宇都宮LRT乗車で感じた街の活性化
宇都宮LRTに乗車してきた。ライトラインは乗り心地抜群で快適であった。LRT開業はLRT沿線地域のみならず、宇都宮市の街全体の活性化にも貢献している様子が窺われた。JR宇都宮駅西側のLRT計画の進捗は、さらなる街の活性化に貢献すると期待される。他の都市におけるLRT導入議論の進捗にも期待したい。
宇都宮LRT乗車
「LRT、路面電車を起爆剤にした街活性化」(2023年8月7日)のテーマである宇都宮ライトレールのライトライン、いわゆる宇都宮LRTに3月初旬にようやく乗車してきた。ちなみに、ライトラインの愛称は、雷が多い宇都宮にちなんだ「雷都」からきており、「『LIGHT』はLRT(Light Rail Transit)の一部であることはもちろん、『光』『明るい』の意味もあり、『LINE』との組み合わせにより、『(未来への)光の道筋』といったメッセージも込められた愛称」(宇都宮市ウエブサイト「LRT車両の愛称が『ライトライン』に決定しました」より)とのことである。
宇都宮市内観光を予定していたので、宇都宮LRT自体は宇都宮駅東口停留場から鬼怒川を越えた飛山城跡停留場まで乗車した(図1参照)。飛山城跡停留場には送迎者用駐車スペースがあり、パーク&ライド駐車場としても利用できそうであった。なお、パーク&ライドとは、自宅から最寄駅や停留場まで自家用車を使い、駅や停留場の駐車場に自家用車を止めて電車やLRTなどの公共交通機関に乗り換えて、市街地中心を目指すシステムである。パーク&ライドを利用すると、駐車場料金や乗車賃を割引するサービスを導入している事例も見られる。宇都宮市ウエブサイト「東西基幹公共交通(LRT)の実現に向けた取り組み」掲載の「『ライトライン』開業後の状況について」(第37回「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」資料2、令和5年11月27日)によると、「『平石』,『清原地区市民センター前』,『芳賀町工業団地管理センター前』のパーク&ライド駐車場については,慢性的に混雑しており,駐車台数は増加している」とのことである。
図1:宇都宮市のLRT路線
ライトラインのデザインは見栄えが良く、騒音は感じず、乗り心地も良かった。報道等によると開業当初は料金の受け渡し等で少々混乱があったようだが、現時点では写真1右側にあるようにSuica、PASMO等の交通系ICカードで乗降口にある機械で支払いができるようになっており、スムーズに乗降できた。
写真1:宇都宮LRT
宇都宮LRT開業後の街への効果
栃木県庁や宇都宮市役所はJR宇都宮駅西方向の東武宇都宮駅方面にあり、旧来の繁華街もその周辺に広がっている(図1参照)。つまり、JR宇都宮駅の東方面は市街地中心から見れば郊外的な位置づけだったと考えられる。その地域にLRTが通ったことにより、今後の開発が期待されている。
既に駅周辺地域には商業施設、コンベンション施設、ホテルなどが新規開業しており、宇都宮駅東口停留場から鬼怒川手前辺りまでの沿線には真新しい店舗も多く見かけた。また、JR宇都宮駅の東口近辺では土曜午前中にもかかわらずそれなりの人出で賑わっていた(本稿の写真はなるべく人が写らないように撮影)。
宇都宮市ウエブサイト「東西基幹公共交通(LRT)の実現に向けた取り組み」掲載の「LRT整備効果の検討状況について」(第37回「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」資料3、令和5年11月27日)によると、「宇都宮市の人口は,H29をピークにR5までに約6,800人減少する一方,LRT沿線は,H24からR5までに約4,900人増加し,R5には約6.4万人となっている」「LRT整備が呼び水となり,LRT沿線における高層建築物の建築確認申請件数は増加するなど,民間投資が活発化し,土地利用の高度化が図られている」(太字は出所資料では下線)とあり、筆者が実際に見た感覚からも頷ける。
写真2:宇都宮駅東口停留場付近の様子
前掲「LRT整備効果の検討状況について」掲載の「出典:Woman.CHINTAIユーザーが選んだ住みたい街ランキング2023(調査期間:2022年1月1日~2022年12月31日)」とされる調査によると、「一人暮らし女性向け物件検索サイトに掲載された賃貸物件の中から,問合せの多かった駅名を集計した結果,宇都宮が前回調査の『93位』から『4位』に大幅上昇」(太字は出所資料では下線)とのことで、イメージも大きく好転していることが窺われる。
駅西側のLRT計画進捗と他都市への波及に期待
宇都宮市内観光としてはJR宇都宮駅周辺、二荒山神社、大谷観光エリアにある大谷資料館などに行った。
JR宇都宮駅の駅ビルなど周辺地域は、土曜ということもあり凄い人出と賑わいであった。二荒山神社は参拝客が途切れず、二荒山神社近くの「餃子通り」の餃子店はどの店舗も行列ができていた。大谷資料館は夕方となったが、こちらも観光客で賑わっていた。これらの賑わい全てがLRT効果とは言わないが、LRT開業が街に活気をもたらしているのは間違いないであろう。LRT自体を撮影している人も数多く見かけた。
写真3:宇都宮市内観光(左:二荒山神社、中:餃子通り、右:大谷資料館)
図2:宇都宮市のJR宇都宮駅西側のLRT計画
二荒山神社周辺はバス、大谷観光エリアは宇都宮市在住の友人の車で向かった。しかし、図2のようなJR宇都宮駅西側のLRT計画の「整備区間」が実現すれば、二荒山神社や東武宇都宮駅周辺はLRTで行けることになる。さらに「検討区間」が実現すれば、大谷観光エリアまでLRTで行けることになり、観光客にとっては格段に便利となろう。
もちろん、住民にとっての利便性向上は大きいであろう。例えば既にLRTが開業している駅東側では、清陵高校前停留場付近に宇都宮清陵高、清原中などがあり、免許取得可能年齢前の学生・生徒にとっては通学手段の選択肢が広がっている。前述してきたような街の賑わいや活性化も、住んでいる地域の持続可能性向上に資する。
今後のJR宇都宮駅西側のLRT計画の進捗が期待される。また、宇都宮LRTに続いて、他の都市にあるLRT導入計画が具現化していくことが望まれる。そうして各地域が活性化することが、日本全体の持続可能性向上の一助となるであろう。
20240308 執筆 主席研究員 中里幸聖
前回レポート:
「税収と景気(3)-所得税の税率構造の改定-」(2024年3月7日)