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財務報告に「係る」内部統制と「係らない」内部統制【内部統制ガチ勢向け】

2008年にJ-SOXが導入されて、日本での「内部統制」の認知度が上がりました。でも、J-SOXの対象は財務報告に関連するものだけ。内部統制はほかにもたくさんありますよね?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

J-SOXでは、内部統制を次のように定義しています。

業務の有効性及び効率性報告の信頼性事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセス

企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」より(太字は筆者)

ここでは、内部統制には4つの目的があると言っています。

  • 業務の有効性及び効率性

  • 報告の信頼性

  • 事業活動に関わる法令等の遵守

  • 資産の保全

これだけ見ても「報告の信頼性」以外にもいろいろな目的の内部統制があることが分かりますね。
今回のてりたまnoteでは、具体的にどんなものがあるのか見ていきましょう。


業務の有効性及び効率性

営業マンをサボらせない内部統制

いきなり不穏なタイトル(しかもジェンダーバイアスの問題も)ですが、「営業活動の生産性を上げる内部統制」とでも言えば穏当でしょうか。

営業マンをサボらせない内部統制の例
営業部門の管理職は、営業担当者の日報をレビューする

日報は顧客の動向について情報収集したり、営業担当者の活動を支援したりするためのもの。
でもサボっていたら書けないので、尻を叩く役目も果たしています。

製品の品質を維持するための内部統制

不良品を出荷してしまわないような内部統制も重要ですね。

製品の品質を維持するための内部統制の例
品質保証部門の責任者は、出荷前検査レポートをレビューし、すべての項目が合格していることを確かめて出荷を承認する

この責任者の承認なしには出荷できない仕組みも必要です。
不良品は返品されるリスクが高いために、財務報告に係る内部統制でもあると考えられるかもしれません。

安全衛生確保のための内部統制

従業員をけがや病気から守るための内部統制です。

安全衛生確保のための内部統制の例
危険な作業場所では必ずペアで作業し、作業前にお互いが命綱をつけていることを指差し確認する

安全衛生には、法令で定められたルールもたくさんあります。
法令遵守目的の内部統制については、あとで触れます。


報告の信頼性

まさに「財務報告に係る内部統制」が該当しますが、J-SOX対象外のさまざまな「報告」がありますね。

  • 社内向け報告
    例:月次営業報告

  • 社外向け非財務報告
    例:サステナビリティ報告書、ガバナンス報告書

  • 社外向け財務報告のうちJ-SOXの対象外のもの
    例:決算発表資料、計算書類、事業報告、有報の一部

決算発表資料を例にとると、SaaSビジネスでは、ARR(Annual Recurring Revenue)やチャーンレート(解約率)など特有の指標を開示することがよくあります。
投資家にとって重要な情報ですので、間違いがあると信頼を失ってしまいます。

J-SOX対象外の報告に関する内部統制の例
経理部長はARRの計算式の妥当性を確かめ、各計算要素について関連するシステムの出力との一致を確かめるとともに、過去のARRと比較分析する


事業活動に関わる法令等の遵守

法令遵守といっても、そもそもの法令の目的によって、従業員、顧客、取引先を守ることにもなっています。

労働基準法遵守のための内部統制の例
管理職は部下の残業時間をモニタリングし、別途定める基準を超える部下については面談により健康状態を確かめるとともに、業務量を調整する

道路交通法遵守のための内部統制の例
呼気検査の結果が問題ないことが確かめられるまで、運転手に社用車のキーを渡さない

法令違反でなくても、社会から道義上問題ありとされて制裁を受けることもあります。
それを防ぐのも内部統制。

人権を守るための内部統制の例
取引開始時及び取引開始後3年ごとに、外部機関に委託して仕入先の人権問題の有無について調査する


資産の保全

貸借対照表に計上されている資産の保全は、基本的に財務報告に係る内部統制に該当します。
紛失や盗難があれば会計処理が発生しますし、不適切な使用や保管による価値の低下は評価の問題になります。

資産の保全に関する内部統制の例
研究開発目的で取得し、すでに費用処理した資産について、実地棚卸を実施する

会計上は費用計上済みで資産には計上されていませんが、なくなると研究開発活動に支障をきたしますので、存在することを確かめる手続が必要になることはあると思います。


おわりに

できるだけ内部統制っぽいものを選んだのですが、内部統制なのかどうか、難しいものもありますね。

例えば、製造現場で鉄板をプレス機にかけて成型する工程があるとします。
プレス機に手をはさんでしまうと大けがになるので、ちょっとした仕掛けを作って安全を確保することがあります。

これは内部統制?
プレス機は二つのボタンを両手で同時に押さないと作動しない仕組みにする

リスクを回避・軽減できるか否かが重要で、それが内部統制なのかどうかはどうでもよいと思うのですが、念のため取り上げないことにしました。

ちょっとした雑談でした。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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