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なぜ一太郎なのか?

先日「WZエディターのすすめ」という記事をアップしました。そのさい一太郎も併用していると書きましたので、今回は「なぜ一太郎なのか?」をお話したいと思います。

一言でいうなら、自力で、かつできるだけ楽に自作の小説をKindle本にするためです。いろいろ試してきましたけど、いまのところ一太郎が一番楽できます。

ですが、これから紹介する方法は、XHTMLを自在に操れる人から見たら、まったくお話にならないと思います。この記事はあくまでプログラミングの知識がない、ぼくのような素人さんが対象でございます。そもそもKindle本を作りたい人も多くないでしょうけど(汗)。

では、はじめましょう。


概要

ワープロといえば、いまはWordの一人勝ちでしょうか。ぼくもMicrosoft365を契約しているのでWordは使えます。それでもKindleを作るには一太郎がいいと思う理由が4つあります。

1、校正がWordの「校閲」より使いやすい
2、テキストスピーチがWordより聞きやすい
3、EPUBに書き出せる
4、EPUBのレイアウトもある程度できる
番外、Macには「Pagesの呪い」がある

以上の4つです。え、番外の「Pagesの呪い」が不吉? それは記事の後半で解説するとして、順を追って解説します。

校正がWordの「校閲」より使いやすい

小説を書き終わったら校正しなきゃいけません。Wordと一太郎には誤字等を見つけてくれる機能があります。ビジネス文章や公用文なら、どちらもデフォルトで用意された「文章タイプ」を選ぶだけで十分かと思いますが、自身の小説を校閲したいなら、設定で細かくカスタマイズしたほうがいいです。

Wordの「文章校正の詳細設定」
一太郎の「文書校正設定」

Word、一太郎ともに、チェック項目は細かくカスタマイズできます。小説の場合「くだけた表現」を括弧内はチェックしない(セリフだから)よう設定しないと、間違いとして指摘されすぎてしまうので、カスタマイズは必須ですね。これら設定項目は一太郎のほうが多く、ぼくにはWordより使いやすいく感じます。

また校正中の画面も、一太郎のほうが便利です。

一太郎、構成中の画面

左に「見つけた箇所の一覧」が表示されて、クリックすればその場所へ飛べます。そして右側には「校正の内容」が表示されます。ここで直すことも無視することも、あるいは辞書に登録して、以後引っかからないようにしたりの操作が行えます。

Wordはあっさりしてる。

Word、校正中の画面

Wordも右側に「校正内容」が表示されますが、文章を直す(あるいは無視する)必要最小限の操作しかできず、それを「わかりやすい」と感じるか「かゆいところに手が届かない」と感じるかで評価は変わりますかね。ぼくは「かゆいところに手が届かない」と感じちゃうし、一太郎にあった「見つけた箇所の一覧」がないのも残念です。

テキストスピーチがWordより聞きやすい

一太郎には「詠太」というプラグインがあります。テキストを読み上げてくれるアプリです。

そもそも「なぜテキストを読ませたいのか」ですが、文章を目で追っているだけでは誤字や脱字を見逃してしまうことがあります。1ページ程度の短い文章なら、めっちゃ集中して目で探せばよろしいでしょうけど、何百ページもある長文の小説では、かな〜り難しい。だから「耳でも探す」のです。

プラグインを起動したらこのウィンドウが出ます

日本語は女性2人、男性2人の4名。英語は女性1人。みなさまコンピューターの合成音声の域を出てはいませんが、Wordの校閲の中にある読み上げよりもだんぜん聞き取りやすいです。中でもぼくは、RISAさんが好みでございます。ちょっとお姉さんぽいお声なので(笑)。

余談ですが「詠太」に組み込まれているのはHOYA株式会社の「ReadSpeaker」という技術です。大元はPENTAXが持っていた技術で、テレ東の「モヤモヤさまぁ〜ず2」という番組でナレーターやってる「ショウくん」もこちらの音声です。JUSTSYSTEMにHOYAのページがリンクされていますから、この記事にもリンク張っときますね。

さらに余談ですが、MacにもテキストスピーチがOSの標準機能として備わっています。ですがお世辞にも使い勝手はよくない。あちらは文頭からの読み上げと、範囲選択した部分の読み上げしかできないのです。疲れたからつづきは明日〜。とMacを落としてしまうと、明日もまた文頭から読むことになる。だったら範囲選択で任意の場所を読ませればいいじゃん。と思われるかもしれませんが、間違いを見つけたら再生を止めて修正、また読み上げ開始を繰り返すので、長文ではいちいち範囲選択なんてやってられないのですよ。以上、余談終わり。

閑話休題。

残念なのは、Wordの読み上げ機能が追加料金なしの「標準」なのに対し「詠太」はプラグインなので、素の一太郎には入っていません。さらに単体での購入もできないようで、「詠太」がほしかったら、お高い「一太郎プレミアム」を購入する必要があります。

EPUBに書き出せる

いままで解説した「校正(校閲)」と「テキストの読み上げ」はWordでもできまが、ここからはいよいよ一太郎の独壇場ですぜ。

ご存じのとおり(ご存じですよね?)、わたくしはKindleで小説を出版して生計を立てておりますが、Kindleファイルを作るにはEPUBが必要です。

EPUB(イーパブ)とは、国際電子出版フォーラムが策定した電子書籍ファイルフォーマットのことで、電子書籍の事実上の「標準規格」です。

細かいことをいうと、Kindleは「Kindleファイル」で出版されます。でもその大元はEPUBなんです。EPUBにした小説をAmazonに送信すると、AmazonさんがKindleファイルに変換するという仕組み。EPUBをそのまま使わないのは、おそらくKindle端末以外で表示されたくないからでしょう。

おっと、また横道にそれてしまった。

ともかく、EPUBファイルを作らなければならないのです。これはWordではできません。WordファイルをEPUBに変換してくれるWebのサービスはあります。あと詳しくないのですがWordにアドインするアプリもあるようです。ですがWord単体ではできないのです。

そこで一太郎くんの登場。そうです。彼はできるのです。

一太郎のEPUB変換画面

EPUBへの保存(変換)を選ぶと、上のウィンドウが出て、表紙を付けて保存できます。

またまた余談ですが、一太郎はEPUBどころかKindleファイルにも変換できます。でもAmazonが元ファイルにEPUBを推奨しているので、ぼくはKindleファイルを直接作らず、EPUBをAmazonに送信するようにしています。

一太郎はKindleファイルにも変換できる

ぼくは大元のテキストファイルを「WZエディター」で打ち込んでいますから、完全なワンストップというわけではないですけど、テキストさえできてしまえば、あとは一太郎で完結するのです。ほかのアプリやWebサービスを介在する必要がないのは、とてもありがたい。

EPUBのレイアウトもある程度できる

本には表紙があります。中扉がきて本文があり、最後に奥付がありますよね。EPUBの中身はマークアップ言語ですから、基本XHTMLを自在に操れれば自力でレイアウトを定義できるはずですが、ぼくはプログラムを勉強したくないし……いえ正直にいいます。勉強しようとしたことはあるのですが、脳のキャパが足りず三日で断念。いわゆる三日坊主。

そこで一太郎くんに頼りたいと思います。

ですがっ!

残念ながら一太郎くんは理想のツールとは言い難い。一太郎上ではきちんとレイアウトできてるのに、EPUBに出力すると、なぜか設定が反映されない箇所があるからなんです。

まずは中扉の設定からやってみましょう。

一太郎の「書式」にスタイルせっていがあります。

一太郎の「書式」メニューから上記の中扉や奥付の設定ができます。ここで中扉の設定を「縦書き」「中央」にします。

中扉の行そろえを「中央」にしても……

中扉の行そろえを中央にしても、じっさいは右端にしかなりません。

同様に奥付の設定も――

上端にしかならない

奥付だけ「横書き」にして下端にしたいのですが、横書きにはなるんだけど下端にはできません。

というわけでレイアウトは「ある程度できる」くらいの気持ちじゃないとやってられません。完ぺきを求めるなら、冒頭に書いたとおりXHTMLを勉強するか、Kindleファイルを作れるプロにお金を払えということです。

番外、Macには「Pagesの呪い」がある

EPUBに変換できるワープロソフトはほかにもあります。その一つがMacの「Pages」です。これはいいですよー。Mac買えば無料(Mac買ってるんだから無料じゃないけど)で付いてくるし、動作もサクサク軽いし。もちろんタイトルページや奥付も作れます。

なのでぼくも「召しませMoney!8」をKindleにするとき、Pagesで作ったのです。あとで大変なことになるとも知らず……

じつはPagesには「縦書きにしたはずのKindle本が、環境によってなぜか横書きになってしまう」という呪いがあります。

原因はわかりません。Appleが悪いのかAmazonが悪いのかもわかりません。だからもう「呪い」というしかない。

また問題を複雑にしているのは「環境によって」という部分。ぼくはPagesでEPUBを作ったあと、Macはもちろん、WindowsでもKindle端末で正しく表示されることを確認しました。それでも読者の方から「横書きになってしまう」という報告を受けました。自分の環境で再現しないので原因の探りようがない。もしやAmazonに送る前のEPUBでは大丈夫でも、AmazonがKindleに変換したとき不具合が起きたのかと思い、実ファイル(AmazonのKindleファイル)を購入してMacとWindows、さらにiOS(iPhone)、Android(Xperia1 Ⅲ)で再度確認したのですが、やはり横書きにはならない。

ともかく「Pages」が原因なのは間違いないので、あわててWindowsの一太郎で作り直したのでした。

それからいろいろ調べたら、もう数年前からこの問題は知られていて、仮にPagesでテキストを作っても、EPUBにするときは他のアプリか、Webのサービスを使うしかないということがわかりました。

数年前から放置されているので、おそらくAppleもAmazonも、Pagesの問題を解決する気はないようです。

MacのPagesでEPUBを作り、Kindle本の出版を考えておられる方がいたら、その本は「横書き」になさったほうがいいです。なにせ英語圏の人が作った、もともとは英語専用のアプリですからね。

という意味で、日本人が日本人のために作った一太郎は、とても貴重なアプリなのかもしれません。

以上で「なぜ一太郎か?」の解説を終わりたいと思います。

お後がよろしいようで。

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