香りの言語化
言語化、もっと共有できないのかなという話。
1.Do You Know,"NOSE knows"?
NOSE knowsというポッドキャストをご存知か?
ニッチフレグランスを取り扱うNOSE SHOP代表中森さんとライターの夏生さえりさんが香りについてなんとか言語化する"香りを音声で伝える"面白いポッドキャストである。
シプレ、フゼア、グルマン、アンバー、レザー、スエードなど香水の分類から名香解説をしたり、NOSE SHOP店員さんの推し香水語り(熱量がすごい)などどの回も楽しく聴けるため香水好きは是非聴いてほしい。
やはり香水のプロ及び言語のプロ、聴いていてなんとなくイメージが湧くような香りの表現である。しかし、やはり言語化は難易度高くないですか…?
2.香りと言語表現のプロ
"プロはスゴイ、俺はいろんな意味で思った。"
中森さんはやはり香水の知識と香水愛で熱意ある、そして丁寧な解説をしてくださりますし、夏生さんはなんとか言葉にしようと色々な引き出しから言葉を編んでいく。
特にお二人は物語性を表現するのがお得意のように感じる。香水から付けている人のイメージ、関係性などを表現していて面白い。
やはり圧倒的なインプット量を感じる…そしてポッドキャストの中で実際にさまざまな香り(香料だけでなくスパイスや、シュールストレミングまで!大変に体を張っている)をさらに体験している。そりゃあアウトプットも出ますな。
香水は好きだが、香水に使われている香料単体や元となる、例えばアンバー、トンカビーン、ベンゾイン、ピンクペッパー、チュベローズなどを単体で体験するという経験を意識して行ってこなかったな、とNOSE knowsを聴いて大変に反省した。香水という完成した作品ばかりに目を向けて、何がその作品を作り上げているか、自分がその作品の中の何を求めているかまで考えていなかった。(オタク失格)
さまざまな香水を嗅ぐことで"どんな香料を使えばこのような香りになるのか"は知識として得ていても、単体をインプットしてこなかったのである。
3.香りのインプット
香りがお好きな方々、インプットしてますか。ベチパー単体嗅ぎましたか。シダーウッド嗅ぎましたか。パチョリは。アンブレットシードは。みかんは嗅いだことあるかと思いますが、マンダリンとの違いは?東南アジア産マンゴーと沖縄のマンゴーの違いは?イメージするレモンはシチリア産ですか?バニラはマダガスカルバニラを嗅ぎましたか?私は一つも嗅いでません。意識してきませんでした。
これはいかん、大変よろしくない。そりゃあ言語化もできません。なぜならインプットが無いから。
香水に使われているけど何かわかっていないものすらある。ベンゾインとか最近まで化合物系かと思っていた。いやー、反省反省。
インプット、ちゃんとします。いろんな香りを嗅ぎます。
だがこれで解決ではない。香水は単体の香料をただ混ぜ合わせた香りではない。単体のインプットの先に、更に複合的・複雑な香りの理解と表現が待ち受けている。
4. ノート、アコード、ピラミッド、ホイール
香水は香調、ノートと呼ばれる表現を用いる。基本的にはトップノート、ミドルノート、ラストノートと3段階で香りが変調し、それを香りのピラミッドとして表現する。
また、ノート同士が更に調和し合うとアコードと呼ばれる表現が使われる。
また、フレグランスホイールという円でオリエンタル、ウッディなど分類を分けたものもある。
では、香水について誰かに伝えたい時にどれが一番適しているだろうか。
好きな香水のジャンルを言語化するにはホイールが良いだろうし、どんな香料が使われているかはノートで伝えられる。アコードはそもそもあまり見ない表現かもしれない。ピラミッドは香水の変化を感じるのに役立つ。
…あれ、香水にあまり興味ない人や初心者にこれだけで伝えるの難しくない…?
どんな香りか、を伝えるのは本当に難しい。某有名ファッションブランドの香水なんて「爽やかなものならこれとこれですねー」とか大変雑なおすすめをしてくる。(香水に詳しくはない人にはこれでいいのだろうけど)
かといって香水初心者に「ウッディなベースの上にアイリスとジュニパーベリーが香り、その中にピリッとピンクペッパーの刺激が加わる。ミドルに移るとバニラの甘さがシダーウッドと調和し…」みたいなオタク語りなんてしたらもう新規参入が難しいコンテンツになってしまう。
一体どうすればいいんだっ…!
5. 香りの言語化
まあ何が言いたいかと言いますと、香水を伝えるのに香り自体よりも情景やつけていそうな人とかを伝えられたら素敵だし、それをもっと人と話したり香水屋さんでも取り入れてくれないかなぁという話です。
もちろん香りってすごく個人的な体験だし、香りの立ち方も人によって全然違ったりする(自分は何付けてもインセンス感が出る)ので難しいんですけど、ナラティブというか物語性を伝えて行けたらなと。
香水のレビューとかで「バニラが華やかに香って冬にぴったりです!」って言われるよりも、「冬、マイナス気温の中ふらっと入ったカフェで飲んだホットミルクのよう」とか言われた方が気になりません⁉︎(個人の感想です)
そのためには香り単体の体験だけでなく、文学とか映画とか文化に触れてみたりする必要があるかもしれませんし、逆にいうと香水以外の体験が人に香水をお勧めするのに役立つかもしれません。とりあえずXやInstagramで香りを言葉にしてみませんか?ていうかお願いします。してください。それを吸収してより強い香水オタクになるんや。
NOSE Knowsの話からだいぶ飛躍した感ありますが、みなさん良い香水ライフを!
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