煽動のためのVizは作らない,作らせない,そんなのそもそも見ない
この記事の趣旨
DATA Saberの挑戦を行うと,Tableauの操作をするための技術を向上させるだけかと思いきや,データそのものの見せ方,データを見た相手を思いやった表現など,Viz作成の勘所まで教育の一環に組み込まれていることに驚きました。DATA Saberの定義として掲げられている『データを通して世界を理解し、それを人に正しく伝える努力を怠らず、人の心を動かし、行動を促す。』人材を創出するために,人を動かしアクションに結びつかせる表現まで学べるという点こそ,DATA Saberになられた方たちが魅力的に感じられる理由なんだと思わされます。
一見,DATA Saberの認定制度は,とても魅力的なのですが,どんなモノ,コトにおいても2面性を抱えているものです。それはデータの見せ方という点においても,より創造的な良い方向にデータを使用して人を導く事ができる力を秘めていますが,それは言い換えれば同じデータを使った煽動ができると言えます。
DATA Saber挑戦者の多くは,この点について,予めよく理解しているように見受けられますが,この負の側面についてそこから先は足を踏み入れてはいけないという主張はそこまで多く見かけません。私がある意味で人柱になってこの主張をして,データ活用の負の要素を利用している方たちに注意喚起できればと思い,記事を書きました。
Preattentive Attributes
DATA Saberの教育を受講してだいぶ初期の頃に,Preattentive Attributesの解説を受けます。私なりにPreattentive Attributesを伝えるならば,『無意識的だったり潜在的に人が認知しやすい視覚的情報の取得手段』という表現になるかと思います。DATA Saberの教育では,データの説明において説明せずともすぐに認識させる事ができることは,そのPreattentive Attributesの強弱を理解して視覚的な説明を済ませ,データそのものの洞察をする時間を長く持たせるように工夫をしましょうと言うのです。この説明を聞き,私は素晴らしい教育をDATA Saberを通じて学ぶことができるのだなと感動しました。
しかし,このPreattentive Attributesですが,これは悪意を持った人の手にかかれば,本来は比較的少数であるデータであっても誇張することにより,あたかも大きな割合を占めているものであると誤認識させる手段にもなり得ます。その実例を次項で見ていきます。
テレビ番組であった実際の印象操作
以下は,テレビの情報番組で取り上げられていた実際のグラフです。グラフの紹介と,私自身でその表示から受け取る印象を記載しています。また本来あるべきグラフのあり方を各項目の下段に示します。(本来でしたら参照元等,情報源を示す必要がありますが,私自身,法律を理解してなく参照の仕方がわかっておりません。ご批判もあろうと思いますが,その批判への対処を柔軟に行える自信がございませんので,情報源の掲載は控えようと思います。また,こちらは,この記事投稿時点でチャンネル登録者数60万人を超えた某ユーチューバーの動画を参考にしております。)
1.円グラフ?の悪用
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こちらの図は「世代別懲戒処分者」という円グラフです。このグラフはもはや,円グラフの体裁をなしていません。円の中心がズレ,円の中でツリーマップを表示したかのような作りですが,人数でその面積比が構成されているかと思いきや,そうではありません。10・20代での懲戒者処分者の部分を意図的に大きく表示させることによって,若者が特出して懲戒処分を受けるような行為を行っている印象を与えています。50代での懲戒処分数も多いようですが,30代より図の面積を小さく表示することで,やはり若い人ほど懲戒処分を受ける可能性が高いことを示そうとしていると感じさせられます。
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2.円グラフの悪用 その2
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こちらの図は某テレビ番組を視聴したかという視聴有無を示した図です。項目1と比較して,まだ円グラフの体裁に放っていますが,人数の比で円内の扇の面積が構成されてません。このグラフを見た人は,視聴者全体の過半数はその番組を見てなく,残りは半数に迫る程度の割合だけ視聴しているかのように見受けられます。しかし本来なら,その番組を視聴した割合は小さく,視聴した人は少ないです。
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3.棒グラフの割合を無視
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こちらの図は,とらるお寺におけるおみくじを引いた内訳を示したものです。凶がたくさん出ると噂があることへの検証なのでしょう。その番組で100回のおみくじを引いたようではありますが,噂と結果を無理やり合致させるような印象を与えるグラフを作成しています。
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上:テレビ番組での図示
下:Tableauでの正確な図示
4.軸の目盛無視
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こちらは某空港から入国した外国人数の増加の様子を示した図です。平成26年の表示は問題ありませんが,平成28年においては軸の目盛を大きく外れて図示されています。これによる印象操作は,数値自体はそのままであってもその増加の様子を視覚的に大きく見せることで,数値とは関係なく増加分が誇張されています。
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まとめ
いかがでしょうか。報道機関という組織こそ,Preattentive Attributesを理解して,データをビジュアル化していると思うのです。彼らは事実を報道しているとも思いますが,様々な利害関係のなかで,優先事項が発生し,このような偏った印象を与えざるを得ないと思います。ただ,利害関係もないと想像される上記の例ならおみくじの案件についても,自身の力量を示したいのか,印象を操作する工夫をしています。利害関係があることについては理解はしても,受け手の都合には配慮がなく,誤った印象を受けることで,本来のデータに基づかない行動を起こしてしまいそうになります。報道機関に限らず,Tableauを触った人であれば,このような印象操作は簡単に行えてしまいます。十分に注意を払わなければなりません。
DATA Saberは,このような嘘を直ちに見抜き,安易にそれを批判せず,拡散もせず,データから得られるビジュアル化を正確に行うことで,物事を客観視し,多くの人を導く存在であると思います。この記事が,データを扱う方々に対して,つまらないアクションをさせなくすることにつながればと思います。
おしまい