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ベンメリア遺跡と雨と575

雨が好きじゃない。

でも、生きているとた、たまに雨で良かったと思うことがある。


カンボジアにあるベンメリア遺跡も、ぜひ雨が降る日に訪れて欲しい遺跡の1つ。今回は、そんな話。


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カンボジアのシェムリアップで泊まっていた日本人宿が「プレアヴィヒア」と「ベンメリア」に行くバンツアーを企画していた。人数が集まれば催行するけど、行かないかと宿の人に声をかけてもらい、当然のごとく誘いにのった。

旅人ほどフットワークの軽い人種はいない。というより、たぶん足が地面についていない。少し浮いている。


結果的に、7人くらいが集まってツアーは催行される運びとなった。

ちなみにこの宿には1ドルビールというのがあって、みんな夜になるとこの1ドルビールを飲みに共有スペースにやってきてしこたま飲んだ。その流れで、ツアーの話をすると、多くの旅人はすぐに行くと答える。1ドルビールは尊い。

旅人がビールを飲むと、浮いているではすまなくなるらしい。もはやアイアンマンくらいの勢いで足の裏から何かが放出され、空を自由自在に飛び回ることができるほどになるようだ。旅人はアイアンマンだと思っていただいて、問題ない。



そんなこんなでバンに乗って、プレアヴィヒアを目指し、その後ベンメリアにたどり着いた。

シェムリアップからプレアヴィヒアまでは、3時間くらいかかるし、プレアヴィヒアでは結構な大雨にやられてビショ濡れになった。そんなこともあってベンメリアに着くころにはだいぶクタクタで、ベンメリアがどんな遺跡か知らずに参加を決めた足軽の僕はベンメリア観光なんてどうでも良いような気分になっていた。

でも、そんな疲れを吹き飛ばすくらいのパワーがベンメリアにはあった。

雨はまだしとしと降っていた。やみかけているような、でもまだ少し降っているような。ベンメリアはすごい空気に包まれているような気がした。


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ベンメリアは、発見当時から崩壊が激しく、修復もされておらず、森の中の廃墟と化したような場所。遺跡は崩れ、がれきが散乱して、苔がむしている。

でも、その雰囲気は決して雑然としていない。もしかするとこれは「侘び寂び」みたいなものに似ているのかもしれない。

崩壊が進み、苔がむす遺跡に雨がしとしと降りかかる。その姿は飽きることなく眺め続けることができる。気を抜くと、どこか別の世界に行きそうだ。


遺跡は崩壊が激しいので、立ちいることはできず、周囲の欄干を歩きながら見学する。

入り口付近にいた子どもたちが、近づいてきてガイドをしてあげると言いだした。しかし、ガイドは必要ないので辞退する。しばらくは粘ってついてきていた子どもたちだったが、途中で諦めていなくなった。

そんな子どもたちがベンメリアをうろうろしている間に違うところから顔を出したものだから、何やら本当に不思議の森に迷い込んだみたいだ。子どもたちは、ベンメリアの中を自由自在に動き回っているらしい。

ジブリか。ジブリやないか、その世界観。ちなみに、ジブリ映画に出てくる子どもは運動神経が良いと相場が決まっているが、今はそんなことどうだっていい。


ベンメリアは、「天空の城ラピュタ」のモデルになったとか言われているけど、そんなことは誰かの後付けだろうし、はっきりいって、そんなことは観光のポイントになりはしない。

でも、ジブリの世界観を感じられる場所が現実にもちゃんとある、ということは現実世界に生きる僕たちが誇るべきことだと思う。それくらい素敵で不思議な景色がベンメリアには広がっている気がした。


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それにしても、ベンメリアには雨が似合いすぎる。それもしとしと降る雨が。苔がむし、木が茂り、森に飲み込まれたようなその遺跡に、しとしと雨が降って、霧が立ち込める。

もしかすると、これはすごい時にベンメリア遺跡にきてしまったのかもしれない。

こんなに雨を歓迎して、感動したのは人生で初めてかもしれない。


いや、そんなこともない。高校の部活が外練の日。長距離走のトレーニングがいやで、雨をどれほど心待ちにしたかわからない。


こいつはこの展開で何と何の雨を比べだしたのだろう。雰囲気が台無しである。


それにしても、書き出したのはいいのだけれど、結局、この話を通していいたいことはなんだったのだろう?いつも勢いにまかせて書き出すので、あんまりテーマを決めて書き出すことはないのだけれど、だいたい途中で、結局こんなふうなことが言いたいのだなと決まることが多い。でも、今回ばかりはそうもいかない。まぁベンメリアは素晴らしいところだから、また旅に出れるようになったらぜひ訪れて欲しいという内容なのだけれど、それは浅すぎる。


とはいえ、しめかたがいまいちわからないので、5・7・5でしめくくってみよう。


ベンメリア 苔むす遺跡 雨が降る


何の侘び寂びのかけらもない川柳ができた。

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