御茶ノ水の歯医者にするか迷ったが、アクセスを重視して、家の近くの歯医者に行くことにした。
電話で予約しようとするも、休み時間だったのか、繋がらない。ここで「あーめんどくさい」と思い歯医者に行くのを止めようとしたが、本日は違う。1時間後に電話をしたらつながった。なんか恥ずかしくて「奥歯に食べかすが溜まりまくるんですよ」とはもちろん言えず、「ちょっと奥歯が、、、あと虫歯があると思うんで、診てもらいたいです」と伝え、早速15分後に行くことになった。
歯医者のドアを開けると、受付は予想通りおばさんだった。しかし、それは想定内だったので問題ない。初診の為、治療前のアンケートを書き、診察室のドアを開ける。先生と受付のおばさんと僕はしかいない。診察台に座ると、治療前なのに緊張する。歯医者と病院は何歳になっても嫌なもんだ。
先生に「どうされましたか?」と聞かれ、奥歯に食べかすが溜まりまくること。歯医者に全然行ってないから虫歯があること。この2点を伝えた。先生に奥歯を見てもらうと、「あーこれ親知らずですねー」と、まさかの親知らずだったのだ。「え?親知らずって大人になって出てくるんですか?」と聞くと、「通常20歳くらいまでですねー、おいくつですか?」「33歳です」なんかまた恥ずかしくなった。歯医者はどこまで僕を辱めるのだ。
「とりあえずレントゲン撮りましょう」ということで、レントゲン室へ。椅子に座り、器具に顎を乗せ、前歯で器具を噛み、イーとしながら目を瞑る。頭の周りで「ピー」という音が鳴り、レントゲンが回っている感じがする。このピーという機械音で単純に怖いと思ってしまった。目を瞑っているので、ヒトが人造人間に改造される時、イスに固定されて洗脳される場面が浮かび、余計怖くなった。
撮影後は、先生とレントゲン写真を見る。どうやら、親知らずが虫歯となり大きな穴が開いているようだ。そこに食べかすが溜まるのだろう。つまり、親知らずが出てきたのではなく、昔からあったのが虫歯になり、半年前から気になったということだ。レントゲンを見た後、先生は普通に「抜いちゃいますか」と「ランチ後にコーヒーでも飲みますか」くらいの軽い感じで言ってくる。
「お、親知らずを抜くだと、、、」親知らずを抜くと顔がパンパンに腫れ、そもそも歯を抜くなんて痛そうで怖すぎる。思わず「抜くのってどれくらい痛いんですか?」と聞いてしまった。「麻酔するから大丈夫ですよ」と、いう当たり前のことを言われ、「でもかなり穴開いてるから、うまく取れないかもねー、ほら神経まで行ってるし」神経まで行くほど放置していたのか。ハリセンボンのはるかみたく、僕の歯神経は死んでいるのかもしれない。
ちなみに「取れなかったらどうするんですか?」と聞くと、そのままとのこと。「まあ、歯神経死んでいるから問題ないか」と、変に自己解釈してしまった。
思いがけず親知らずを抜くことになり、まずは麻酔だ。先生が注射を持った瞬間から、怖くなり目を瞑った。歯の周りに何カ所か麻酔を打つのだが、2回だけクソ痛かった。普通に、歯茎へ針を刺されている痛さだ。実際にそうなのだが。先生は「ごめんね」と言いつつ麻酔完了。左の感覚がなくなってきた。「麻酔でこれだけ痛いのならば、歯を抜くって、、、」怖くて緊張してきた。
そして、親知らずを抜くことに。まずは、「歯をゴリゴリ押しますねー」と言われ、本当に奥歯をこれでもかと棒で押された。ゴリゴリ、バリバリ と歯が押され、歯が砕かれている音が、脳にダイレクトに響く。
石田衣良の池袋ウエストゲートパーク、骨音という話で、骨を折る音は脳に直接響いて、最高に気持ち良い! というホームレスを襲って骨を折る音を録音するバンドマンがいたが、自分の歯が砕かれる音は、脳に直接響いて、最高に気持ち悪い!
恐怖感でいっぱいになった僕は、「先生の手が滑りゴリゴリ棒が歯茎に当たったら、、、 」もう怖くて仕方なかった。しかし、先生は歯をピンポイントでゴリゴリ押し、歯茎に当たることはなかった。
その後、ゴリゴリ棒から、歯を抜く為のペンチみたいなもので歯を掴まれる。左右前後に歯を揺らされて、とうとう歯が抜かれた。歯を抜く際に痛みは全くなかった。
血だらけの歯は予想よりデカかった。そして、虫歯でめちゃくちゃ欠けてて汚かった。
その後、奥歯に綿を詰められ、薬を飲むこと、アルコールNGなこと、抜いたところに早くかさぶたを作りたいので、口の中をなるべく乾燥させること等の説明を受けた。
「え?この風邪が流行りまくって、乾燥は禁物なのに、口の中をなるべく濡らしちゃいけないって、大丈夫なの?」「そもそも鼻喉弱いので、少しでも乾燥させたら、喉痛くなっちゃうのに、乾燥させるの?」
今後の生活に不安を感じながらも、「親知らずって結構簡単に抜けるんだな、とりあえず抜けて良かった。」と恐怖感からの安堵感に浸りながらこれ書きました。