Ⅴ-#2 「やめられない」学校
1.「やめられない」には訳がある
前回は多忙とは感じていても、学校という組織はななかなか活動をやめることができないということを書きました。けれども学校が活動をなかなか「やめられない」のには理由があります。
以下に7点列挙してみます。
①まったく無駄な活動というものはない
まず学校には全く無駄な活動というのはないこと。たとえ効率はよくなかったとしても、一つ一つの何らかの訳には立っている。
②ほとんどの活動は「成功」している
学校の教員は物事を肯定的に評価する習慣がついているので、学校評価などでは大体肯定的な評価がつく。結果として見直しを唱えても「成果があがっているのになぜやめるの?」となる
③担当者への配慮
多くの活動は分掌で担当が割り振られており、担当者が「気を悪くしないように」という配慮が働く。
④エビデンスのある現状とない代替案
現在の実践は学校で相応の成果を上げたという実績があるが、代替案にはその学校での実績はない。だから両案が並ぶと代替案はエビデンスで見劣りする
⑤発案のリスクとリターン
新しいことを発案して実施する場合にはうまくいかない可能性もある。学校では新しい試みが、成功したとしても特別な場合を除き感謝や賞賛がされることは少ないが、失敗すると「あの人のせいで・・・」となる
⑥教員の異動と成果の時間的ギャップ
小中学校の場合、教員は3年間くらいの短いスパンで移動することが多い。次年度の年度計画の策定は大抵12月頃にはじまり、移動の内示は3月頃だ。だから、改善を発案しても次年度の自分が責任を取りなかったり、次の担当者にうまく引き継がれなかったりということがままある。
⑦今のままでいいという空気感
これらのことが学校という組織の中で慣行的に続いてきたので、総じて学校では「何かを変える」ということにあまり肯定的な態度で望めないことが多い。
2.やめる技術
このように内心では教員の多くが見直したいと思っている活動でも、学校という組織の中では、一度はじめた活動はなかなかやめられない構造があります。けれどもだからといって、現状のままビルド&ビルドを重ねていったら、学校という組織自体が立ちゆかなくなってしまいます。
だから担当者などを傷つけることなく、活動を円滑に見直していくためには一定の技術が必要だと私は感じています。
ここで紹介している「『やめられない』を疑うシート」はこうした学校組織の構造的な問題を、研修等の場を活用して円滑に見直していくためのツールとして開発したものです。
(次回につづく)