家族との食事会
杏林大学に入院していた時、担当の言語聴覚士Hさんから言われていたのは、「家族と食事会することを目標としてください」ということだった。その時は、まだシリンジで口の中に入れたわずかな水が横を向いて少し飲める、とかゼリーの欠片がやっと飲み込めるという状況だったので、とても家族との食事会などできるとは思えなかった。
しかし、完全に元に戻ったとは言えないものの、ほぼ大抵のものがたべられるようになったので、緊急事態宣言が解除されたのを機に、食事会に行くこととなった。
長女のフレンチがいいという希望もあり、10月2日(土)、カジュアルに食事のできる吉祥寺のレストランに家族4人で行ってきた。
杏林大学に入院している時に、父の日に子供たちがプレゼントしてくれたシャツを着て出掛けた。
本当はワインをボトルで頼みたかったのだけど、うちの家族はお酒はあまり飲まないため、それぞれ好きなものを飲むことにした。自分はスパークリングワインが好きなので、スパークリングワインが退院後に初めて飲むビール以外のアルコールとなった。ただビールもそうなのであるが、喉越しで楽しむ炭酸飲料は、自分のように嚥下障害があるとこれまでのようにあまり美味しく感じないのだ。スパークリングワインも同じであった。その後白ワインに切り替えたのだが、ワインは美味しく飲むことができた。今後、お酒はワインとか焼酎メインがいいのかも知れない。
レバーペーストとパンも問題なく嚥下することができた。
18:00から食事会を始めたのだが、武蔵野陽和医会病院に入院していた時、夕食の時間は18:00だった。今頃、夕食が始まってるんだろうなぁ、と思った。あの時は、本当に食事が楽しみであった。リハビリを頑張って、食事レベルが上がる度に食べるものすべてが美味しく感じられた。
あの時には、このような食事をすることができるようになるとは想像できなかった。もし回復できなかったら、家族がこういう食事をしたくても、自分がいることで制限することになってしまったのだろうと思うと、回復してよかったと思うのであった。
武蔵野陽和会病院に入院している時、カロリーが足りないため、食後にプリンを食べることが主治医に許可されていた。この夕食後のプリンも入院生活における数少ない楽しみの一つであった。回復してこのようなデザートを食べることができるようになったというのも非常に感慨深い。
リハビリ時に目標としていた「家族との食事会」は達成することができた。今後、美味しいものを食べに行くこともあるだろうが、その時には入院時に体験したあの「どん底」を思い出すだろうし、思い出す度に食事できることの幸せを感じることができるだろうと思っている。