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会社の「存在意義」はめっちゃ重要です。以上。【ガバナンスガチ勢向け】

あなたの会社の存在意義は何ですか? すらすら言えますか?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

経営理念、ミッション、プロミス、社是、ビジョン…… 似たような言葉がいっぱいありますね。
これとセットで出てくるのがバリュー、行動規範、行動指針などなど。

何と呼ぶかはどうでもよくて、重要なのは「存在意義」と「行動指針」が明確になっていることです。


会社の「存在意義」と「行動指針」

Googleはこんなことを言っています。

Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。

https://about.google/

これがGoogleの存在意義。
存在意義とは、「当社は何のために存在しているか」です。
それを果たすことができなくなれば会社は解散するべき、という切実なものです。

そして、その存在意義をどうやってまっとうするか、という方針が行動指針。
Googleの行動指針は"Don't be evil."(邪悪になるな)でしたが、もう明言していないようですね。

存在意義はwhy、行動指針はhowを明確にするものと言えます。


「存在意義」「行動指針」はなぜ必要?

いきなり必要性を考える前に、会社が設立されるところから見ていきましょう。

設立直後

会社が小さい間は、存在意義や行動指針が明文化されていなくても問題ないことがあります。
最初は創業者(または創業者チーム)がすべてを決められるので、創業者の頭の中にあれば、言語化できていなくても会社は回ります。

ただし、ぼんやりとでも頭の中になければ、判断がブレてほかのメンバーが右往左往することになります。

規模拡大

会社が大きくなり働く人が増えてくると、創業者はすべてを決められなくなってきます。
それでも、創業者の薫陶を受けた部下たちがキーとなるポジションにいれば、創業者の意をくんで意思決定をすることが可能です。

その人たちは「○○さん(創業者)なら、こう言うだろうな」「○○さんは間違いなく激怒するな」など、創業者の言動が瞬時にイメージできるため、それが指針となります。

世代交代

創業者が退任しても、その直下で鍛えられた部下たちが経営の中心にいる間は、同じイメージで会社のかじ取りをすることが可能です。

ところがその人たちも退任するとどうなるか。

新経営陣にとって、創業者はもはや伝説の人。見たことはあっても、直接指示を受けたり、怒られたりという経験はほとんどありません。
先輩たちから断片的に聞いてきたことをつなぎ合わせても、創業者ならどう判断したか、さっぱり分からず雲をつかむような話です。

これはとても危険な状態。

とりあえず船を走らせているものの航海の目的(存在意義)は分かりません。細かいルールは決まっていても、イレギュラーな事態に対処するときによりどころとなる大きな指針(行動指針)もありません。
仕方なくやみくもに前に進めたり(利益を追求したり)、それぞれが自分勝手なことをしたり(個人の利益の最大化)、最後には沈没(倒産)させてしまいます。

このような迷走を避けるために、存在意義と行動指針が明文化され、役員、従業員がよく理解していることが重要になります。


ミッション? ビジョン? バリュー?

用語は本質的でないと言いましたが、典型的な3点セットの超簡単な定義を見ておきましょう。

  • ミッション 存在意義

  • ビジョン ありたい姿

  • バリュー 行動指針

このような話をするときに代表例としてよく出てくるのがジョンソン・エンド・ジョンソン社(J&J)です。

J&Jは、1982年9月に鎮痛剤の毒物混入事件が起こったとき、直ちに全米の店頭にあった在庫を回収する決断をしました。
この費用が1億ドル。
また従業員を大規模に動員して、情報提供と早期回収にあたらせました。
その結果、一時失墜した信用が、3か月後には復活しました。

この決断のよりどころになったのが、J&JのOur Credo(わが信条)だったと言われています。

全文引用しますが長いので、流し読みしてください。
読みやすくするため数か所太字にしています。

我が信条
我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる患者、医師、看護師、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。顧客一人ひとりのニーズに応えるにあたり、我々の行なうすべての活動は質的に高い水準のものでなければならない。

我々は価値を提供し、製品原価を引き下げ、適正な価格を維持するよう常に努力をしなければならない。顧客からの注文には、迅速、かつ正確に応えなければならない。我々のビジネスパートナーには、適正な利益をあげる機会を提供しなければならない。

我々の第二の責任は、世界中で共に働く全社員に対するものである。

社員一人ひとりが個人として尊重され、受け入れられる職場環境を提供しなければならない。社員の多様性と尊厳が尊重され、その価値が認められなければならない。社員は安心して仕事に従事できなければならず、仕事を通して目的意識と達成感を得られなければならない。待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、整理整頓され、かつ安全でなければならない。社員の健康と幸福を支援し、社員が家族に対する責任および個人としての責任を果たすことができるよう、配慮しなければならない。

社員の提案、苦情が自由にできる環境でなければならない。能力ある人々には、雇用、能力開発および昇進の機会が平等に与えられなければならない。

我々は卓越した能力を持つリーダーを任命しなければならない。

そして、その行動は公正、かつ道義にかなったものでなければならない。

我々の第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。世界中のより多くの場所で、ヘルスケアを身近で充実したものにし、人々がより健康でいられるよう支援しなければならない。

我々は良き市民として、有益な社会事業および福祉に貢献し、健康の増進、教育の改善に寄与し、適切な租税を負担しなければならない。我々が使用する施設を常に良好な状態に保ち、環境と資源の保護に努めなければならない。

我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。

事業は健全な利益を生まなければならない。我々は新しい考えを試みなければならない。研究開発は継続され、革新的な企画は開発され、将来に向けた投資がなされ、失敗は償わなければならない。新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。逆境の時に備えて蓄積を行なわなければならない。これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。

(太字は筆者)

Our Credoは毒物混入事件の際に有効に機能しました。
これがなければ、大胆な決断を即座に下すことはできなかったかもしれません。

これは、ミッションでしょうか? ビジョンでしょうか? バリューでしょうか?
すべての要素がここには入っています。

J&J社のOur Credoを見ると、「これはミッションなのか、ビジョンではないか」といった議論がむなしく思えます。
そんな形式的な話ではなく、存在意義と行動指針が何らかの形で明文化され、役員、従業員に理解され、実際に使われていることが重要です。


おわりに

タイトルに「ガバナンスガチ勢向け」と付けたのは、「存在意義」と「行動指針」がガバナンスの基礎になるためです。

「存在意義」と「行動指針」は有効に機能すればパワフルなので、会社を暴走させてしまうこともあり得ます。
よいガバナンスのためには、内容が適切であること、その内容が正しく理解されていること、そして実際にそれに基づいて行動していることを確認する必要があります。

皆さんの会社では、いかがですか?


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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