初めての監査調書レビュー///基本編///【監査スタッフ向け】
調書の作成方法は研修などで教わっても、レビューのやり方は誰も教えてくれないのではないでしょうか。初めてレビューしろといわれたら困りませんか?
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。
私が初めて調書をレビューしたのは、スタッフ4年目のとき。上司から「1年生の調書を見てやって」と言われました。
ところが、何度見返してもちゃんとできているようにしか見えない。いや、1年生でそんなはずはない。一つのコメントも思いつかないなんて、自分はバカなのか…
ちなみにその1年生はその後の成長目覚ましく、パートナー昇格はぎりぎり追い抜かれず私と同時でしたが、それから私を置き去りにして日本も飛び越えて偉くなってしまいました。
優秀な人であったことは間違いないですが、さすがに1年目から完璧ということはなかったと思います。私が調書の何をどう見てよいのか、分かっていなかったということでしょう。
ふし穴の目を持つ当時の私に教えてやりたい、レビューのコツとは?
調書レビューのコツ
あるべき調書のイメージを持ち、そのイメージとどこが乖離しているかを見る
きれいにまとまっている調書をさらっと読むと、何も引っかかりなく最後まで読んでしまいます。スタッフ4年目の私がそうでした。
自分だったらどんな調書にするかというイメージが描ければ、レビューしながら違う点に気づくことができます。
もちろん、イメージと違っていたらダメという話ではなく、違う点を重点的に見るということです。
そんなイメージをしている時間がないときは「この調書を作成者から引き継いだら、どこに手を入れるか」を考えるのでもOKです。
懐疑心を持ってレビューする
懐疑心は耳タコですが、それには理由があります。懐疑心を維持することはそれだけ難しいんです。
調書レビューでも同じこと。「きっと大丈夫だろう」「頼むから大丈夫であってくれ」なんて思っていたら、見えるものも見えなくなってしまいます。
懐疑心が持ちづらいときは、ちょっとネガティブですが、あとで上司から「お前、何を見てたんだよ」とパワハラ的に怒られるとか、外部検査に当たって合法的なパワハラ(≒指摘事項)を受けてしまうことを想像してください。
できるだけ早くレビューする
調書作成から半年も経って、作ったことも忘れたころにレビューコメントのフォローをさせられるのはイヤですよね? レビューする立場になったら、すぐに見てあげましょう。
作成者の記憶が新しい間の方が効率的ですし、早い方が大きな軌道修正がしやすかったり、クライアントに依頼しやすいということもあります。
できるだけライブのコミュニケーションを重視する
調書が分かりづらくかったら、ライブで説明してもらう方が手っ取り早いですね。
また、コメントしたことが勘違いだと分かってもう一度レビューすることになるとお互い非効率です。
コメントを伝えるときも直接話せると、その場で解決できることもよくあります。
レビューコメントの取り扱い
レビューして気づいたところをコメントするわけですが、そのときに気をつけるべきことがいくつかあります。
レビューコメントの取捨選択
気になったことのうち、調書作成者にフォローしてもらう必要のあるものをコメントします。
必要性を見極めるには、次のような点を検討します。
そのコメントは監査にとって重要か、緊急性はあるか
期日までに時間的な余裕はあるか
フォローするリソースの状況はどうか
調書作成者の教育のために伝える方がよいか
コメントの言葉遣いに注意
調書作成者は、コメント一つでモチベーションが上がったり、自信喪失したり、不満がたまったりします。
ちなみに↓こんなコメントをしてはいけません。私も一回だけです。
よかった点も伝える
部下を持つと分かりますが、人をほめるのは難しいことです。
「すごいね」「がんばってるね」と雑に言って響かないこともあれば、具体的にほめたところが実は的外れで言わなきゃよかったと後悔することもあります。
特に調書レビューでほめるコメントをするのはめずらしいと思います。だからこそ、価値があるのです。
「ここ、よく気がついたね」「この点が分かりやすかった」というコメントが付くと、調書作成者としてはうれしいものです。
おわりに
実は調書レビューするときの具体的なポイントをメインにしようと思ったのですが、手前の話が長くなったので別の機会に回します。
調書レビューは、レビューする自分自身の成長のためでもあります。
「この勘定科目の数字はこうやって作られていたのか」
「この会計基準は、こうやって適用するのか」
「こうやってまとめると、分かりやすいのか」
そんな気づきを得るために、忙しいとは思いますができる範囲でレビューを買って出てください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま