ユーロ円急落の犯人は、スイス国立銀行だった?!
先週、ユーロ円が、160円割れまで急落した背景に、スイス国立銀行(以下 スイス中銀)によるユーロ売りスイスフラン買い介入の可能性が見てとれる。スイス中銀によるスイスフラン買い介入の内情を追うことで、見えてきたユーロ円相場の行方を占った。
1.スイス中銀による巨額為替差損の実情
スイス中銀は、図表1の通り、昨年過去最大の為替差損を計上している。その結果、スイス中銀は、昨年来、将来のスイスフラン高による為替差損を回避すべく、外貨準備高削減のためのスイスフラン買い介入を対ユーロ中心に行ってきた。(※スイス中銀は、過去、ユーロ買いスイスフラン売り介入により多額の外貨準備高を積み上げてきたが、今般、外貨準備高を縮小させるため、ユーロ売りスイスフラン買い介入を行っている。)
その結果、昨年末8,000億スイスフラン相当近くあった外貨準備高が、図表2の通り、足元6,000億スイスフラン台まで減少してきているが、この過程での対ユーロでのスイスフラン買い介入の結果、図表3の通り、今年に入ってもスイスフランの上昇が止まらない悪循環に陥っている。そのため、スイス中銀は、昨年度決算において、外貨準備高の評価資産額を大きく減少させた結果、既に分配準備金(いわゆる資本準備金)の1,000億スイスフランを使い果たしている関係で、今年度は、660億スイスフラン相当の自己資本も食いつぶし、債務超過に陥るリスクも高まっている。
2.今後の想定される外貨準備高操作と金融市場の動向
スイス中銀としては、2年連続での大幅な為替差損を計上する蓋然性が高まっているが、依然として6,000億スイスフラン相当以上の巨額の外貨準備高を抱えていることから、来年の為替差損を回避すべく今後も継続的に対ユーロ中心にスイスフラン買い介入を継続する公算が高い。
その結果、ユーロは対ドル、対円で、軟調に推移する公算が高い。一方、スイスフランは、対ドル、対円で堅調に推移することになりやすく、ユーロ円が頭の重い展開が続く一方、スイスフラン円は底堅い地合いを継続しやすい展開を予想する。因みに、スイスフラン円は、図表4の通り、2021年初より約3年の間で45%上昇しているの対し、ユーロ円は、図表5の通り、27%の上昇にとどまっており、如何にスイス中銀による為替介入の影響が大きいかが見て取れる。
過去のスイス関連記事はこちら
20231204執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?