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冷却する風の気持ちを考える
こんにちは、テルです.
前回の投稿からかなり時間が経ってしまい申し訳ありません.ネタと時間があまりないものでして...
さて、今回の投稿内容ですが、タイトル通り、ノズルを冷却する風の気持ちを考えてみようと思います.
なにを言っているんだと思われても仕方のないことですが、3Dプリンタを使いこなすうえではそれなりに大事な内容です.(ほんとマジで)
注意事項
この記事は、タイトル通り考えたりするだけです.実際の改造をまとめたものではありません.
なので、この記事で私の考えを適当にまとめて、実際の改造の進捗についてはTwitterでの報告のみに代えさせていただきます.よろしくお願いいたします.
ヒートシンクを冷却する風の気持ち
まずはホットエンドについているファンについて簡単ながら説明させてください.
以下の写真を見ていただきたいのですが、3Dプリンタのホットエンドには、基本的に2つのファンが備わっています(KINGROONのようにファンが1つしかないプリンタもあります).この場合、一つはヒートシンクを冷却するファン(正面の大きいファン)、もう一つがフィラメントを冷却するファンになっています(側面のターボファン).
ヒートシンク冷却のファンについては以下のサイトで分かりやすく書かれていますのでご一読を推奨いたします!
ホットエンド回りでもっともよくあるトラブルである詰まりを回避する秘訣は、まずはとにかくヒートシンク(というか、ヒートブレイクの上部)を急冷することです。その理由はというと、ホットエンドは、カートリッジ側が熱く、ヒートシンク側が冷たくなります。その間にトランジション・ゾーンという、材料が通り抜ける際に固体でも液体でもないグミみたいな状態になるゾーンがあるのです。概ねヒートブレイクのくびれの内部にあたります。このグミみたいな状態においては、材料は上から押し付けると横に広がろうとする妙な挙動を示します。この現象が溶けた材料の逆流を抑えるガスケット役目も果たすのですが、同時にヒートブレイクと壁面の摩擦が増大し、詰まりを起こす原因にもなります。詰まりを回避するにはこのゾーンをなるべく短くする=上部を急冷することが必要です。(原文まま)
以上から、3Dプリンタのホットエンドには、必ずヒートシンクを冷却するためのファンが取り付けられています.(英語ではCooling Fanで探すといいと思います)
以下の論文は、ヒートシンクを冷却するファンダクトの形状についての考察がなされているものになります.英語ですが、これも見ておくと、ファンダクトを改造するうえで参考になると思います.
INVESTIGATION OF THERMAL EFFECT ON 3D PRINTER LIQUEFIER OF DIFFERENT COOLING FAN NOZZLE GEOMETRY(Research Gate)
そうなると、冷却をスムーズにするために、ホットエンドは全金属のメタルホットエンド(Metal Hotends)で、排熱が良好な筐体(ダクト)、風量が多めのファンが良いと考えられます.
フィラメント冷却用の風の気持ち
では、もう一つのファンについて見てみます.
このファンはノズルに向かって風を送っていますが、ノズルを冷却するためではなく、押し出されたフィラメントを冷却するためについています.
押し出された直後のフィラメントはそれなりに高温であり、冷却しないと固まらず垂れてしまったりします.(ブリッジやオーバーハングに影響が出ます)
また、固まらないまま次の層を印刷すると押し出された直後のフィラメントと結合して、引っ張られるために、平面に穴が開くといった現象になったりします.(平面精度や,ディティールに影響します)
このような現象を起こさないために、押し出したフィラメントを適宜冷却していく必要があります.
これによって造形精度が上昇し、ブリッジや、オーバーハングで垂れる割合がかなり減少し、表面のディティールもはっきりします.
しかし、めっちゃ冷却すればいいじゃん!って言われるとそれはそれで問題がないわけではありません.端的に、強度が下がります.
なぜかと言うと、冷却が急に起こると、先ほどとは逆に、積層間でのフィラメントの結合が適度に行われず、積層割れが起きやすくなります.
3Dプリントでは、フィラメントが非晶質で造形されていくために、そもそも材料強度が落ちている状態なので、冷却を過激にするのはやめたほうがいいかもしれません.(非晶質の問題を解決するために、アニール処理というものがあります.これによって結晶化を促進し、耐熱性と機械的強度を上げることが可能です)
アニール処理についてはNature3Dさんのブログで詳しく取り上げられています.ぜひ読んでみて実践してみてください
以上で、とりあえずヒートシンクと、押し出したフィラメントをしっかり冷却しないといけないことは分かりだしたかなと思われます.
モデルを探してみる
とりあえず、実機を見てみます.
Ender 3でやっぱり問題かなと思われるのは、フィラメント冷却用のターボファンですね.この状態だと吸い込んだ風を方向を絞ることなくそのまま排出している形になりせっかく取り込んだ空気がかなり分散されてしまう構造です.
これまではこの状態で印刷してきたのですが、印刷精度を向上したいのならやっぱり気になってしまう.
で、Thingiverseから探してみました!SATSANAさんが作っているのが個人的にいいなと思っています.
↓このモデルのいいなと思う点↓
・ヒートシンクに集中的に風を送るテーパがある
・フィラメント冷却のために、2方向から範囲を絞って送風できる.
・配線が綺麗に隠れるように設計されている(ここもかなりポイント高い)
・これまで使っていたファンを2つともそのまま使用できる
・Remixesが豊富
もし、ターボファンもついでに交換したい場合は以下のRemixを用いるのがいいかなと思ったりします.
これは、ターボファン2個付けで、双方からムラなく風を送ることができます(1つだと多少のムラがあると思うので、多くのファンダクトは2方向からフィラメントを冷却するモデルが多い気がします)
ターボファンは以下のモデルが使えそうかなと思います.とりあえず、冷却に問題がなさそうならRemixを使う必要はなさそうです.
たぶん、次に問題視するのは、騒音のほうだから、正面ファンを静音ファンに変更すると思います.
でも静音ファンはほとんど12V駆動なので、降圧回路を導入する必要がありますね...面倒ですがやるしかない
おわり
今回のブログはこのぐらいでしょうか.
風の気持ちになってファンの役割を確認し、最後にファンダクトを探してみました.
Thingiverseにはほかにも色々なファンダクトが公開されています.本当にありがたいです.この中から気に入ったものを見つけて改造してみてください!
私も色々見てみて、静音性を追求する場合はほかのモデルを採用する可能性が高いです(静音ターボファンって矛盾してる感があるので、ターボファンを用いない形のモデルが必要かなと目途を付けております)
最後になりますが、改造の進捗はTwitterをぜひ確認してみてください!
それではまた.