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スタートアップがM&Aで失敗しない企業買収先の選定方法について

こんにちは、テラドローンのです。
テラドローンは設立以来、海外企業のM&Aを軸に事業を拡大させてきました。グローバル全体を見ても、創業期からM&Aを取り入れる企業は多くはありませんが、私たちはこの戦略を取って、グローバル展開を加速しています。

国内企業では海外のユニコーンのように設立当初からグローバル展開を見据えて事業展開を行っている企業はまだ少ないのが現状です。そうした中で政府や地方自治体から日本のスタートアップの海外展開を支援する施策が打ち出されるなど、かつてと比べて環境は整いつつあると感じています。また、M&Aにおいては、スタートアップが買収されるだけでなく、自らが買収するケースも増えています。

そこで、今回は創業期からグローバルでM&Aを展開してきた私たちだからこそ伝えられる「M&A戦略」について公開します!まずは、最初の壁である買収先選定についてまとめましたので、ぜひご覧ください!

なぜスタートアップでもM&Aを仕掛け続けるのか

テラドローンはこれまで海外の約20社に対してM&Aを実施してきました。海外企業のM&Aについて、日本企業でここまで積極的に展開している会社は大企業を除くとほとんどないかと思います。テラドローンにとってM&Aは、事業の成長、拡大に欠かせない重要な位置を占めています。

そもそも、なぜテラドローンがM&Aをひたすら繰り返しているのかという理由を端的に示すのであれば、「世界で本気で勝ちたいから」との言葉に尽きます。さらに付け加えるならば我々のビジネスモデルが、複数の国で展開せざるを得ない形だったことも影響してきました。

例えば、日本だとドローンが測量分野を中心に広がってきたのに対し、オランダでは天然資源のタンクなどの点検分野を中心に広がっています。同じドローンでも、グローバル全体で戦うにはローカライズを意識することがとても重要です

新産業に目を付けたM&A

ここからは、テラドローンが実際に海外でM&Aをどのように進めてきたのかをお伝えします。

日本企業が新たな国に進出しようとする際、最初にテストマーケティングを仕掛けるケースはよくあるかと思います。ただ、それでは解像度は上がらず、実際に現地を開拓するまでに長い期間を要することが課題です。

一方、テラドローンはM&A戦略を進めていくうちに、主に同業のサービスプロバイダーを買収して現地市場を探る手法を取るようになっていました。マーケティングコストの一環として、小規模でもいいので既に現地で展開している企業を経営することで市場の解像度はかなり高まると考えたからです。

買収はハードルが高い動きと捉えられるかもしれません。ただ、仮にその買収が失敗だったとしても、うまく損切りできる体制を整えることが重要です。そのためにも、エントリーバリュエーションを下げる努力を重ね、情報の非対称性をなくして、最小限のリスクで契約する動きがカギを握ります。

注意しなければならないのは、この手法が有効なのは黎明期にある新産業に限られるということです。既に市場が確立されている既存産業ではバリエーションが高くなっているため、この方法はおそらく難しいでしょう。

ドローンに関しても、黎明期だった2016年から18年の段階で世界中を飛び回って「目利き」をしてきたことが、テラドローンの成長に大きく影響しています。もし、当時と同じ動きを既に市場が確立された2024年の段階で進めたとしてもうまくいくとは思いません。

テラドローンは一時期、地下鉱山に特化した測量・点検サービスの分野を開拓しようとしていたことがありました。その際、私自身が南アフリカからオーストラリア、チリ、ブラジル、カナダと渡り歩き、実際に現地の鉱山に入ることもしてきました。テラドローンのM&Aでは、市場の可能性を探る上でこうした目利きが重要な意味を持ちます。

M&Aのカギを握る「3つのフェーズ」

M&Aの買収先を選定する上でテラドローンには大きく3つのフェーズが存在します。

Phase1:LinkedInやWebなどの情報を駆使して、買収先を選定する
ターゲットとなる企業についてLinkedInの情報などを通じてWebでとことん調べ上げ、アポイントをひらすら取って交渉を重ねていきます。泥臭い動きですが、こうした取り組みが市場を開拓しようとする最初の段階では欠かせません。実際に買収すると、次のフェーズに移ります。

Phase2:買収した企業から現地情報を仕入れて、買収先を選定する
現地で経営していると、現地の市場や業界の動きが自然と入ってくるようになります。そうした情報を基に、次のM&Aの候補を見つけて仕掛けていきます。インドネシアやマレーシアで展開するTerra Drone Agriも、Terra Drone Indonesiaの展開を通じてパーム油の農薬や肥料散布でドローンの活用が広がりつつある情報を仕入れたことが買収のきっかけでした。

詳しい買収の経緯については取締役の神取の記事をご覧ください

Phase3:インバウンド情報を基に、買収先を選定する
こうして、市場や業界に入り込むことで、インバウンドで情報が入り込むフェーズが確立されます。そうした情報や連絡を基に、さらなる事業の開拓に向けて進んでいくことになります。

この3つのフェーズで共通する重要なカギは、社外のアドバイザーなどの紹介経由ではないことです。アドバイザーに情報が入っている時点で、高値掴みで買収しやすい状況となっています。それよりも、我々にしか価値を見い出せない会社を見つけ、いかに早くリーズナブルに買収できるかがポイントとなります。

買収候補の見極めに重要な「デューデリジェンス」

その上でデューデリジェンス(DD)の取り組みは、自分たちで価値を見い出すためにかなり重要です。DDを実施する際、一般的にはFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)を利用し、大半の部分を任せきりにすることが多いかと思います。

税務研究会:「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」

買収しようとする会社の規模が小さいこともありますが、テラドローンはその会社の財務を自分たちで分析しますし、法務についても社内で可能な限り調べています。もちろん現地法などの専門分野は外部と協力します。また、税務に関してもローカルな要素が多いため現地の専門家に頼んでいますが、できるだけ自分たちで直接情報を取るようにしています。   

なぜ、ここまでするのか?それは、買収後のワーストケースを可能な限り避ける狙いがあります。買収するタイミングではテンションが上がって期待感が高まりますが、その後実際に一緒の会社となり進んでいくと、本来想定した通りの展開にならないことが多くあるからです。

テラドローンのDDでは現地に経営陣が駐在し、約1か月に渡って内部の状況を探っていきます。買収候補の企業の役員たちとともに過ごしていると、資料だけではわからない情報(創業者の関係性やマインドなど)が理解できるようになりますし、内部の雰囲気も把握できます。実際、DDを進める過程でワーストケースとなる要素が判明し、買収を断念したこともあります。それだけDDに関してこれまで注意深く進めてきました。

こうした経験を踏まえて言えるのは、日本企業が海外企業をM&Aしようとする際、その企業の実像を知らないまま仲介に入っているコンサルティング会社の情報を鵜呑みにしてしまうことです。もちろん、情報を仕入れるのはいいと思いますが、買収前と買収後のギャップを生じさせないためにも、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を含めて経営陣が深くコミットすることがなによりも重要になります。

さらに言えば、買収した企業の役員構成も重要な要素になってきます。よく経営管理能力が低い企業を買収すると伸ばしやすいといいますが、本当にそのとおりです。技術力や顧客がすでにいる企業は特に、経営管理能力を伸ばすことで収益性が大幅に改善され、企業全体の業績向上に寄与します。また、オーナーの影響が買収後も残っている場合、その人をどう生かすかを握った上で入り込まないといけません。その上で買収後のCxO人事は極めて重要です。

今回の記事の反響がよければPMIについてもnoteにまとめようとおもいます。日本電産の永守会長も「M&Aの成否は交渉2割、PMI8割」というくらいPMIが大事なので。

最後に

冒頭で述べたように、テラドローンがM&Aを積極的に仕掛けるのは、「世界で本気で勝ちたいから」との理由に尽きます。現地で最初からナショナルブランドの企業との関係を築き、事業開発に取り組むのはコミットメントが求められます。そうした状況に対して本気で勝てる戦略を突き詰め、事業を拡大させる最も早い方法がM&Aの手法でした。

M&Aを仕掛ける大前提として、我々のエクイティストーリーに合うかも重視してきました。ベルギーに本社を置くUniflyをまだ売上がない段階で買収したのも、UTM(ドローン運航管理システム)の分野が5年後、10年後には大きく成長すると見込んだからです。創業の2016年から出資を続けて、2023年の7月に子会社化しました。
 
それでも、M&Aは初めから成功するものではありません。テラドローンが買収した企業のうち本当にPMIできたといえるのは3~4社ほどです。一方で日本のスタートアップがグローバルで展開し、急成長を目指すのであれば本気で経営陣がコミットをしてM&Aを考えなければなりません。我々は世界で勝つため、これからもリスクを取り続けて突き進んでいきます。この記事が少しでも多くの方のお役に立っていたら嬉しいです。

最後に、テラドローンは共に世界で勝つ企業を目指すためのグローバルIRやM&Aを推進してくれる方を絶賛採用中です!少しでも興味を持っていただけたのなら、ぜひ一度お話しさせてください!(DMでも大歓迎です!


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