監査法人のガバナンス・コード改訂、それがどうした?
改訂された「監査法人のガバナンス・コード」を読んだ人! あれ、誰もいない? せめてこれだけでも読んでください。
てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。
2023年3月24日付で、監査法人のガバナンス・コードが改訂されました。
しかし当の監査法人の社員、職員の皆さん、たぶん読んでないですよね?
「忙しい日常業務の中で、会計基準や監基報の改正をキャッチアップするだけでもたいへん。対応が必要なら本部がやるでしょ」という声が聞こえてくるようです。
でも、何も知らないのも恥ずかしくないですか?
そこで、今回その解説にチャレンジ。最後まで読んでいただけることが私の目標です。
ざっくり何が書いてあるの?
監査法人のガバナンス・コードは、5つの原則と24の指針からなります。
ちょっと待った! 24の指針をいちいち説明したりしないので大丈夫。もう少しお付き合いください。
5つの原則は、ざっくり次のようなものです。(ざっくり、ですよ)
社員や職員の能力を発揮させろ(原則1)
経営陣はちゃんと経営せよ(原則2)
経営陣から独立して経営をチェックできる機能を持て(原則3)
経営陣の考えを末端まで浸透させるように、手を尽くせ(原則4)
監査法人を外から評価できるように、情報を開示せよ(原則5)
以上。でもよいのですが、それぞれ中身をちょっとだけ…
社員や職員の能力を発揮させろ(原則1)
トップの姿勢をはっきりさせ、社員・職員の行動指針を明確にせよ
社員・職員が懐疑心や能力を発揮できるようにモチベートせよ
社員・職員が話しやすい雰囲気を作れ
経営陣はちゃんと経営せよ(原則2)
組織体制、人事、ITインフラを整備せよ
経営できる人材を経営陣に据えろ
経営陣から独立して経営をチェックできる機能を持て(原則3)
独立した第三者による監督・評価機関を作れ
監督・評価機関を作らない場合でも、第三者を関与させろ
経営陣の考えを末端まで浸透させるように、手を尽くせ(原則4)
社員・職員が士気を高め、能力を発揮できるような人事制度にせよ
社員・職員が監査に必要な知識や経験を得られるようにせよ
クライアントとしっかり議論せよ
外部・内部通報制度を整備せよ
監査法人を外から評価できるように、情報を開示せよ(原則5)
品質向上の取り組み、トップの姿勢、中長期のビジョン、組織体制などを開示せよ
グローバルネットワークとの関係や品質への影響を開示せよ
クライアント、株主、投資家の声を聴け
これくらいで十分でしょう。
何が変わったの?
監査役から、「何が変わったんですか?」と聞かれたらどうするか…
CFOとの間でも世間話で出てくるかもしれません。
そんな万一の場合に備えて、3つだけ覚えてください。
❶ 公認会計士法とのリンク
内容の変更ではありませんが、監査法人のガバナンス・コードの位置づけが変わりました。
公認会計士法が改正され、上場企業を監査する監査法人の登録制度ができています。
登録された監査法人は、「組織的な運営に関する原則として金融庁長官が指定するもの」にしたがうこととされ(公認会計士法施行規則)、金融庁の告示により、監査法人のガバナンス・コードが該当することとされました。
❷ 中小法人への適用拡大
先の登録制度は中小法人にも適用されます。むしろ、中小法人の品質底上げが大きな課題として認識されています。
監査法人のガバナンス・コードは大手・準大手法人への適用を念頭において作られていましたが、中小法人を意識した文言が追加されています。
❸ グローバルネットワークに関する記載の追加
改訂前はグローバルネットワークへの言及はありません。
改訂を議論した「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」では、監査法人は所属するグローバルネットワークから良くも悪くも影響を受けているはずで、外部から監査法人を評価する上で重要な論点では、との意見がありました。
改訂により、原則5の中で、グローバルネットワークとの関係や、監査品質に及ぼすリスクなどを説明せよ、としています。
おわりに
お疲れさまでした。以上です。
ここまで読んだ方は、監査法人のガバナンス・コードの理解度については、会計士の中で上位10%に入るのではないでしょうか(そんなことないですか?)。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま