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今年の10大リスクから垣間見える金融市場の行方!
1/6米政治リスク調査会社ユーラシア・グループ(EG)が発表した『今年の10大リスク』によると、大国によるリーダーシップの空白を示す「深まるGゼロ(無極化)世界の混迷」がトップリスクとなった。今年の10大リスクの中から上位4項目を解説し、世界の金融市場の行方を紐解いた。
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1.10大リスクの1位は、「深まるGゼロ世界の混迷」
EGによると、「世界的なリーダシップの欠如は危機的なレベルにまで深刻化している」とし、国連など主要な国際機関の影響力が低下し、国際的なルールを守らない「ならず者国家」が勢いづき、世界大戦が発生するリスクが高まっていると警告している。
2.10大リスクの2位は、「トランプの支配」
トランプ次期政権では、主要閣僚にトランプ氏に忠実な側近が多く起用されており、行政権力の監視や法の支配が弱体化する可能性があると指摘している。金融規制強化に積極的なバーFRB(連邦準備制度理事会)副議長が退任を表明、FBI(連邦捜査局)の解体を主張するパテル氏をFBI長官に指名するなど、行き過ぎた規制緩和や極端な行政改革が金融市場にも悪影響を及ぼす可能性がある。
3.10大リスクの3位は、「米中決裂」
GDP1、2位の米中対立が一段と激化し、トランプ政権による追加関税が導入されると、世界経済の分断やサプライチェーンの混乱を招き、保護貿易主義の台頭が世界経済を減速させるリスクが高まることになる。
4.10大リスクの4位は、「トランプノミクス」
トランプ新政権による大幅減税や追加関税の導入は、米国景気を過熱させるとともに、国内物価の押上げ要因となることで、インフレ再燃リスクが高まる。更に、移民流入規制の強化は国内の労働需給を逼迫させ、賃金インフレを招くことが予想される。その結果、FRBが再利上げを迫られることになれば、米国経済は減速し、高インフレ低成長のスタグフレーションリスクが高まることになる。
5.10大リスクが米金融市場に与える影響
今年の10大リスクは、世界大戦のリスクが高まっていると警告するほどの、深刻な懸念が表明されている。また、世界的な保護貿易主義の台頭が、インフレ懸念の台頭や景気減速を引き起こすリスクを高めると考えると、米長期金利は5%を超えて上昇する一方、米株式市場は、企業収益の悪化懸念から下落局面に移行する公算が大きい。また、金利上昇は、一義的にはドル買い材料となるものの、米国経済の鈍化や財政悪化に歯止めがかけられないと米ドルの信認低下に繋がり、最終的には、債券安・株安・ドル安のトリプル安に陥ることになろう。その場合、安全資産である金への資金流入が続き、金相場は昨年の高値2,800ドル台を超え、3,000ドル台に到達することもあり得よう。
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2025年1月7日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久