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経営者に刺さる監査人の指摘【監査ガチ勢向け】

クライアントの経営者に会う機会に、せっかくなら刺さる話をしたい。あるいは刺さるように伝えたい。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

どんなことを言えば経営者、特に社長(あるいはCEOである会長)に刺さるのか、長年悩んできました。
今回のてりたまnoteでは、その過程で考えてきたことを披露します。
「もっとこんな説明の方が刺さったように思う」「私は経営者だが、そういうことじゃないんだよ」といったご意見をいただけると、たいへんありがたいです。

ところで、次の指摘はどう思いますか?

「25件サンプルテストしたところ、2件について承認印がなく、ほかの方法でも承認された事実が確かめられなかったため不備です」


何も間違ったことは言っていませんが、「う…刺さった…」とはならないでしょう。
こんなのはどうでしょうか?

「営業部門で2件、製造部門で3件の内部統制の不備が発見されました。いずれも前期から1件ずつ増えました」


増えたことはよくないけど、「で?」という感じになるのではないでしょうか。
ちょっと趣向を変えてみましょう。

「これまで仕入取引での不備はなかったのですが、今回、(5つあるうちの)3つの事業部の調達部門で不備が見られました」


これだと「え、どれも調達部門? 何が起こってるんだろう」とちょっと気になりませんか?
さらに違うケースで…

「過去10年に御社の海外拠点で3回の不正がありましたが、いずれもベテランの経理責任者が実行者になっています」


「言われてみればそうだなあ」と思っていただけるかもしれませんね。
4つ挙げた例のうち、最初の二つとあとの二つは何が違うんでしょうか?
あとの二つの方が、事実だけ見ても重大そうですが、ここでは伝え方に注目してください。


監査人は大事だと思って言っていることが、経営者は大事だと思えない。この違いは、

経営者と監査人の目線の違い


にあることに思い至りました。

監査人は過去の財務数値を検証したり、過去に整備・運用された内部統制を検証します。
一方で、経営者の意識は将来を向いています。終わった事業年度のことをとやかく言われても、遠い昔のことのようにしか思えないでしょう。

とは言っても、監査人が翌期の予算のことを語り出すのもちょっと変です。

結局、両者のクロスするところで議論できれば、監査人は自らの守備範囲を踏まえた話ができ、経営者も興味が持てると考えられます。
すなわち、

過去を監査した過程で発見したことや気づいたことを、いかに将来に関連付けて伝えるか


という勝負ではないか、という仮説です。

先ほどの4つの例のうち、最初の二つは過去の事実をそのまま伝えました。
あとの二つも過去の事実がベースですが、
「調達部門で何か起こっているのか? もっと重大な問題につながるのではないか」
「ベテランに経理を任せている海外拠点はほかにもあるが、大丈夫だろうか」
と現在や将来に関係のある問題として受け取れるように伝えています。

「調達部門」「ベテラン経理責任者がいる海外拠点」という抽象化したキーワードを差し込んだことで、実際に発見された問題を超えてより広い範囲に思いが及ぶようになったと考えています。


おわりに

以前担当していたクライアントで、四半期ごとに社長に報告する会社がありました。通り一遍の報告ばかりしていると「自分の時間の無駄なので出たくない」ということにならないかと、いつも冷や冷やしながら臨んでいました。

この社長やほかのクライアントの経営者とお話しする機会には、満を持して話したことが無反応だったり、意外な指摘事項に興味を持っていただけたり、試行錯誤の連続。
もちろん、炎上することが分かっていて腹を決めて臨んだ報告会もあります。
そんな場の数々で鍛えられて、どうにか監査を続けることができました。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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