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シニアパートナーが初担当のクライアントで最初にやるべき3つのこと【監査ガチ勢向け】
監査報告書の一番上にサインするパートナーは、一つのクライアントに5年間しか関与できません。5年なんて、何もしない間に終わってしまいます。そんなことにならないために、最初にやるべきことがあります。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。
パートナーのローテーションルールが確立するまでは、大先生が同じクライアントを何十年も担当するようなことがありました。
今ではありえないと思われるでしょうが、クライアントの誰よりも会社の内情に詳しかったり、経営者も大先生にだけは従順だったり、それなりの存在感を発揮していたようです。
時代は変わり、今は筆頭として関与すると5年間しか関与できません。
下手するとクライアントと人間関係を築くことができず、監査チームとも打ち解けられず、アウェイ感を抱いたままローテアウトすることになりかねません。
私より先輩のパートナーが現役で活躍されている中で、偉そうに書いてよいのか、と一瞬の逡巡はありました。しかし、どうせ読まないだろうと高をくくって先を勧めます。
シニアパートナーとしての関与の難しさ
皆さんには、監査チームのトップであるシニアパートナーはどう見えていますか?
「報告会くらいしか会社に来ない」
「調書レビューしても、たいしたコメントがない」
「クライアントのことを知らなくてびっくりした」
こんな人ばかりではないと思いますが(思いたいですが)、こうなるのには理由があります。
まず、シニアパートナーは1社にあまり時間を使えません。
担当しているクライアントがたくさんあったり、法人の重要な役職に就いていたりするためです。
クライアントのことを理解するためには、一定時間を初期投資することがどうしても必要です。
一旦理解すれば勘所が分かるので、あとはあまり時間をかけなくても効率的に能力を発揮することができます。
以前にがっつり関与したことがあれば、ローテーションの1年目でもビジネスが分かるし、会社の執行部も知っているし、ガバナンスや内部統制の課題にも鼻が利きます。
ところが過去にまったく関与したことのないクライアントを、シニアパートナーとしてはじめて担当することがあります。
そうすると、最初の「一定時間」が確保できず、そこにいるだけになってしまうか、見当違いのことを言って監査チームやクライアントを振り回すか、どちらかになりがちです。
シニアパートナーが最初にやるべきこと
そんなことにならないために、はじめて関与するクライアントについては、1年目のできるだけ早いうちに次の3つをやっておく必要があります。
❶ チーム目標の確認または設定
「監査チームの目標」と言うと、違和感がありますか? 「監査意見を表明する以外、何があるの?」と思われるかもしれませんね。
例えば、こんな目標がありえます。
監査に協力的でない○○副社長の信頼を獲得する
チームメンバーの半分が交代する中で、監査をやり切る
新しい会計基準導入に当たり、クライアントに伴走しスムーズに監査を終える
品管をうまく巻き込んで、GCの問題のある監査を乗り切る
シニアスタッフの○○さんをマネジャーに昇格させる
監査工数を○%削減する
まず、前期から継続しているメンバーに、チーム目標を聞きましょう。
チーム目標がなかったり、変更が必要であれば、チームミーティングを開催して議論します。
関与するパートナーとマネジャー全員、できればシニアスタッフもまじえて議論できるとよいですね。
この議論をする中で、監査チームの状況に加えて、このチームがクライアントをどう見ているかも分かってきます。
❷ チームメンバー全員との面談
パートナーなんて偉そうに見えるかもしれませんが、マネジャー以下の皆さんがいなければ何もできません。
パートナーばかりがんばってもよい監査はできないし、クライアントから評価されることもありません。
そこで、メンバーのことをよく知る必要があります。
そのために、one-on-oneの面談です。
面談では、本人のこと、チームのこと、クライアントのことを聞きます。
本人のこと
今後どんなことをやっていきたいのか、どんなキャリアパスを念頭においているのか、といった仕事のこと
健康面の不安、家族のこと、その他パートナーに知っておいてほしいことチームのこと
チームワークやクライアントとのコミュニケーションをどう見ているか
チームの課題は何かクライアントのこと
クライアントの経理能力や監査対応をどのように評価しているか
クライアントのどのような課題を認識しているか
クライアントについて情報を得るだけでなく、今後何かあれば相談しやすい雰囲気を作ることも重要です。
❸ クライアントの事業所見学
シニアパートナーは、クライアントの本社にしか行ったことがない、という状況におちいりがちです。
しかし、本社で会社の人と話し、調書を見ているだけでは、クライアントの事業のイメージがなかなかわきません。
そこで、工場、支店、子会社などの往査に同行したり、往査がなければ見学させてもらったりして、自分が行ってみます。行ってはじめて分かることがあります。
また、同じ指摘をするのでも、行ったことがあると迫力が違います。
三現主義(現地、現物、現実)など現場主義を標榜する会社は多く、経営者から「ところで○○先生は現場に行って見ていただいたんですか?」と聞かれることもあります。
関与できる限られた時間を、すでに何人もレビューした調書を眺めるのに使うのではなく、クライアント理解を足で稼ぐことに投入するべきだと思います。
チャージ時間や交通費が問題になることもありますが、時間はチャージせず、交通費もクライアントに請求しなくてもよいではないですか。その投資は必ず報われます。
おわりに
もし本物のシニアパートナーがこれを読まれていたら、「おい、てりたま、お前は完璧にやってたんだろうなあ、あーん?」と思われているかもしれません。(そんなガラの悪い人はいないかな?)
告白しますと、努力はしたものの完璧にはほど遠い状況でした。私の場合は、特に事業所に足を運ぶことがタイミングもあって(言い訳です)できていませんでした。しかし、もっと早くやっておくんだった、とあとで後悔することがよくありました。
そんな私の反省を含めての記事でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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