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ポーランドズロチ急騰と今後のズロチ円相場の行方!

10/15、ポーランドの総選挙が実施され、現右派の与党「法と正義」(PiS)が第一党を維持するものの、「市民連立」(KO)を中心とする野党勢力が過半数を制する見通しとなっている。実現すれば、8年ぶりの政権交代となる(以下、仮に政権交代が実現した場合を想定し記載する)。現与党は、ウクライナからの穀物輸入に反対し、移民排斥などEUと対立する政策を採ってきたが、今回の政権交代により、ポーランドは、再び親EUのリベラル路線に転換することになる。市場は、現政権が交代することを好感し、ポーランドズロチ(以下、ズロチ)は、対ユーロ、対円で急反発している。今後のポーランド経済とズロチ相場の行方を追った。


1.ポーランドの金融政策と最近のズロチ相場動向

図表1の通り、ポーランドのGDP成長率は、直近四半期ベースでマイナス成長に陥っており、景気テコ入れの観点から、ポーランド国立銀行(以下、ポーランド中銀)は、先月、政策金利を市場の予想を大幅に上回る0.75%引き下げた結果、ズロチ相場は、対ユーロ、対円で急落していた。
先月スロバキアでハンガリー同様、右派政権が誕生していた矢先であったため、今回、親EU政権がポーランドに誕生することを為替市場は好感している。

(図表1 ポーランドGDP成長率推移チャート Trading Economicsからの引用)

2.ポーランドのインフレ率推移

ポーランド中銀は、今月も政策金利を0.25%引き下げ、5.75%としている。ポーランドのインフレ率は図表2の通り、直近8.2%まで低下してきているものの、中銀目標(2.5%±1%)を大幅に上回っていることから、今後は、このペースで利下げを行うかどうかは不透明感が強い。

(図表2 ポーランドのインフレ率推移 Trading Economicsからの引用)

3.新政権の政策目標

新政権は、現与党が司法への介入など法の支配に反する政策を志向したことで凍結されている1,100億ユーロの資金支給実現を目指すことになる。実現できれば、低迷する国内経済のテコ入れにつなげる道筋が見えてくる。

4.今後のズロチ円相場の行方

直近のズロチ相場は、図表3の通り、対ユーロで、先月の大幅利下げ前の水準まで上昇している。ポーランド中銀は、最近のズロチ高はインフレ率の低下を加速すると好感する発言を行い、現在のズロチ高はファンダメンタルズに合致するとして容認する姿勢を示した。また、ズロチ相場が下落する場合には、ズロチ買い介入を実施すると示唆している。
こうしたポーランド中銀によるズロチ高容認姿勢と日銀による大規模金融緩和政策の継続を受け、ズロチ円相場は、図表4の通り、先月のポーランド中銀による大幅利下げして以降、一時33円台まで下落していたが、総選挙後、上昇に弾みがつき、8月以来の35円台半ばを回復している。ポーランド中銀は、今後もインフレ懸念と景気刺激の両にらみで金融政策運営を行うことになろうが、親EU政権の誕生により、政府からの財政出動が期待できる状況になれば、今まで以上にインフレ抑制に重点をおいた金融政策運営が可能となることから、ポーランド中銀のフリーハンドは大きくなったと言える状況にある。少なくとも、同銀の物価目標を2.5%±1%としている現状では、8.2%のインフレ率は高すぎる状況にあり、一方向的な利下げを続けることにはならないものと予想する。ポーランドと日本の金利差が5%を大幅に超える状況は、ズロチ相場に追い風となり、2015年以来の36円を超えて上昇していく公算も大きいと判断できる。

(図表3 ユーロズロチ推移チャート 右軸:単位 ズロチ Trading Viewからの引用)
(図表4 ズロチ円推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

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20231018執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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