欧州随一の高金利通貨ハンガリーフォリントの魅力!
ハンガリーは、EU加盟国でありながら、政策金利が依然12%台とEU内では圧倒的に高い高金利国である。また、欧州内でロシアとの良好な関係を維持するユニークな国でもあり、エネルギーの安定供給を確保する観点からロシア制裁に異を唱えるなど独自路線を歩んでいる。ハンガリーフォリント好調の背景を探った。
1.ハンガリーの物価動向
ロシアによるウクライナ侵攻以降のエネルギー高により、一時25%超える水準まで高騰したインフレ率も、図表1の通り、直近では12%台前半まで低下したことを受け、ハンガリー国立銀行(以下、ハンガリー中銀)は1年間据え置いてきた政策金利を先月0.75%引き下げ12.25%とした。これにより、1年以上続いてきた実質金利の大幅なマイナス状態は解消されることとなった。今後もインフレ率の低下に合わせ、政策金利の引き下げが見込まれるが、ハンガリー中銀は今後実質金利が着実にプラス転換する見通しを示しており、こうした状況はハンガリーフォリントには追い風となることが予想される。
2.ハンガリーの経済戦略による経常収支改善効果
ハンガリーは、EU内で比較的安価な労働力を背景に、海外からの直接投資を喚起すべく、EU内で最も低い法人税率を適用し、ドイツ、日本など主要国から自動車産業中心に積極的に投資誘致を進めてきた歴史がある。加えて、最近では、欧州内でのEVバッテリー生産の一大拠点を目指し、韓国や中国のEVバッテリーメーカーの誘致にも成功している。
その結果、ハンガリーから欧州への自動車輸出は順調に拡大し、ハンガリーの経常収支は、昨年こそエネルギー高により一時的に大幅赤字となったが、直近では、図表2の通り、エネルギー価格の鎮静化もあり、早期の黒字転換に成功している。こうした貿易需給の好転が足元のハンガリーフォリント高を後押ししている。
3.ハンガリーフォリント円相場の行方
FRB(米国・連邦制度準備理事会)やECB(欧州中央銀行)に、利上げ打ち止め観測が広がる中、ハンガリーの高金利は突出しており、金利差に着目したハンガリーフォリント買いは継続しよう。また、ハンガリーフォリント高は、インフレ抑制に役立つことからハンガリー中銀も許容するスタンスであり、足元の堅調な経済環境に鑑みるに、ハンガリーフォリントの堅調トレンドは揺るがないものと思われる。特に、大規模金融緩和政策を継続する日本円とのコントラストは鮮明で、ハンガリーフォリント円は、図表3の通り、直近騰勢を強めており、今年6月の高値、0.4285円に近づいている。ここを抜けると、2018年の高値0.4450円を目指す展開も予想される。
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20231108執筆 チーフストラテジスト 林 哲久