日本を追い抜くインド経済のポテンシャル!
今や、景気低迷に陥っている中国とは反対に、グローバルサウスの雄として成長著しいインドの存在感が大きくなっている。まもなく世界一となる人口を抱え、2060年代まで人口増加が続く世界最大の民主国家インドが今後の世界経済を牽引していく可能性も取り沙汰されており、インド経済の潜在力を探った。
【成長軌道を歩むインド経済の現況】
1.非同盟の地政学的地位
インドは、歴史的に、非同盟中立を貫き、西側にも属さず、ロシアとも一定の良好な政治的関係を維持してきた。最近では、日米豪印4か国「クワッド」による自由で開かれたインド太平洋戦略対話の枠組みに参加する一方、BRICSの一員として、中国、ロシアとも一定の政治的関係を維持している。
ロシアによるウクライナ侵攻以降も、ロシア制裁には参加せず、ロシアから安価な原油を大量輸入する一方、インドで精製した石油製品を欧州、中東に輸出する取引を活発化させて自国の経済的利益を追求するしたたかさもみせている。
2.モディ長期政権による「メイク・イン・インディア政策」の推進
世界第5位のインドの現在の名目GDPは3.7兆ドルで、数年以内に現在4.4兆ドルの日本を抜き、26兆ドルの米国、19兆ドルの中国に次ぐ世界第3位のGDP大国に成長することが予想されている。
2014年に就任したモディ首相は、GDPに占める製造業の割合を15%から25%に高めることで、国内の雇用を創出、輸出競争力を強化し、貿易赤字削減に繋げるため、インドへの海外からの国内投資を活発化させる「メイク・イン・インディア政策」を打ち出し、国内での携帯電話の生産能力を高めるなど、一定の経済的成果を上げている。
【インド経済の課題】
図表1の如く、増大する人口に見合う国内産業の育成が遅れており、若年失業率が20%を超える高い状態にある。また、身分によって、職業が固定化されるカースト制度の存在や女性就労率の低さなど、インド固有の問題も存在し、成長のポテンシャルを開花させる上での課題もある。
【改善する経常収支とインド経済のポテンシャル】
エネルギー価格の鎮静化や産業の高付加価値化の取り組みが一定程度、功を奏し、今年に入り、図表2の通り、インドの経常赤字は急激に減少してきた。図表3の通り、これまで下落を続けてきた通貨ルピーも、今年に入り安定し始めている。世界最大の内需大国インドは、米国による金融引き締め影響を受けにくく、ウクライナ戦争後のインフレ高進の悪影響も大きくなく、インフレ率は今年に入り、中銀目標の6%以下まで低下してきている。
世界最大の民主国家であり、公用語が英語であるインドでは、元々教育水準が高く、世界に豊富なIT人材を供給してきており、ITサービスによるサービス収支黒字も堅調である。今後は、国内製造業の活性化により経常収支が改善を続けることで金融市場の安定度が増せば、インド経済の成長ポテンシャルは更に底上げされ、世界の投資を惹きつけていくことが期待される。
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20230829執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
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