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逆業績相場※が始まったのか?!

米国の景気拡大はコロナ禍以降、4年以上に亘り続いてきたが、ここにきて経済指標や金融市場動向において、いくつか景気後退のサインとも受け取れる動きが見られるようになっている。例年、米国の独立記念日近辺が米国株価の天井となるアノマリーがあるが、今年もその例に倣った感がある。SOX半導体指数もほぼ同時期に下落トレンドに転換しており、世界の株価上昇を牽引してきたマグニフィセント7の株価も調整局面入りとなっている。今後の米国の景気後退の可能性と日本の株式市場への影響を解説する。

※金融引き締めにより景気が下降し、企業業績が悪化して株価が下落トレンド入りするサイクル


1.景気後退入りのシグナルとされるISM製造業景況感指数と米国逆イールド解消状況

7月米国ISM製造業景況感指数は、46.8と前月から更に1.7ポイント低下し、好不況の分岐点とされる50を4か月連続割り込んでいる。また、米国の2年債/10年債逆イールドについても、8/5の米国株急落を受け、一時的に解消される事態に至っている。しかしその一方で、ISM非製造業景況感指数は、50を上回っており、逆イールドについても、8/6米国株反発を受け、0.1%程度まで戻っている。

2.景気後退を示唆するサームルールとは

サームルールとは、失業率の上昇から景気後退期を判断する方法で、失業率の3か月平均と過去1年間の最低水準との差が0.5%以上なら景気後退入りとする説である。7月失業率が4.3%に上昇したことで、サームルールの0.5%を超えることになった。しかし、0.5%を超えても景気後退入りしなかったケースもある。更に、7月の雇用統計がハリケーンの影響で就業者数が減ったことによる一時的失業率上昇の可能性もあることから、8月の失業率を確認する必要がある。

3.VIX(恐怖指数)急上昇の意味するもの

VIX指数(株式市場のボラティリティーを示す指標)が、日経平均株価暴落を受けて、図表1の通り、コロナ禍時以来の急騰を見せた。これは今後の米国株式市場の動揺が続くシグナルの可能性がある。

(図表1 VIX指数月次推移チャート Trading View提供のチャート)

4.日本銀行(以下、日銀)の利上げ判断は正しかったのか

7/31植田総裁は、米国株式市場がピークアウトしつつある局面において、連続利上げを示唆する発言を行ったため、米国株式市場を更に混乱させるトリガーを引いた。その結果、日経平均株価が8/5史上最大の暴落を記録することとなった。米国経済が後退局面入りするかどうかの微妙な時期に、大きな経済環境の変調を考慮に入れない植田総裁の豹変が世界の金融市場の動揺と混乱を誘った責任は大きい。加えて、現在の急激な円高・株安を踏まえても、8/6日本経済に明るい兆しが出ているとする鈴木財務相と林官房長官の発言も理解不能である。日本政府・日銀の自らの誤りを認めない姿勢が日本経済の立ち直りを遅らせ、日経平均株価暴落後の株価低迷を長期化させる要因となり得、人災による株価暴落の今後を注視する必要がある。金利引き上げによって、企業業績が悪化することで株式市場が低迷する逆業績相場に日本株式市場が世界で一番先に突入する可能性に留意したい。

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20240807執筆 チーフストラテジスト 林 哲久





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