札幌観劇日記01
イナダ組「あいかた」を観た。
初めて観た時は、どろどろの底なし沼にどこまでもお互いを巻き込み絡み合って沈んでゆくようだと思った。クズでゲス、なるほどと思った。
二度目に観て感じたのは、不器用な生き方しかできないひとの哀しさだった。
才能がないのかもと思いながらも諦められず、もがき足掻き、年下の才能に嫉妬し苛立っている。かと言って、おべんちゃら、お世辞を言ったり褒めたりして要領よく生きることができない石崎。他人に頭を下げて頼むことが格好悪くでできない。
「お金をくれたから」石崎とコンビを組んでいるマコト。へらへらと誘い笑いをしながら適当に漫才をやっているようだったけれど。コンビを組んで2年が経っている。ゲスでクズならもらうだけもらってさっさとおさらばしてるはず。それをしないのは、このコンビで本気で漫才をやりたい、やれると思っていたからではないかと思ってしまった。
女を次々に転がし、Wセンスを小馬鹿にしたようにからかう小屋付きの男、しろう。周囲を力でねじ伏せようとする彼も、暗い沼に取り込まれていた。売れないながらも自分の求める道を進む石崎が妬ましく、実は期待していたのかもしれないと思った。惚れた女を守ることができない自分に嫌気がさしていたのか。そう思う時点で騙されてるのか。
惚れた男と一緒に暮らす平凡な生活が、ルビーさんの幸せだったんだろう。石崎のこと好きになりかけていたのか。しろうと石崎の、男同士の目に見えないつながりに嫉妬していたのか。しろうと二人で出てゆくドアの向こうが炎に包まれているように思えた。
窓越しの、影のお芝居。残っていたプライドを捨てて全てを失った姿は胸が痛くなった。けれど何だかほっとした。底にこつんとついてあとは苦しくても上がるだけ、そんな気がしたから。
【メモ】
イナダ組 カメヤ演芸場物語外伝『あいかた』
*演劇専用小劇場BLOCH
*2021年11月24日(水)~28日(日)
*出演:江田由紀浩/小林エレキ/小山めぐみ/百餅