海外子会社監査人との信頼関係をどう築くか【監査ガチ勢向け】
グループ監査を成功させるためには、子会社監査人との信頼関係が物を言います。離れた国にいて、時差があり、言語も違う人たちの信頼をどう獲得するか。私がやっていきたことをお話しします。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。
子会社監査人にインストラクション(監査指示書)を送り、監査結果が返送されてきたらファイルして終わり。そんな牧歌的な監査はいつのことだったか。
今や成長の源泉が海外にあるクライアントは多く、監基報600も改訂され、グループ監査はますます重要になっています。
海外子会社監査人とのコミュニケーションはなぜ重要か
皆さまには今さらの話ですが、軽く押さえておきましょう。
監査品質
親会社監査チームは、子会社監査人の監査の詳細にまで立ち入って、文書化することが求められています。
子会社監査人にしっかりと監査してもらうためには、頻繁にコミュニケーションを図り、状況を把握したり軌道修正する必要があります。
期日遵守
子会社監査人に要求した手続が完了し、その結果の正式な報告を受けなければ、親会社監査チームは監査意見を出せません。
子会社監査人の監査の進捗を把握してサポートすることが、連結監査全体にとっても必要になっています。
サービス向上
さまざまな意味で日本国内とは勝手が違うため、海外がらみの問題はよく起こります。うまく取り扱わないと、クライアントからのクレームにつながります。
また、親会社が子会社をうまく管理できていないところをサポートできれば、喜んでいただけます。
海外子会社監査人とのコミュニケーションと信頼関係
親会社監査チームも子会社監査人もプロですので、責任をまっとうするべきであることは言われなくても分かっています。
しかし、監査人としての最低限にとどまらず、もうひとがんばりが必要なこともあります。そんなときに信頼関係が物を言います。
お互い人間なので、知らない人より知っている人の方が、単なる知り合いより友人の方が「一生懸命やってあげよう」と思うものです。
グループ監査に慣れていない人が「子会社で問題が起こっているのに、子会社監査人から連絡がない」と憤慨していたのですが、話を聞いてみるとインストラクションを送る以外コンタクトしたことがないとのこと。それならわざわざ「初めまして。ところでトラブってまして…」とは言って来ません。
海外子会社監査人との信頼関係の築き方
そんな重要な信頼関係は、どうやって築いていけるでしょうか?
頻繁かつ密度濃いコンタクト
繰り返しコンタクトがある相手にはポジティブな印象を持つ、という現象は単純接触効果と呼ばれます。
監査人どうしも、何度も接触するうちにだんだん打ち解けてきます。
また、コンタクトの密度も重要。
メールより電話、電話より顔出しリモート会議、さらに対面でのミーティング、食事、の順に密度は濃くなります。ゴルフをするなどもっと長時間一緒にいると、さらに濃厚と言えるでしょう。
リモート会議などで接触の頻度を多くするとともに、できるだけ対面で会う機会も作ると信頼関係が生まれやすくなります。
相手への感謝の気持ち
頻繁にコンタクトしても、偉そうに上から目線の物言いだと逆効果ですね。
まずは感謝の気持ちが重要です。
「この子会社を担当してくれてありがとう」
「いつもがんばってくれてありがとう」
「ほかのクライアントで忙しいのにありがとう」
コンタクトがある都度、口に出して伝えましょう。そうすると、相手も「こちらこそありがとう」と感謝を返してくれます。
これは文化が違っても同じだなと思います。
機会があれば助けてあげる
子会社監査人が困っていたらチャンス。助けてあげると信頼につながります。
子会社と監査報酬でもめている
子会社が監査に協力してくれない
人手不足で進捗が悪い
監査報酬や監査への協力は、親会社の経理部門から子会社に話してもらうことで解決することがあります。
進捗が悪いときは、一部の手続を親会社監査チームで巻き取ってあげることも。ただしその場合は、子会社監査人の監査報告で限定が付くことがあるので、事前に詳細な打ち合わせをしておきましょう。
雑談は必須
電話でもミーティングでも、冒頭の雑談はとても重要です。
特に相手が前回話していたことを思い出して、話題に出してみましょう。家族のこと、趣味のこと、体調のことなど。
メールでも、冒頭か追伸で触れるとちょっとなごみます。
誰でも自分が大事にしていることを気遣ってもらえるとうれしくなります。さらに前回話したことを覚えてくれているのも、自分が尊重されているようで好感を持てます。
信頼関係構築のために、雑談は必須だと思います。
おわりに
私は「監査でうれしいと思ったのはどんなときですか」という質問に対して「仕事で接点のある人と気持ちが通い合ったと思えるとき」と答えています。
自分の監査チームのメンバーやクライアントだけでなく、地理的に離れている上に文化も言語も違う海外のパートナーやマネジャーとそんな気持ちになったときには、一層大きな喜びを感じます。
「信頼関係の築き方」に挙げた方法は打算的に感じたかもしれません。
しかし、毎日のように対面で会い、バックグラウンドも似ている人とは違って、少し前のめりにならないと信頼には至らないと感じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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