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1095日の生き様 ⑫~氷上練習~

前回は氷上練習前の準備や一年生の仕事についてを紹介しました。

今回は実際に氷上練習に入りたいと思います。


よくあるメニュー

どのチームにもベースでやっている頻度が高いメニューがあるかと思います。指導者の身となり、新しい発見ですが新しいメニューをやるのも新鮮な気持ちで良いものですが、毎回となると新メニューの要点や要領を説明し理解し実行できるまでの時間が実際もったいないというデメリットもあります。1枠たったの90分ですから。
(事前にチーム展開している場合は別です)

さて、駒澤もパパッと次のメニューをこなし、より多くアイスホッケーをする為にベースメニューがあります。

1.4か所からのランニングシュート
2.2回シュート
3.スタートダッシュの1対1
4.回り込みのランニングシュート1対1
5.カナダ
6.コントラアタックの2:1

これらは今パッと思いつく程度で他にもあったと思います。

4か所からのランニングシュート

ほぼ必ずあるのは1です。
コーナー4カ所に選手待機、センターサークル内にパック、コーナーから対面でスタートしてサークル内のパックをキープして、ミドルエリアからシュート、リバウンド反応、ゴール前ストップ、ブルーラインまでバックチェックを想定してダッシュ。

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非常にシンプルなメニューです。

(DFとしての)コツはDFなのを良い事にブルーライン超えたらすぐスラップを打って、バックチェック距離を短くする事です。笑
ただし、リバウンドを前に出されると詰めなくてはいけないのでGKがサイドに弾けるような絶妙なコントロールが必要となります。

掛け声

メニューが監督から全選手に伝えられたら、全員が話を聞いてて何をやるかわかっているのにも関わらず独特の掛け声で皆に伝えます。

声出し係
【四か所からのランニングシューーーゥトォォォ】お願いしまっす!
1年生一同
【四か所からのランニングシューーーゥトォォォ】お願いしまっす!

他のメニューの場合も【】内が変わるだけです。

ただ、これですがたまに困る事があります。
それは新しいメニューの時です。

ベースメニューならばメニューの名称が決まっているので、言い慣れているのですが、初めてやるメニューの場合、掛け声係がそれをメニュー名に変換して掛け声を出さなくてはいけません。

【DF球出しからのニュートラルゾーンでDグループ、放り込んでからのフォアチェック付きの3:2】をお願いしまっす!

などと言う説明込みのメニュー名を咄嗟に考え、掛け声係が発するわけです。

他の一同は長くて覚えらんねぇよ!って場面もあるのですが、もうそうなれば誤魔化すしかなく、まるで歌(ハミング)です。

【DF球出しからのニュートラルゾーンでDグループ、ふーふふんふんのあぁーあんっつの3:2】をお願いしまっす!

中には「いや、何よそれ笑笑笑」みたいな名称もありました。
全く余裕のない1年生が慌てて組み合わせる言葉ですからね。
困って言えないとか、自信無くて言えない、の方がよっぽどヤキ入りますから恥覚悟で掛け声を出します。

駒澤のツラさ

では、この普通でもありそうなメニュー。
もちろん90分間パック無しのダッシュという日も年間何度も来ますが、通常のメニューはどうだったのか。

正直、私は1のメニューから楽ではなかったです。
『バックチェックがあるくらいでしょ?』と思うかもしれませんが、出番が回ってくるのが非常に速く、全然回復しきれない状態で再スタートです。

ましてや陸トレで限界まで追い込んでる日々、または追い込んだ後の練習ですので、そもそも氷上練習ヨーイドン!の段階で限界が既にキテます。笑

通常、多くても対面スタートで2つのポイントから2組発動しますが、駒澤の場合、たまに先生が腰を下ろしてるフェンスからストンと降り、いきなり入りこんでシフトを増やします。
特に多かったのがグルグル回るメニューである4.回り込みのランニングシュート1対1では3シフトになる場合があり、こうなると自分の番が終わって並びに帰って来たと思ったらすぐスタートのタイミングが来ます。

逆にシフトが長い場合もあります。
中学との違いは1:1なんかでDFが奪ってもFWが取り返しにきて、しつこいホッケーを徹底している事ですが高校に入って氷上練習で一番驚いたのは何度でもチャレンジする姿勢です。

特に現バックスの斉藤哲也さんと当たったら、その時点で余力がゼロになるのを覚悟します。

無題

なぜか。

たまたま私がパックを奪えたところで、どこにどれだけパックをクリアしようとも、必ず取りに戻ってまたゴールに向かってきます。たとえアイシングくらい自ゾンから逆サイドのゴールラインまでクリアしてもすぐ切り返して取りに行って向かってきます。ホイッスルが鳴るまで。
先生も哲也なら、とわかっているのでホイッスルをそう簡単に鳴らしません。こうなると体力0の私にとっては公開処刑です。笑

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何度ボールを遠くに投げようとも

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(哲也さん待ってよ~)

結果こうなるイメージです。


哲也さんは当時からそういう最後まで!の意識を徹底している選手でした。

もちろん他にもなかなか1:1を止めない先輩がたくさんいましたが、私は哲也さんのしつこさ(良い意味で)が非常に印象深いです。

中坊上がりの洗礼

そんなリズムが早く、徹底した練習をしていると、もう初心者なんじゃないかってほどスケートができなくなってきます。
そうなっても、もちろん先輩はフルチェックでぶつかってきます。
体が出来上がってる先輩達の猛追からのフィニッシュチェックをこの前まで中学生だった一年生がモロに喰らう。

ポーーーンッ!

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もう好きにして。


と踏ん張る事すら辞め、もはや自ら宙に舞ってる勢い。
ですが一年生も一生懸命、先輩に食らいついてチェックします。

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ピタッ。

我々1年生は触れたかどうかのレベルで身体を寄せて任務完了です。
(いかに僕、先輩にチェック行ってます!と見せるか演技力が大事)

先輩からは明らかにフィニッシュ過ぎるフィニッシュチェックも平気でもらいます。
パックがとっくにどこか行ったのに5秒後に遠くから助走つけてズゴーンと無防備な1年生に。一瞬、何があったのかわからなくなります。笑

こうやって、常に顔を上げなくては最悪死ぬという状況を身に付けていくわけです(?)

練習着

当時の駒澤には練習着の色が灰、赤、青、黄緑、薄黄がありました。

めっちゃくちゃボロボロでこれでこそ駒澤!って感じでカッコ良いと感じたイメージでした。

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1つ目⇒灰色(グレー)
2つ目⇒赤
3つ目⇒青
4つ目⇒黄緑
それ以外⇒薄黄(とか白もあったっけな?)

当時はこんな感じの構成でした。

1年生で灰、赤、青、黄緑を着れるのは1~3人であり、僕らの代では大澤卓也・菊池恭平・浅利拓が着ていました。

要するにベンチ入りできるのが1~3人という感じでした。

正直、私はベンチ入りにこだわる余裕がまるで無く、何としても1年生で試合に出てやる!というモチベーションはコースの下見時点(②~はじめの一歩~)で失ってました。(情けない…)

10分前の恐怖

さて、練習も終盤、ラスト15~10分くらいになると選手達は時計を気にするようになります。

ピピーーーッ!といって先生がゴールラインに行かない事を皆が祈る時間帯です。

練習のほとんどでその祈りは神に届かず、ラインダッシュが始まります。

ゴールラインをスタートしレッドラインストップ、ブルーラインストップ、奥のブルーラインストップ、レッドラインストップ、逆サイドのゴールライン、帰りも同様、レッドラインストップ~・・・とまぁとにかくラインで引き返しまくって、やっと行って帰ってくるのに記憶が曖昧ですが確か1分ちょいかかります。

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時計を見ながら1セット往復に何分かかって、今何時何分でチームには〇セットあるから全セット一巡するには〇分かかって逆算すると多くても〇本だとか、それぞれが頭の中で電卓を叩きます。

この力尽きる寸前での計算能力だったら駒澤ホッケー部に敵う人間はいなかったでしょう。

これも通常メニュー同様、遅いとゴールラインに帰って来た瞬間に停止する事すらできずそのままスタートする事になります。

休む間も無いから腰も痛いし、疲労で太もも攣ってるし、喉が枯渇してるけどウィウィハッハッと声出さんといけんし、サボってるのがフェンスに腰かけてる先生にバレるとフェンスから降りてきて素晴らしいスタートダッシュでスーンと近づいてきて…(中略)…されるし。

ですが、今思うと先生や先輩のおかげで死のうかと思うほどの地獄を本気で見れたし、それが間違いなく今の糧となって、あれほど苦しい一年は無いと、仕事で挫ける事は無くなりました。
実際に仕事で色々トラブルや悩みはあるけど、あの一年生時代と比較すると屁みたいなもんです。

先生とは怖くて、またインターハイを獲れなくてまともに顔も見せられず、お話しできなかった今までですが御礼したい気持ちがあるくらい感謝してます。
(色々思い出して酒の力も借り、感謝を言いながらインターハイ負けてすみませんと言って泣くかもしれないけど笑)

※というように決してお世話になった先生の批判をしてるわけでありませんので誤認識されないようお願いします。

話は戻しますが、ダッシュが終わると最後にセンターサークル内でもちろん防具姿のまま腕立て・腹筋を行い、挨拶をして終わります。

こうして氷上練習が終わっても一息つく間も無くその後、学校に戻り陸トレが待っているわけです。(月・水・金曜日)

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チャチャっと控室やペットボトルの後片付けをして、すぐにチャリを爆走しながらスペシャルなのかインターバルなのかゾワゾワ血流が冷たくなるのを感じながら部室に向かいます。

こうして氷上練習を1年間、重ねていきます。


今回の氷上練習についてはこの辺で。


次回は試合(遠征)についてと
1年目の初敗戦についてをお伝え予定です。

御礼

いつも読んでくださる方々、そしてnoteをアップする度に様々な方々から見てます!と連絡をいただけ大変嬉しく思っております。
(先日は年齢的に被ってもいない偉大な駒澤OBの方より見ているよ!と伝言いただきビックリでした。)

出番を期待している同期・後輩もいるようなので、期待に応えられるよう面白おかしくいじりながら人物の紹介をしていこうと考えております。
(先輩方は今もリスペクトしており、いじれませんのでいじりません笑)

引続き、まずは1年目のインターハイまで駒澤IH部の独特な世界やルール、伝統を伝えていきますので宜しければお付き合いください。

では、今回はこの辺で失礼致します。


てらを

ペリグリン監督 寺尾幸也


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