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#30 発明に学んだこと

特許は取得できたが、それでライセンス契約が結ばれたわけでも、収入が得られたわけでもない。
けれども挑戦してみて本当に良かったと思っている。
ここから学んだことは大きいからだ。

学んだこと①特許のからくり

特許というもののからくりがわかったことだ。どうしても何かの目的のためにこういうアイデアを制作した、ということが特許になるのだと考えていた。けれども特許の審査はそのような観点から行われることは少ないようだ。
特許の進歩性(技術の発展に役立つか)と新規性(これまでに存在しなかったものか)と言われる。
発明をする人はどうしても進歩性に目が行くが、進歩性は何とでも言い訳を付けられる。むしろむずかしいのが新規性で他の目的や全く違う装置の中に使われていたとしても、同じようなものがすでに知られていたらアウトだ。 これまでになかったものを創り出して、それを権利化する・・・特許権とはいわば陣取り合戦のようなところがあるのだ。

学んだこと②取るは易し、使うは難し

特許の範囲を狭くしさえすれば、特許を取ること自体は難しい事ではない。難しいのは、それを実際に活用するというところ。
今回はとりあえず取ってみよう、と安直にはじめたが、安直に権利化すれば、発明は公知となり、自分のさらなる発明の特許権化を困難にすると同時に、ライバル企業にも情報を与えることになる。特に海外で使おうとすれば、多くの国の場合申請から12ヶ月以内に出願し、30ヶ月以内に当該国でも特許を取得しなければならない。大企業ならともかく個人にはこの時間的制約は案外きつい。
これから自分と同じように挑戦する人がいたら次のようにアドバイスしたい「すべての条件が揃ってから出願すべし」と・・・

学んだこと③心のガラクタこそが発明のカギ

この発明のもとは、素焼きの壺に補完した水は冷たくなる、というインドで体験した現象だった。それがめぐりめぐって特許に結びついた。世の中因果なものだ。
世は断捨離やミニマリストなど、何でもきちんと整理することばかりが強調されてるが、発明に繋がるのは何の役に立つかわからないような自分の心のガラクタかもしれない。
スティーブジョブズが言っているような点と点が圧から繋がったいくことは本当にあるのだ。

学んだこと④先行発明こそが飛躍のチャンス

屋上緑化の先行発明があったおかげで当初は壁で冷却する小屋の発明だったはずが、先行発明のおかげで、らせん状に巻かれたダクト形状の空調装置に一段進化することができた。
自分の考えが他の誰かに実施されていたということは、別の言い方をすれば、会ったことはなくとも発想の仲間がいたということだ。
自分の発想も所詮、たまたま自分が経験したことをかたちにしてみたものだ。人と人との見えない糸のほつれから発明が生まれる・・・そう考えるとなんとなく楽しいのでは?


さて、ともあれ、二年あまりにわたって取り組んできた空調の発明ストーリーはとりあえずここで一区切り。
この発明が、いつか誰かによって世界を変えてくれることを願いつつ。
(未完)