内部統制不備の改善策を立案する前に考えるべきこと
てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。
不祥事が起こると、原因究明して再発防止策を立案します。
また、内部統制の不備が発見されて、改善策を立案することもあります。
いずれの場合にも、しっかりした再発防止策/改善策を立案するために、まず頭に入れておくべきことが3つあります。
責任追及と再発防止を切り分ける
不祥事や不備の根本原因を探り当て、そこにメスを入れる
個別の対策ごとにふさわしい時間軸を設定する
それでは、レッツゴー!
責任追及と再発防止を切り分ける
何か問題が発生したときに、「悪いやつは誰だ!」「誰の責任だ!」と犯人探しモードになることがあります。
これは、処罰するべき人を特定するためには必要です。しかし、再発防止策とは切り離して考える必要があります。
そうでないと、最悪のケースでは「悪いやつを排除したから、もう大丈夫だ!」なんて対応になります。
再発防止策は、人に焦点を当てるのではなく、組織の仕組みに焦点を当てないといけません。
不祥事や不備の根本原因を探り当て、そこにメスを入れる
伝票の承認ができていなかった、という運用の不備が発見されたとします。
この場合、原因究明が「承認者がちゃんとやらなかったことが問題だ」で終わってしまうと、承認者に厳重注意したり、研修を受けさせたり、といった改善策になります。
しかし、もし承認者にやむにやまれぬ事情があったとしたら… その場合は、その「事情」を取り除かないと、本当の改善には至れません。
例えば、こんな事情がありえます。
承認のための十分な時間がない
一つひとつには時間のかからない伝票承認でも、1日2千回あるとどうでしょうか。1件5秒としても、3時間弱かかります。ほかの仕事が忙しくなると、ほとんど見ずに承認してしまうかもしれません。あるいは、腑に落ちない点があっても、時間がないため承認してしまうかもしれません。
承認者にとって難易度が高すぎる
承認者の能力に照らして、荷が重い場合があります。
あるいは、相当に頭がさえているときでないと問題に気づかないような、キレッキレの判断を求めているかもしれません。
無理なことを続けていると、どこかでほころびが出ます。
承認者が承認の必要性を疑っている
世の中の品質不正はおおむねこれです。
承認するハードルが不必要に高いので、多少下げても問題ないだろう、と勝手に下げてしまう。
あるいは重複したチェックが別にある場合も、自分は見逃しても大丈夫、と安心してしまいがちです。
上記はいずれも、承認者が「時間がありません」「難しすぎます」「不要ではないですか」と言ってくれれば対応できたことです。しかし、責任感がある人は言い出せず無理に、責任感がない人は言い出さず、よくない状況が続いてしまうことがよくあります。
個別の対策ごとにふさわしい時間軸を設定する
不祥事にせよ不備にせよ、重大であればあるほど、再発防止策実行の期限を切られます。
例えば、記者会見で「今日から1ヶ月で再発防止策を完全実行します!」と言えるとカッコがつきます。あるいは比較的短期間のうちに、「もう大丈夫、改善済みです!」と宣言したい気持ちも分かります。
しかし、再発防止策の中には、長期間実施してじわじわ効いてくるものも。
すべての対策を短期間で実行済み、としようとすると、長期にわたって実施するべきものが中途半端に終わってしまうか、そもそも再発防止策から外されてしまうか、いずれにしても真の改善にはつながりません。
本当に改善しようと思うのであれば、しっかり実施するために必要な期間を見積もって計画することが重要です。
おわりに
再発防止策や改善策を立案する前に考えるべきこととして、3点を説明してきました。
責任追及と再発防止を切り分ける
不祥事や不備の根本原因を探り当て、そこにメスを入れる
個別の対策ごとにふさわしい時間軸を設定する
真の改善につなげるために、参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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