「内湾」や「魚市場」周辺が楽しい理由
気仙沼という町は、車という移動手段を持たない者にとっては、なかなか手強い。いろんなところに坂がある。しかも、かなり急だったりする。坂があるということは、小高い山や丘がたくさんあるということ。でも、そんなに高い訳でもない。歩いて越えられなくもない。でも、向こうが見えないから、知らない者はどうしても坂の向こうへ行くことをためらってしまう。
私は最初の三日間、気仙沼駅前のホテルに泊まった。気嵐を見るのが第一目的だったので、内湾にある旅館に最初っから泊まればいいじゃないか、と言われそうだが、数日の滞在で、BRTに乗って、柳津経由で登米町(とよままち)に行く予定だったから、『おかえりモネ』で出てきた「南気仙沼駅」よりは、便利がいいんじゃないのかと、単純に思っていた。
気仙沼駅前から、毎日のように内湾まで歩き、その足で魚市場まで足を伸ばし、開館前のシャーク・ミュージアムも、ぐるりと歩いて回ったりした。ちょっと先には宮脇書店。さらに歩くと南気仙沼駅が見える。
あ、ミヤコーバスの営業所もこんなところにあるのか、と思ったが、そのほかには、見慣れた街特有の大きな店舗が見当たらない。大きくて色鮮やかな看板の、どこの街にもあるお店。例えばゲオとかレンタカーとか、紳士服とか、自動車のディーラーとか。そういう看板やお店が見えない。だから、街を歩いているはずなのに、どこか違う世界を歩いているような感じ。
はたと気づいた。そう!この感じはテーマパークだ。そうなんだ。初めからあった自然と、街づくりを進める人が一緒になって、来る者を引きつける魅力に溢れている。自分の住んでいる街にもあるような店舗を見れば、日々の生活を想ってしまう。でも見えない。だから、旅気分が醒めない。どんどん歩きたくなる。
内湾は、とにかく囲まれ感というか、抱かれ感というか、温かく包まれているような感じになる。周りの山が風よけにもなっているから、晩秋でも寒くなかった。360度、どっちを観ても絵になるというか、美しいのが内湾だ。しかも、主要な新しい施設が、ほぼ東を向いている。正面から朝日を浴びる情景は、また何とも言えない。
魚市場もほぼ東向きだ。これがいい。海の方向から朝日が昇る。毛嵐が最も美しいのは、毛嵐が逆光で朝日に輝く瞬間だ。対岸の半島のおかげて毛嵐のバックは黒くなるから、コントラストが際立つ。ため息が出るほど綺麗だ。
内湾の船着場も、魚市場も東を向いているから、たとえ毛嵐が出なくても、雨雲が出てなければ、朝日が拝める。だから、未明から日の出後30分くらいの東の空は、雲が湧いたり消えたり、空の様子が目まぐるしく変化してて面白くて美しい。ちょっと寒くはなるが、冬でも風の無い日なら、美しい朝の空が見られると思う。
やっぱり、内湾と魚市場周辺は、素敵だ。もっともっと歩きたい。毎日でも歩きたい。