ドル円上昇に、思わぬ援軍!
12/14ECB(欧州中央銀行)理事会後の記者会見における、ラガルド総裁の「利下げの議論を全く行わなかった」との発言を受け、ユーロが対ドルで1.10台まで急伸した翌日、ユーロは、1.08台まで急反落して越週となった。その犯人は、スイス国立銀行(以下、スイス中銀)によるユーロ売りドル買い介入と思われる。これが主要通貨に与える影響と今後のスイス中銀の介入姿勢を追った。
1.スイス中銀によるユーロ売り介入の背景
昨年度のスイス中銀の決算は、過去最大の1,320億スイスフランの年間損失を計上したが、その主たる理由が、保有外貨準備の評価損である。今年に入っても、図表1の通り、ユーロ安スイスフラン高基調に変化なく、今年度決算も、大幅な赤字決算となる可能性がある。
2.スイス中銀の苦しい財政事情と為替介入のドル円相場に与えた影響
スイス中銀は、10月に市中銀行に付利していた中銀の預かり当座預金への金利支払いを停止することで、同中銀のこれ以上の財政悪化を食い止める措置を行った。また、膨らみ続ける外貨準備高の評価損を食い止めるためには、外貨準備高自体を減少させるしか術はなく、スイス中銀は、今後も積極的に介入を続ける意向を示している。
スイス中銀によるユーロ売りドル買い介入は、世界で最も取引量の多い通貨ペアでの介入であるため、当然、ドル円など他の主要通貨にも、間接的に影響を与え、12/15の海外市場において、ドル円相場を142円台まで押し上げる効果をもたらした。
3.今後のスイス中銀の介入姿勢と為替市場への影響度合い
スイス中銀の外貨準備高は、図表2の通り、今年に入ってからも減少傾向にあるが、依然として、6,000億スイスフランを超える巨額な金額となっていることから、今後もスイス中銀は、外貨準備高を減らすために、ユーロが反発する局面では、ユーロ売りドル買い、ユーロ売りスイスフラン買い介入を継続する公算が大きい。その結果、ユーロは、対ドル、対スイスフランで頭の重い展開が続こう。一方、クロス円相場については、ユーロ円が低下しても、スイスフラン円相場は相対的に底堅くなり、また、ドル円相場にも間接的にサポート要因となりやすい相場展開が来年以降も継続することが予想される。
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20231218執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
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