見出し画像

秋の彼岸会〜3年ぶり御斎づくりの再開やいかに!〜

こんにちは、寺嫁お京です。

コロナ禍にて中止していた御斎作りをこの度のお彼岸より再開いたしました。
正直、御斎づくりの再開に関しては、継続するか否かは随分と祖母とともに悩みました。もちろんコロナ感染症対策としてどうするかは理由の一つでありますが、

その最も根源には、今後顕著に現れるであろう
御斎づくりメンバーの高齢化
後継の担い手不足(就労、お寺離れ、菩提寺との関係希薄化)

という問題があったのです。

かつ、祖母個人としては、大人数になる彼岸会の御斎を経済的に外注するわけにはいかない。
自坊の伝統を守らなければならない。
概ねそういうことを漏らしていたが、目を瞑り考え込む姿もあり、その時祖母の脳裏でどんな思いを巡らせていたのか…


2週間前にようやく再開を決意され、
そうと決まれば祖母も私も御斎モード。
やるっきゃない。

いやはや…
はたして大きな炊飯器が着火するのか?
はたして御斎で使う道具は傷んでないか?

数年使わないことで劣化してるもの、錆びついているもの、カビているものがあるのではないか…と恐る恐る蔵の中で眠り続けていた道具たちを突然たたき起こす。
鍋に、ボールに、包丁に、ピーラーに、布巾、お盆などなど…。

しかし、タイムリープしたのか?
ほとんどの物が数年前に収納した綺麗なままでした。
保管時管理が良かったのか。

ありがたやーー。

それから数年前の記録を引っ張り出し、工程を想起。
過去の反省と問題点を洗い出し、参詣者数の予測。これは天候にも左右されるためにギリギリまで祖母と悩んだ。

そして、第一の心配は、御斎づくりをしてくださる7名の御門徒さんたちの動きでした。
(私の勝手な)見た目推測平均年齢77歳。
80代超えが数名。
3年のブランク。
果たして、以前のように動けるのか…

来る彼岸会当日。

皆さん早朝から予定時間より早く集まってくださいました。
「おはようございま〜す!!」
次々と大きな笑顔声が庫裡の玄関から聞こえます。

「今日はよろしくお願いしまーす!」
「久しぶりだもんで動けるかねー!」
「なーんね、あんたまだ若かも〜ん!」
「んな、今日が一番若かたい!」
「あっはっはっっはーー!」

何も変わらない。
なんにも変わらない皆さんのこの感じ。

白頭巾を被り、エプロンを身につける。
時間ギリギリまで私も参戦。
全員でさっそく調理に取り掛かる。
食材の大きさ、切り方、赤飯の仕込み、水の量、盛り方…思い出しながら。

1人が切り方を迷えば
全員が頭巾を被った頭を寄せ合い
「これはこがん切ったろ。」
「あぁそうたいそうたい!」
終わればそれぞれ持ち場へ。

1人が味付けに迷えば
また全員が頭を寄せ合い
「ちょっと薄かね。」
「ほんなこ。ちょっと薄かね。醤油ば足すたい。」
「あぁ、こんくらい!こんな味!
坊守さんちょっと味ばみてくんない。」
終わればまた持ち場へ。


また1人が盛り付けに迷えば
全員が頭を寄せ合い
「こがんじゃなかった?」
「こうすると良かかな?」
「あぁ、綺麗きれい!」
「坊守さん、盛り付けはこがんでよかかね?」
決まれば持ち場へ。

「和気藹々」とはこのこと。

祖母と私の心配をよそに、皆さんあの時のままのパワーとスピードで御斎を仕上げていく。

私は、法要開始時間30分前頃より
参詣される方々のお出迎えとご挨拶、
お客僧様へのご挨拶とお茶出し、
開始の合図の喚鐘鳴らしをするのだが、

一通り終わり

「はぁっ…!厨房は大丈夫か?!」
と急いで戻ると…

なんと、御斎はお持ち帰り用の袋に入れて卓上に美しく並べられ、御斎づくりメンバーは片付けも終え、

なんなら一服中。

「えーー?!もう終わったんですかーーー?!?!」

「はぁい終わりましたよー!坊守さん綺麗な御斎ができましたよ!」
「なん、あんた自分で言うことのあるかい!」
「あっはっっはっっはっっはっはーー!」
「自分で言わんと誰も褒めてくれんたい!」
「あっはっはっはっはっはーーー!」

お見事。

綺麗な自坊伝統の彼岸会御斎が完成しておりました。

この醸し出される無形の確かに在る空気感
そんなものを感じ得ながら
再開を悩む祖母の思いは計り知れないが、そのような感慨にふけていたかなぁ…と
何かそこに答えを求めようとしている愚かな私なのでした。


私が結婚した時から、すでに自坊には「婦人会」がありませんでした。しかし、皆さん有志でお手伝いに来てくださっています。曽祖母や祖母が良好な関係を築いてきたからに他なりませんが、更に言うならば
今来てくださっている方のお母様やお父様、お祖父様お祖母様方が繋いでくれたご縁あってのこのお彼岸の日。
私が「お彼岸の法要で御斎づくりをします」なんておこがましく、皆さんで作り上げられたこの法要なのでございます。
おかげさま、おかげさま、おかげさまです。

んで

このnoteのコンセプトは…
お寺のお仕事の“見える化”

にも関わらず、わたくし、純粋に皆さんの御斎づくりパワーに歓喜雀躍。

撮影のことなんてすっかり忘れてました。

ままそれもご愛嬌。

3年ぶりに記憶も道具もお蔵入りしていた御斎づくり、おかげさまで無事に敢行致しました。

課題は続くよどこまでも🎵


最後までお読みくださりありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?