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総理がコミットした円安!

2/7石破総理は、トランプ米大統領に対し、1兆ドルの対米直接投資を約束した。更に、対米貿易赤字を縮小するために、アラスカのLNG開発と米国からのLNG輸入拡大を約束した。石破総理が、約束した内容は、資本収支赤字・貿易収支赤字の拡大による円安進行に直結する。その内容を解説し、今後のドル円相場を解説する。


1.1兆ドルの対米直接投資のインパクト

現在、日本の対米直接投資累計額は、約8,000億ドル(2023年時点)に達しており、1兆ドルまでは、約30兆円である。これは最近の日本の1年間の対外直接投資額に相当し、ソフトバンク・グループの1,000億ドル(4年間)のAI投資、アラスカでのLNG開発などを考慮すると、今年達成することも可能な金額である。

2.日本の対米貿易黒字は10兆円

日本の対米貿易黒字は、約10兆円であり、これを今後、米国からのエネルギー輸入で削減していくとすると、日本の貿易赤字は更に拡大し、年間15兆円規模に達することも考えられる。

3.悪化し続ける日本の国際収支

日本の2024年の対外直接投資は32兆円、貿易収支・サービス収支赤字は6兆円、個人投資家による海外株投資は12兆円で、合計すると50兆円の資本流出が発生したことになる。これが更に増加する今年は、全体で60兆円規模に達することも考えられ、これが石破総理がコミットした投資が円安加速要因となる実態である。

4.利上げが抑止効果を持たない現在の円安

日本銀行(日銀)は、現在の円安を抑制するために、利上げを継続する姿勢を続けているが、利上げが国内投資を抑制し、対外投資を活性化させ、個人投資家の日本株投資を冷え込ませ、海外株投資の増加要因となることを考慮すると、利上げが現在の円安には逆効果であることは一目瞭然である。

5.関税カードを切り続けるトランプ政権がもたらす利下げ観測の後退

トランプ政権は、対中10%の追加関税に加え、鉄鋼・アルミに対する25%の一律関税を貿易相手国に課す方針を発表しており、米国内でのインフレ期待が大幅に上昇する傾向にある。また、2/7発表された米国雇用統計において、失業率の低下と平均時給の伸びが加速したことで、米国の利下げ観測は後退している。

6.今後のドル円相場の行方

トランプ政権は、原油増産政策により、インフレ率の低下を目指しているが、OPEC(石油輸出国機構)は、米国の増産要請に応じておらず、減産政策を維持している。加えて、トランプ政権が前述の通り、関税カードを切り続ける限り、国内のインフレ懸念は再燃することになり、長期金利の低下は限定的となることが予想される。現在、トランプ関税により、リスクオフの円買いが優勢となっているが、日米長期金利差の縮小が限界的となると、ドル円の下値余地は限定的となり、今後は、緩やかに155円方向に反転・上昇する展開を予想する。

(図表 ドル円日次推移チャート 右軸:単位 円 出典:Trading View)

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2025年2月10日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久






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