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「色々な音楽に触れている時間の方が長いのに、なぜハードコアにこだわっているのかは自分でもよくわからない」Tiveインタビュー
cover photo by piikann
ここ近年、躍進めざましい関西/大阪若手ハードコア勢の中でも、一括りにできない個性を放つバンド『Tive』にテキストインタビューを実施しました。昨年はSummer Bash FestやNerds Festなど国内ハードコアのビッグフェスにも出演し、今年もFurious World FestやBloodaxe Festlvalへ立て続けに出演が決定するなど、話題に事欠かさない存在となっています。
言葉では語り尽くせないほどにユニークで不思議な感触のバンドだと常々思っていましたが、インタビュー後もその印象は良い意味で変わらずといったところ。時おり危うさを感じてしまうほどの純粋さと、自己/他者と向き合う表現や感性の尖鋭さにはとてもアンバランスな魅力があり、それがユースならではの初期衝動や爆発力を伴って放出されるライブにおいては強烈な感動と、ある種の違和感を同時に覚えます。
こういった形でのインタビューは初めてとのことで、メンバー全員に話を聞いてみました。Tiveを既に知っている方はもちろん、知らない方も是非この機会にチェックしてみてください。
■Erolin:まず最初にメンバーの自己紹介をお願いします
ハジメ:Vo.の佐伯 基(さえき はじめ)です。※写真右下
タクマ:Dr.の拓真(たくま)です。※同左下
イクミ:Ba.の幾実(いくみ)です。※同左上
ケンタ:Gt.の求 健太(もとめ けんた)です。※同右上
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photo by 72369 from MINI MYTH
■バンドとしては正直終わりかけていた
Erolin:バンドおよびメンバーなどの沿革について教えてください
ハジメ:2019年に高校の同級生4人で結成しました。
タクマ:高校を卒業して2年ぐらい経ってからの結成だったのですが、最初は同窓会で久々に会ったハジメに誘われました。ドラムに関してはほぼ初心者だったので不安もありましたが、やりたい気持ちが勝ったので始めました。
イクミ:僕は2022年4月から入りました。
ケンタ:コロナ禍になって元々決まっていたわずかなライブが無くなり、出演のお誘いも無くなり、スタジオに入る頻度も少なくなり、一時、バンドとしては正直終わりかけていました。
しかし、そのまま終わるのは悔しすぎるので曲だけは作り続けていました。その後、イクミに入ってもらい「恥部」をリリースしたことで少しずつではありますが活動できるようになった感じです。
Erolin:ルーツや影響を受けたものを教えてください
ハジメ:ハードコアが好きな方が読んでいると思うので、ひとまずハードコアに限って話します。僕は高校1年生のときにTurnstileのライブに行ったのが始まりで、僕にとってはライブハウスに行くのも初めてでした。音楽の授業で一緒だったケンタに誘われて、タクマと3人で行きました。
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Japan Tour 2015
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固まっている3人が後にTiveとなる。
photo by tats from BLOW YOUR BRAINS OUT
タクマ:僕はこの日にもらったTigerのデモを聴きまくっていたのですが、それがハードコアのルーツだと思います。その後、僕はヒップホップを聴くようになるのですが、高校3年生の文化祭ではTurnstileの”Drop”をカバーしました。
メンバーは僕がドラムで、ケンタがギター、佐伯(ハジメ)がベースで、ボーカルは音楽とは全く無縁な野球部の友だちでした。「イェー、ドンニーザフューチャー、ドンニーザパァス!」と歌詞をカタカナで書いたノートを渡して、それを見ながら歌ってもらいましたね。
Drop以外には、Julietという女の子の”My First Hardcore Song”とBBQ CHICKENSの”Big Mac”をカバーしました。
イクミ:僕は専門学校でケンタと知り合いました。その当時、ケンタがCode OrangeのTシャツばかり着ていたので、それが何か尋ねたことがハードコアを知るきっかけとなりました。最初に”I Am King”を勧められましたが、僕はそれ以前にメタルもパンクも触れたことがなかったので、全く何がいいのかわからなかったんです。
次の日、そうやって正直な感想を言うと「ここでこうなってんのがすごいねん」と解説され、改めて聴き直したところからハマっていきました。
ケンタ:僕はTurnstile以前に、2014年の12月に新神楽でPalmのライブを観たのがきっかけでした。あまりにも衝撃的すぎて、ビビってCDも買えずに帰りましたね。
それと同時期ぐらいからPositive Diveという輸入代行をしている方のブログを読み始めて、ファッションやストレートエッジなどの文化的な面からハードコアを知っていきました。
その後はNumbernineが出ているライブを中心に観に行くようになり、同時に海外のライブ映像もかなり観るようになりました。その中でもhate5sixの存在はかなり大きかったです。This is Hardcore 2015に出演したSandの動画が上がったときは繰り返し観ていました。
■今、王道とされているものはかつて邪道だったのではないかと勝手に考えている
Erolin:音楽性を自分たちで説明するならどうでしょうか
ハジメ:ハードコアパンクのつもりです。
イクミ:王道のハードコアです。
ケンタ:そう思ってやってます。
Erolin:とはいえ、とても独特なスタイルだと思いますが、ハードコアやパンク以外からインスパイアされたもの、それが自分たちの音楽に表れているところなどはありますか?
ケンタ:自分でも独特やなと思ってます。らしくしたいのにできてないのでそう思われても仕方ないです。ただ、自分が好きなハードコアバンドも独特なのに堂々としているので、自分こそが王道だと思い込むことにしています。今、王道とされているものはかつて邪道だったのではないかと勝手に考えていて。でも多くの人に聴いて欲しいので、創作料理みたいにはならないように気をつけています。
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Erolin:歌詞について
ケンタ:Palmの影響もあり、日本語詞にこだわっています。先ほども話した初めてのライブを観たあと、再びライブを観る機会があり、そのときにやっとアルバム「My Darkest Friends」を買うことができました。
そこで初めて歌詞を見て、ほとんど日本語詞だったことが衝撃的だったんです。「おいっおいっおいっ」から始まり、詩的で人間味溢れる歌詞が続く”The Neighbor”には特に影響を受けましたね。
Erolin:曲を作るとき、ギターのリフなどではなく歌詞やタイトルから先に連想して作ることなどはありますか?
Tive:👻
Erolin:こらっ(笑)では、ライブでの曲間SEについて教えてください
ケンタ:Code OrangeとVeinに影響を受けて、曲の合間にSEを入れています。電子音にした自分たちの曲”Drift Further Away”を流して、最後に自分が衝撃を受けた短歌を乗せています。みんなにも知ってほしいと思って流していますね。
Erolin:特徴的なバンドロゴや、各種マーチについて
ハジメ:バンドロゴはケンタ考案です。マーチはなるべくメンバーみんなで話し合って作っています。
ケンタ:ロゴのくせに読みにくいという、ヘヴィーなジャンル特有の意味不明に惹かれたのでこういうロゴにしました。正直ここまで読みにくいのは、もっとエクストリームなジャンルになってしまいますが。
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Erolin:昨年のSummer Bash Festでのライブは今まで観たTiveの中でも個人的に思い入れがありとても感動しました。バンド名を冠したいつもより大きな電飾のデコレーションや、メンバー全員が上裸でのスタイルで臨んだり、Trapped Under Iceのカバーをプレイしたりなど特に気合いが入っていたように思います。あのライブに向けての準備や、終わった後の感触など聞いてみたいです
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ケンタ:準備で1番大変だったのは”触れるものすべてと血を通わす”を作ったことです。サマーバッシュの2週間前にレコーディングをして、それからすぐ1週間後にリリースしました。レコーディング直前にもパートを変えてメンバーにも負担をかけたり。
曲を作っている期間、常にプレッシャーを感じていましたが、個人的に楽しいことが沢山あったので、不思議な感覚で過ごしていました。普段、曲作りは苦痛なことがほとんどなのですが。苦痛だから曲作りをしているのでしょうか。すいません、話が逸れました。
ハジメ:2016年のサマーバッシュにTrapped Under Iceが出ていたこともあり、好きなバンドと同じ舞台に立ち、そのバンドのカバーができたのは嬉しかったです。
Erolin:現時点で敵わないと思ったアーティストなどはいますか
ハジメ:敵わないとは思わないようにしています。
ケンタ:そうじゃないとやってられないので、なんとしてでも自分の方がいいと思える部分を探してやっています。
Erolin:先人たちへの気持ちについて
イクミ:ハードコアバンドは短命なことが多く、それも儚くてよいのですが、そんな中でも長く現役かつ第一線で活躍しているNumbやSandはすごいなあと思います。
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Erolin:SNS発信などの露出についてどう思っていますか
イクミ:発信はしていません。気分で見ることはありますが、自分にとって悪い影響の方が多いのであまり見ないようにしています。
ケンタ:僕も同じ感じです。他に好きなものが多いので、SNSを見ている時間はそんなにありません。佐伯、いつも告知してくれてありがとう。
タクマ:ほんまありがとう。
■ハードコアに何かとてつもないパワーを感じている
Erolin:社会との接続や距離感など、バンドとしてはどのように向き合っていますか
ケンタ:すいません、今は言いたくないです。ほんまは話したいことはいっぱいあるんですけど、話してしまうとそれでスッキリしてしまって曲作りのモチベーションが下がってしまいそうなので、今回は少し尖らせてください。恥ずいですけど、すいません。
ハジメ:ケンタがこんな感じなのであえて僕の方から少し話すなら、社会との距離感の話か分かりませんが自分の気持ちには嘘つかんと正直でおりたいよなあっていうのはケンタとよく話します。ケンタいわくそういった信条を持った人を”光エッジ(ヒカリエッジ)”と呼ぶらしいです。握りしめた正直さが輝きのあまり拳を突き抜けて手の甲にキラキラとして現れるそうです。
ケンタ:そんなん言うたっけ
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Erolin:このようにインタビューされることはどう思いますか
ハジメ:嬉しいです。
ケンタ:ここまで読んでくださってる方、ありがとうございます。
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Erolin:自主企画は考えていますか
ハジメ:いつかできればいいのですが、今は考える余裕がないです。企画して呼んでいただいている方、いつもありがとうございます。
Erolin:もし企画をするとして、理想のラインナップを教えてください
タクマ:僕らのファーストショーのときのラインナップで、またできたらいいなと思います。
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Erolin:ハードコアやパンクにこだわりがありますか
ハジメ:こだわっているのかどうか、自分でも正直わかりません。ただ聴いていて1番心が震えるのがハードコアでした。自分のその気持ちは大事にしたいと思っています。
ケンタ:こだわりはあります。でも、四六時中ハードコアを聴いているわけではないですし、むしろ、色々な音楽に触れている時間の方が長いのに、なぜハードコアにこだわっているのかは自分でもよくわかりません。
ただ、大事なお金と時間を割いてまでしていることなので、ハードコアに何かとてつもないパワーを感じているのかなと思います。
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Erolin:メインストリームの音楽やシーンについて
ケンタ:切り込んでいきたいとは思っていませんが、多くのみんなに届けとは思っています。ハードコアには本来の音楽の楽しみ方に近いものがあると思うので、メインストリームの音楽よりもむしろ大衆に届くと信じています。
ハジメ:ハードコアはアンダーグラウンドのシーンに留めておくにはもったいない音楽だと思っています。
Erolin:共演したいアーティスト
タクマ:Soul GloやFuseなど日本で共演したバンドとは、いつか海外でも一緒にライブができたらいいなぁと思います。
Erolin:注目しているバンドなど
ハジメ:Turnstile、Code Orange、Deafheavenなど。まだまだ新しい景色を見せてくれそうな気がするので、今までもこれからもずっと注目しています。
ケンタ:それで言うとDeafheavenがRoadrunnerから出す気配があるのですが、それが楽しみです。これまでのリリースでも、1曲も余すことなく好きなので、どんな方向性であろうと楽しみです。
イクミ:Sugarと共演したときに、リハでNirvanaの"Breed"をカバーしていたのが印象的でした。新曲の”Luv”も含めて今後が楽しみです。
Erolin:今後の予定について
ケンタ:僕は4月から東京に引っ越します。
ハジメ:ぼちぼちやっていきます。
■Tive
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■Live Schedule
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Furious World Fest 2024
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Bloodaxe Festival 2024 -Spring-
https://bloodaxefest.thebase.in/