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M&Aはスタート地点。事業成長に欠かせない「PMI」のスタンス

こんにちは、テラドローン・取締役のです。

前回投稿した「M&Aの買収先選定方法」についての記事は、スタートアップとM&Aの関係に焦点を当てた専門的な内容でしたが、予想外の反響をいただき、大変励みになりました。

前回の記事はこちらからご覧ください!

そこで少し間が空きましたが、今回は続編となる内容を公開いたします。

第2回目となる今回のテーマは
「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」

皆さんにとって聞き馴染みがあるM&Aに対し、合併・買収後の統合プロセスを指すPMIは少しイメージしづらいかもしれません。ただ、テラドローンにとってはPMIこそグループ全体の事業戦略を担う肝と言っても過言ではありません。

テラドローンは創業期から約20社M&Aを実施してきました。直近、買収ではないですが米国の運航管理システムの事業において米国トップシェアのAloftに出資をし、米国進出を発表しました。グローバル事業の拡大に向けて日々新しいことにチャレンジしています。

今回は、そんな「M&A後」におけるテラドローンの戦略やスタンスについてをこれまでの経験から述べていきます。これからM&Aや海外展開を考える上で参考になる内容になれば幸いです。


なぜPMIを重視するのか

そもそも企業買収は、買収後に事業が伸びていかないと意味がありません。M&Aのプロセスはスタートに過ぎず、PMIから本番が始まると言えます。テラドローンは、PMIこそが事業成長のカギを握るとしてさまざまな形で実行してきました。

PMIは他社との提携や買収を経て成長を狙うインオーガニックな手法と言われます。ただ、純粋に事業を伸ばすことが我々の目的だからこそ、あえて「PMIだから」と区分けしなくてもいいとこれまで考えてきました。

M&Aの候補企業を調べると、その会社には必ず「経営上の課題」が見つかります。資金不足の会社にはローンや増資によるサポートをしてきましたし、コーポレートの部門でHRの機能の不足が課題であれば、その部分の人材を強化する取り組みにリソースを費やしてきました。

そうしたスタンスの典型例となったのが、2019年に買収したTerra Drone Indonesiaです。買収直後はHRや経理サイドが不足していたので重点的に強化しましたが、現在は開発サイドの支援を進めています。タイミングを図った資金や人材の投入は、事業成長の効果を高めるために重要です。

「PMI」=「経営改善」と捉える重要性

PMIの前段階となるM&Aでは、「この会社、我々が買ったら伸ばせるな」と感じられるかの感覚が大切になります。

一方、事業が順調に成長している企業は買収できない可能性が高いと言えます。そうした会社は我々からエクイティ(株主資本)を調達しなくても、他のルートから何らかの資金の調達方法を見つけ出せるからです。

そもそも自分たちの事業展開に課題を持つ会社は、提携やM&Aなどによって外部から支援を得ようとする動きをみせます。そうした会社に狙いを定め、割安で買収して成長軌道に乗せることが重要です。今後、テラドローンは資金調達を実施して規模の大きな会社を買収しようとも考えていますが、企業規模に関わらず買収候補先の「課題」に目を付けることが生命線と言えます。

成長軌道に乗せる動きを円滑にするため、基本的にテラドローンではPMIを経営陣主導で進めています。経営陣が決めたソリューションに基づき、日本から現地にメンバーを派遣して具体的な施策を進めてきました。実際のところ、「PMI」=「経営改善」なので現地では細かな部分を含めてさまざまなタスクが生じるのが常です。例えば、インドネシアでは各地にバラバラにあったオフィスを統合しましたし、社内のカルチャーを変える取り組みも実施しました。

スタートアップならではのPMIの進め方

一般的に買収した企業の事業を伸ばそうと考えた時、まず営業面で即戦力になる社員を派遣し強化することから始めるかと思います。ただ、テラドローンは買収した企業のソリューションが独特であるがゆえに最初から適した人材を送り込めることは多くありません。自動車など既にビジネスプロセスが確立している業界であれば別ですが、例えば9月に買収したインドネシアの農業事業において、現地の農業事情に関して詳しい営業人材を日本国内から派遣することは難しいこともあります。

大企業は自らの規模を生かして買収後にPMIを進めるのに対し、スタートアップにはそうした資金や人材が潤沢ではありません。むしろ、スタートアップは買収した企業から学ぶことが大切です。だからこそ、テラドローンのPMIでは買収した会社からソリューションを学ぶことからスタートします。一般的なPMIとは逆の流れですが、これこそがテラドローンならではのスタイルだと言えます。

実はこの手法、日本のスタートアップの中で今後増えていくと思っています。かつての日本企業はある程度の資金を投じてM&Aやその後のPMIを進められましたが、最近は日本自体のプレゼンスが世界で弱くなったことで過去の方法が通用しなくなってきました。

規模を生かすよりも「学ぶ」ことが重要

規模感を活かしての実行が難しくなった分、ソリューションを吸収して買収した企業同士の相乗効果を生むことが欠かせません。相乗効果を生むには、M&Aの施策自体を継続的に進めることが大切です。1社ではできなかったことを買収した企業同士の相乗効果で可能にすることで、事業成長への新たな価値を生むことになります。

買収した企業から学ぶことが起点となっているため、テラドローンはPMIを進める過程で自分たちのやり方を押し付けるスタンスを避けてきました。それは「遠心力」と「求心力」に例えられるかと思います。自分たちのやり方を無理に求めると、遠心力が働いてコントロールが効かずに事業成長にもつながらなくなります。そうした事態を避けるためにも、目に見えない部分の求心力を高めることが必要です。買収交渉を進める際には相手の企業の創業者がテラドローンのビジョンに共感してもらえるかが重要となります。

PMIに必要なスタンス

PMIを進める上では時間軸も問われます。テラドローンの場合、PMIのプロセスを進める理想として100日をリミットに設定しています。私も去年は毎月インドネシアに行き、日次で現状の報告をもらう状況にしていました。毎日進捗をもらう形で入り込まないと、現地はなかなか変わらないものです。

とはいえ、経営陣の1人としては買収した企業のPMIだけを進めればいいわけでなく、既存事業に費やす時間の配分なども考えなければなりません。重要な部分はやりつつ、他のメンバーに任せるスタンスはこれから強めていくことになります。

PMIを進める上ではエムスリー社などのM&Aを多く実施し成功している先行事例から学ぶことも多いです。エムスリー社のIR資料などにも記されていますが、最初は共同購買などによるコスト削減、その次にクロスセルによる相乗効果、最後に事業としての相乗効果といった具合に大きく3つのフェーズを設けています。テラドローンの場合、今はこの3つのフェーズを並行させて進めてきました。

スタートアップによる海外M&Aのスタンス

PMIから少し話題が逸れますが、日本のスタートアップが海外進出を図る際、自分たちで現地に拠点を設けるかM&Aで入り込むかはその会社のビジネスモデル次第なところもあります。ただ、現地拠点を作る際、ある国でうまくいっても同じビジネスモデルを他国で横展開できない難しさもあります。ゆえに、日本のスタートアップが海外に開発拠点を設けることはアリだと思いますが、事業拠点や現地法人の展開は市場開拓において労力がかかる割にリスキーなのかもしれません。

テラドローンの場合、既に顧客がいる企業を買収する点で現地に事業拠点を設ける企業と比べて事業展開しやすい状況にあると思います。なぜこうした動きを進めるのかと言えば、黎明期の業界や企業を狙いにM&Aを進めているからです。

M&Aを実施する際、仮に黎明期に10億円で買収できる会社が成長期に入ると、一気に50億、100億円となることは珍しくありません。スタートアップが他社を買収する場合、同規模のスタートアップを狙い目にかなり早い段階で買収を実行しないと、逆に自分たちの会社が買収される側となってしまうこともあります。

「連邦制」の企業体が理想体

これまでにテラドローンはさまざまな企業と仲間になりましたが、それぞれの事業を分社化し、事業責任者に権限を委譲した上で、横の連携を強化してグループ全体をひとつの企業のように運営するそのスタンスはまさしく「連邦経営」です。

ドローンの業界自体の領域がかなり細分化されているので、地域や得意領域からおのずと連邦制による経営になる側面もあります。連邦経営のメリットではグループ企業間同士でシナジーが生まれやすいことです。テラドローンでも、オランダの点検会社の事例を日本で横展開したり、日本のデータ分析をインドネシアチームに依頼したりと適材適所でお客様に価値を提供することができます。

そうした背景があるからこそ、先ほど述べたように自社の価値観を押し付けないことが重要です。これまで進めてきたPMIについても、現地の人たちがやりたいことがかなりあった状況で一緒にどう実現させるかの視点が欠かせませんでした。絶対的な「正解」といったものも地域や事業フェーズによって変わるため、事情を考慮せず押し付ける形で進めると事業成長は難しいものがあります。

ただ、経営の原理原則は世界共通です。テラドローン全体のビジョンやミッションと照らし合わせながら、買収先の方向性を明確にすることが大事になります。買収後の関わり方がその会社に与える影響が大きいため、経営陣のインセンティブ設計やカルチャー理解などに注目し、M&AとPMIを切り離さずスムーズな体制を確立することが、あらゆる企業で重要になると実感しています。

テラドローンでは、今後も事業成長戦略の一環としてM&Aに注力していきます。世界に挑戦したいと考えている人、この記事を読んで挑戦したいと感じた人、またはすでに世界に挑戦中の人々、様々な方がいらっしゃると思いますが、少しでもテラドローンに興味を持っていただけたなら、ぜひお話しをしましょう!(DMでも大歓迎です!

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