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地政学リスクに弱いユーロ!

11/21ロシアがウクライナに対しICBMを9発発射し、ウクライナ戦争の更なる激化の兆しが表れたことを憂慮して、ユーロが対ドルで1.05割れまで急落となった。戦争当事国のロシアルーブルやウクライナと国境を接するポーランドズロチ・ハンガリーフォリントは、ユーロ以上に下落しており、戦闘拡大への懸念が欧州通貨売りを誘っている。今後のユーロ並びにユーロ円相場の行方を解説する。


1.ウクライナ戦争開始時点とのユーロ相場の類似点

2022年2月ロシアがウクライナに侵攻した際、図表1の通り、ユーロは対ドルでパリティー(等価)割れまで急落している。昨日も昨年10月以来の1ドル1.05割れとなっており、年末に向け再度パリティー割れにトライする公算が大きくなっている。また、戦争長期化で国内経済が疲弊するロシアも、今週1ドル100ロシアルーブル超えとなっており、ルーブル安に歯止めがかからなくなっている状況は、2022年と酷似している。

(図表1 ユーロドル月次推移チャート 右軸:単位 ドル Trading View提供のチャート)

2.景況感格差が拡大する欧米経済

パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、米大統領選挙でのトランプ候補圧勝を受け、来年以降のインフレ再燃を懸念してか、利下げを急がない姿勢に転換している。一方の欧州経済は、ウクライナ戦争長期化によりロシアからの安価なエネルギー供給が途絶える一方、中国の景気減速により外需に陰りが見られるなど、内憂外患状態に陥っており、今後の利下げ継続が必須な状況にある。その結果、図表2の通り、足元の欧米長期金利差は緩やかに拡大傾向にあることも、ユーロ安を後押しする可能性が高い。

(図表2 米国10年債利回り推移(青線)・ユーロ10年債利回り推移(赤線) Trading View提供のチャート)

3.様相が異なるユーロ円相場の行方

2022年は、米国がインフレ率の高まりを受け、強烈な金融引き締め政策に移行した局面において、日銀(日本銀行)は大規模金融緩和政策を継続したため、日米の金融政策の方向性が異なることに着目した、大規模なドル買い円売りが仕掛けられた。その動きにつられ、ユーロ円相場も、図表3のように大幅にユーロ高円安が進行した。しかし、今年はECB(欧州中央銀行)が利下げサイクルに移行する一方、日銀が利上げサイクルに入っており、日欧の金利差は縮小する方向にある。これに地政学リスクの高まりによるユーロ売りが再発すると、ユーロ円相場も緩やかなユーロ安円高に向かう可能性がある。来年1月のトランプ政権発足前に、ロシア・ウクライナ双方が占領地域の拡大に向け、戦闘を激化させる公算が大きいことを踏まえると、短期的にはユーロ円相場は、9月の安値155円台に向け一段安もあり得よう。

(図表3 ユーロ円月次推移チャート 右軸:単位 円 Trading View提供のチャート)

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2024年11月22日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久



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