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会計士の海外経験について、質問に答えます!【てりたま通信#14 無料版】

12月14日に開催した、会計士協会準会員会セミナー。事前のご質問がたくさんありすぎて、答えきれませんでした💦 できるだけこちらでご回答します。


監査法人で30年強、うち17年はパートナーを務めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

12月14日(土)のセミナー「グローバル視点で生きる~海外経験がもたらす人生の変革~」には、たくさんの方々にご参加いただき、どうもありがとうございました!

主催いただいた準会員会の運営メンバーの方々から、とても素敵なお土産もいただき、感激しています。(ちなみにいずれも一点もので、販売はしておりません😊)

事前にたくさんの質問をいただいていたのですが、セミナーの中ではとても答えきれませんでした。
そこで、こちらでできるだけご回答します。


🛫監査法人からの海外派遣

🔽海外駐在は30歳を超えてからでも遅くないですか?

はい、まったく遅くないです。
本当は30代より20代、20代より10代の方がよいですが、今日が人生で一番若い日。遅すぎることはありません。

実際、パートナーになってからはじめて海外勤務する人もいます。帰国後は海外経験を活かし、グローバル企業の監査パートナーや法人の執行部として活躍しています。

🔽シニアで海外に行くか、マネジャーになってからか、どちらがお勧めですか?

シニアで行く場合は研修生として現地で監査を行うことが多く、マネジャーであればコーディネーション(ジャパンデスク業務)や営業が中心になることが一般的だと思います。
また期間も、前者は2年など比較的短く、後者は3年以上になることが多いでしょう。

業務内容や期間に強いこだわりがなければ、私はチャンスがあるときに行くのがよいと考えています。
海外に行けるかどうかはさまざまな要素により決まるため、行きたいと思うタイミングでチャンスが回ってこない可能性があるためです。

🔽海外駐在にあたり、どの国にするか決める際の軸となったものは何ですか?

私がアメリカを希望したのは、高校留学でなじんでいたから、それと(ぼんやりと)最先端が学べそうだから、というくらいの理由です。

そんな私なので偉そうには言えませんが、派遣先を絞り込んでしまうと、選ばれるチャンスも小さくなってしまいます。
絶対にイヤな国でなければ、行けるときに行くことをお勧めしています。

🔽海外派遣先の事務所に転籍したいと考えているのですが、そのために何が必要ですか?

派遣されてから転籍するためには、現地事務所のパートナーから高い評価を受けることが重要です。
まずは派遣先で実績をあげることと、実績をパートナーにアピールすることの二つが必要になります。

また、国によっては解雇や降格が簡単に行われることがあります。
いざとなれば現地で転職できるように、スキル(監査で言えば、監査・会計、プロジェクトマネジメント、クライアントコミュニケーションなど)を磨くとともに、普段から転職のための情報収集や人脈づくりをしておくことも必要です。

🔽駐在と比べた現地採用のメリット、デメリットを教えてください

現地採用は、ずっと海外で働けることが一番のメリットだと思います。
また、日本よりもパートナーやマネジャーの報酬が高い国であれば、高給を得ることもできます。(ただし、日本との物価の差に注意)

デメリットとしては、解雇が容易であるなどの理由で雇用が安定しないことがあります。
また、昇格しづらいケースもあります。「日系企業専門の人材」とみなされることが多く、日系企業へのサービスが拡大しないとポストが空かないかもしれません。


🛫海外での業務

🔽日本と海外とで、監査は違いましたか?

アメリカについては、監査人は「監査のプロ」という意識が強いと考えています。
極端に言うと、会計はクライアントの仕事、税金関係は内部専門家である税務部門の仕事、と割り切っているということです。

日本に帰国してから、「日本の監査は、ずいぶんクライアントに手厚いなあ」と感じました。

とは言え、メンバーファームであれば、同じマニュアルで同じシステムを使っているはずですので、監査そのものは海外でも違和感なく入っていけると思います。

🔽サステナビリティ開示業務は、グローバルなキャリアとの親和性はありますか?

日常的に海外とのコミュニケーションがあり、出張で海外に行くチャンスも大いにあると思います。
例えば…

  • サステナ関連の制度に関する最先端の情報を入手するためには、英語の文献により情報収集したり、海外(特にヨーロッパ)の専門家と会話することが求められる

  • グローバル企業に対するサステナ関連の導入支援業務や保証業務では、グループ監査と同じように海外のサービスチームと連携する必要がある

ただし、サステナ関連業務単独では、海外駐在の機会は少ないかもしれません。監査やほかのアドバイザリー業務との合わせ技での派遣を狙うことになるでしょう。


🛫英語

🔽日本語でも世代の離れた方や初対面の方と話すことが苦手なのですが、英語ではもっと難しいでしょうか?

外国語で話すときは、どうしても頭のかなりの部分を言語に使うことになります。
日本語でもいっぱいいっぱいになる場合は、英語でのコミュニケーションは難しい面はあると思います。

ただ、日本語を話す自分と、英語を話す自分とで、人格(あるいはノリ)が違うことがあります。
私が10代のときの話で申し訳ないのですが、一年間の高校留学を終えて帰国し、翌年に日本の友人と一緒にホストファミリーを訪問したときに、不思議な居心地の悪さを感じました。
あとで気づいたのですが、日本の友人たちに囲まれているときと、アメリカでホストファミリーと一緒にいるときとで、自分の見せ方が違っていた可能性があります。

ご質問をいただいた方も、ひょっとすると、英語の方が自分を出しやすい、ということがあるかもしれません。


🛫その他

🔽転職や独立した場合に、監査法人での海外経験を活かすことはできますか?

海外展開をしている会社や外資系企業に転職し、海外経験で得たコミュニケーション能力を活かしている人はたくさんいます。
どの会社も海外経験者は不足していますし、会計人材も不足していますので、その両方を兼ね備えていることは転職市場においてかなり有利です。

独立した場合も、海外でのFAS業務や内部監査業務などのニーズがあります。
独立会計士の業務はそのほかにも多岐にわたりますが、ほとんどの業務で英語でコミュニケーションが図れることはプラスになっていると思います。

🔽監査法人で海外に行く機会が得られなかった場合、どのような方法で海外に行くのがよいですか?

早く海外に行きたいのに選ばれなかったり、所属する部門が出してくれなかったりで、機会が得られないことは確かにありえます。

その場合、海外駐在のチャンスのある一般事業会社に転職する方法があります。
会計人材の需要は高いので、海外駐在の可能性が高い会社に絞った転職もできると思います。
あるいは、「すぐに海外に行ってくれる人」を募集している会社が見つかるかもしれません。

そうやって転職後に海外駐在している人も、身近にいます。

🔽グローバル人材って、どんな人材だと思いますか?

複数の国の出身者を束ねてリードできる人がグローバル人材だと考えています。
英語で"global talent"と言ったりしますが、"world-class manager"という言葉もあり、こちらの方が私の考えているグローバル人材に近い概念です。

海外展開している企業の経営者と話すときに、「グローバル人材の不足」は必ず盛り上がる鉄板ネタです。
ただ、そのような経営者自身がグローバル人材でない場合、ぼんやりと「英語で仕事ができる人材」くらいに考えておられることが多いようです。


🐣おわりに

セミナーのテーマに沿ったご質問には、セミナー中にお話ししたことと合わせると、ほぼ回答できたのではないかと思います。

テーマと趣旨が異なるご質問もいくつかいただいています。今後のてりたま通信の執筆の参考にさせていただきます。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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