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監査の生産性向上を考える【監査ガチ勢向け】

人手不足で、監査チームは上から下まで忙しい。何に忙しいのか分析する手がかりを考えてみます。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

監査法人の退職者が多い一つの原因は、忙しすぎることにあると思っています。
忙しすぎて、心身ともに疲弊してしまう。
忙しすぎて、プライベートの時間がとれない。
忙しすぎて、やるべきことが終えられず焦燥感がある。
忙しい割に、意味のある仕事をやり終えた充実感がない。



「忙しすぎる」を分解

「忙しすぎる」を簡単な数式を使って考えてみましょう。

(仕事の成果)=(投入時間)X(生産性)

仕事の成果

監査の場合、「監査の基準に基づいて、監査意見を表明するに足る心証を積み上げること」が達成するべき「仕事の成果」になります。

このほか、クライアントの満足度向上、収益性の確保、人材育成なども同時に追求します。ただ、これらだけを達成しても監査意見が出せないと意味がないので、心証の積み上げに集中してみましょう。

どのような心証をどれだけ積み上げないといけないか、は監基報などの基準に規定されています。しかし、どうしても解釈の余地があります。
検査や審査での指摘、監査の失敗への反省などを踏まえて、ハードルは上がり続けている印象です。

投入時間

自分に与えられた割当をこなすためであれば、投入時間は自分自身の時間。
現場のリーダーとなって監査チーム全体やその中のサブチームを担当する場合は、チームメンバーと自分の時間の合計がこれに当たります。

数式にするまでもないですが、一応次のように表現できます。

(投入時間)=(一人当たり平均投入時間)X(チームメンバーの数)

生産性

単位時間当たりの仕事の成果が「生産性」。

とにかく作業を手早くする。
ムダな時間を減らす。
ムダな作業を減らす。
そうすることで、「生産性」を向上させることができます。

ここで先ほどの二つの数式を再掲。

(仕事の成果)=(投入時間)X(生産性)
(投入時間)=(一人当たり平均投入時間)X(チームメンバーの数)

監査現場が「忙しすぎる」のは、次のことが起こっているためです。

  • 必要な「仕事の成果」は増え続けている

  • 「生産性」は新しいITツールや作業の集中処理を導入して向上を目指すも、なかなか結果が出ていない

  • 「チームメンバーの数」は、よくて横ばい

  • よって、「一人当たり平均投入時間」を増やすしかない(≒とにかくがんばって何とかする)

結果として、今日も残業することになります。


生産性をもっと向上させられないか?

「仕事の成果」は減らせない。
「チームメンバーの数」は増やせない。
「一人当たり平均投入時間」を増やすのはもう無理。
一縷の望みは「生産性」の向上に向かいます。

先にお断りしておきますが、残念ながら優秀な皆さんでも考えつかないような秘策は私にもありません。
「これで監査時間を○%削減! 生産性を爆上げするとっておきの方法」のようなYouTubeでも出せれば注目を浴びそうですけどね。

そもそも、生産性を向上するとはどういうことか?

これまで、てりたまnoteで何度も生産性向上について取り上げてきました。

そもそも生産性向上とは何を意味しているのか、作業レベルから監査制度レベルまで、それぞれについて説明しているのが、この記事です。

「効率化」とは、生産性向上と同じ意味として使っています。

生産性の向上はなぜ進まないのか?

次に、生産性向上が進まない理由について、調書作成者、査閲者、審査担当者、品管、クライアント、それぞれの事情を説明したのがこの記事です。

ここでは生産性向上のための若干の提案もしています。

  • 効率化に目的を絞ったチームディスカッション

  • 品質管理部門による効率化提案

  • 効率化のためのクライアントとの協議

詳しくは記事をご覧ください。

生産性向上に向けたもう一つの切り口

生産性を検討するもう一つの切り口をご紹介し……たかったのですが、長くなりそうなので次回に回します。スミマセン

さわりだけお伝えすると、投入時間を分類してみましょう、というお話しです。
勤務時間、就業時間、実働時間の区別や、実働時間の内容も区分できるので、このあたりを手がかりに生産性を考えてみたいと思っています。


おわりに

最近、監査法人の退職者が少し減ってきたと聞きます。
ここから、「チームメンバーの数」が増加→「一人当たり平均投入時間」が減少→みんな元気に→生産性が自然に向上→「一人当たり平均投入時間」がもっと減少、となればよいのですが、まだ予断を許しません。

サステナ開示の保証など業務が増える要素はあり、非上場会社のIPOへの意欲も旺盛です。
まだまだ生産性向上への道は続きそうですね。引き続き、いっしょに考えていきましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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