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ドル安の恩恵を受けるオーストラリアドル相場の行方!

オーストラリア準備銀行(中央銀行、以下中銀)は、今月5会合ぶりに利上げを再開し、政策金利を4.35%と12年ぶりの高水準まで引き上げた。更なる追加利上げの可能性も取りざたされるオーストラリアドルの行方を占った。


1.オーストラリアを取り巻く金融環境

オーストラリアのインフレ率は、図表1の通り、直近4.9%まで低下してきてはいるものの、中銀の物価目標の2~3%を上回る状況が続いている。今後も旺盛な国内需要を背景に更なる利上げの可能性も取り沙汰されており、主要先進国の中で、来年の利上げが見込まれているのは、オーストラリアと日本だけとなっている。

(図表1 オーストラリアのインフレ率推移チャート Trading Economicsからの引用)

2.好転するオーストラリアの経常収支

オーストラリアの経常収支は、コロナ禍以降の資源高の影響を受け、図表2の通り、ここ数年大幅な黒字基調を続けている。昨年来の米国金融引き締めによるドル高・オーストラリアドル安の恩恵も受け、オーストラリアの交易条件が改善したことも影響している。

(図表2 オーストラリアの経常収支動向 右軸:単位 百万ドル Trading Economics)

3.好転するオーストラリアの財政収支

昨年度のオーストラリアの財政収支は、低い失業率、賃金上昇、過去最大の資源輸出で税収が拡大したことで、事前予想を大幅に上回り、42億オーストラリアドルの黒字となり、15年ぶりに財政黒字に転換している。こうした好調な経済成長を受け、今年度も所得税減税が計画されている。

4.関係改善に向かう中国との貿易関係

ここ数年関係が悪化していた中華人民共和国(以下、中国)との外交、貿易関係がここに来て改善傾向にあり、オーストラリアのアルバニージー首相が中国の習近平国家主席を表敬訪問するなど、関係改善の動きが見られ、中国からオーストラリアの大麦やワインに課せられた大幅な輸入関税が軽減される可能性が出てきている。資源輸出国であるオーストラリアにとって、中国との貿易関係の改善は、経常収支の黒字要因となり、オーストラリアドルを押し上げる事に繋がる。

5.今後のオーストラリアドル相場の行方

昨年来続いてきた米国の金融引き締め政策が最終局面に入り、足元では、利上げ打ち止め観測が急速に広まった結果、米国の長期金利は急低下してきている。これを受け、足元のオーストラリアドルは、図表3、4の通り、反転上昇傾向にある。また、今後、ドル安傾向が顕著となると、ドル相場と逆相関の関係にある商品市況が上昇トレンドに入る可能性があり、これも資源大国オーストラリアにとっては追い風となる。その結果、オーストラリアドルは、対ドルでは今年6月の高値である0.69ドル、対円では、昨年9月の高値を抜け、100円の大台に到達する公算が高いと予想する。

(図表3 オーストラリアドルの対ドル相場推移 右軸:単位 ドル Trading Viewからの引用)
(図表4 オーストラリアドル円推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

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20231129執筆 チーフストラテジスト 林 哲久




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