サイカイ
12月24日
何年前かは覚えていないが、日にちだけは確実に覚えている。わたしは十数年ぶりに、お花屋さんへ行った。確か32歳のときだった。
そこの店主はわたしが20歳の頃に一度、ごめんなさいをしたお花屋さん。
普通電車で東加古川駅から宝殿までは3区間。時間にすると約15分くらい。
何故会いに行こうと思ったのか。
その日は仕事が休みだったから、
それにクリスマスイブだからだ。
特に何も持たず会いに行った。
電車の中でひとり窓の外を見ながら
駅が近づくにつれ小さいドキドキがだんだん大きくなり、駅に到着するとドキンドキンに変わっていた。
お花屋さんは駅のすぐそばにある。
宝殿駅北側の階段を降りるとすぐに見える。
一歩一歩近づく。
コワイ……
階段を降りたときに、ようやく気づいた。
自分が振っておきながら、彼氏と別れた途端なに会いに行ってんの。
あ、アホみたいやん……
しかし、せっかく来たから、やっぱり顔がみたい。わたしは頭の中で、個人でお店開いているからお祝いを伝えたいと、会いに来た理由を復唱していた。
ようやくお店の前に立ったその時。
後ろから、わりと大きい声で
おう、おう、おうーーーーーーー!
けーこちゃん!!元気しとったん?
と不意打ちを喰らった。
わたしとお花屋さんが再会した瞬間だった。
#アンズルヨリウムガヤスシ
けーこちゃん、ちょっと待ってなー!
これ終わったらお茶奢るから!!
寒いやろ。そこ自販機あるから、あったかいの買うたるわ。何がええ?と聞かれ、あったかい紅茶の缶ジュースを買ってくれた。
どのくらいの時間話したのかは覚えていない。そして帰り際に何やらモジモジしながら、
けーこちゃん、これあげるわ。
手に持っていたのは、
お店のポストカードと黄色いチューリップ
ありがとう。
久しぶりに話しできて楽しかった。
また来るねと言いお店を後にした。
そして電車に乗るために、高架の長い階段を三段ぐらい登ったところだった。
ちょっと待ってー!!!
と息切れしたお花屋さんに腕をつかまれた。
え!!!!??
なにが起きてんの!!!??
振り向くと、お花屋さんが走って追いかけてきて、良かったらまた連絡して。と携帯番号が書いてあるメモを渡してくれた。
ズキューンである。
走っておいかけるとか、ずるい。
この瞬間、隠していた気持ちが弾けた。
また好きになってしまった。
失恋の傷みは消えはしていないが、
脳内に何かが溢れまくっている。
数年耐えてきた辛さ
救いようのない深い悲しみ
周りからの哀れみの目
やり場の無いこころ
こんな傷みを一瞬にして打ち消してくれる
何かが確実に溢れていた。モルヒネってこんな感じかもしれない。しらんけど。
こんなにドラマチックな事があったのに
そこからは進展がなかった。
今度ごはん行こうね。
この約束が果たされることは無かった。
黄色いチューリップの花言葉は、
「望みのない恋」
あれから10年経ったいま、そろそろお花屋さんに会いに行ってもいいかもしれない。
人それぞれいろんな形がある。
恋愛と結婚、わたしは全く違う形だった。
この人たちの誰かと結婚していたら、いま一緒にいる娘は生まれていなかった。
最後まで読んでくれてありがとう。
#チロ公 のみんなへ
いつも見ていてくれてありがとう。
みんなの優しさに、わたしが癒されています。
大好きです。