アメリカが大変なことになっている
アメリカが燃えている。割とデモとか暴動が起こりがちな国ではあるが、それにしても今回のは味が違う感じがする。
ブリーズへのバッシングとか日本人の目からしたら度を超している。ハリケーン・カトリーナからの復興を目指すニューオリンズを世界一に導いたQBであって、日本で言えば東日本大震災の2年後に楽天を日本一に導いた田中将大が一番近いと思う。あとは広島で言う黒田とか。
ブリーズのコメントは「今言わんでも」という内容ではある。暴動まで行ってる連中にかける言葉か?と考えるとそうではないとは思う。爺さんが軍人でとか言われても「知らんがな」だろう。ただブリーズは同じチームになった蟹泥棒とは違いクレバーな選手であるはず。どんな内容であっても、自分が何らかの発言をしたらバッシングが起こりうることは理解していただろう。クロムの「エリート白人」とは訳が違う。
むしろブリーズは自分という影響力の強い人間が発信することで事態を好転(暴動が収まることが好転であるかどうかはまた別だが…)させられると考えてのことであると思うのだ。ニューオリンズの英雄である自分こそがこの事態を収める能力のある唯一の人間だと考えたのかもしれない。
ブリーズの考えを推し量る事はできない。どちらにせよ、彼に対するバッシングは度を超している。少なくとも日本人の視点では。スポーツ選手が政治的な言動をするのは嫌われる。韓国スポーツの対日本の態度みたいなのは基本的にはNGだ。それを差し引いても、あれだけのバッシングをするのか。あの内容は簡単に正否付けられるものではない。何か狂気めいたものを感じざるを得ない。
NFL全体としてはやっぱりブリーズだったりロジャー・グッデルのコメントだったりキャパニックだったりが脚光を浴びているが、筆者が追っているのはシーホークスであり、他のチームは正直よく分からない。
シーホークスのフランチャイズであるシアトルは全米でも激しい暴動が発生した。基本的にシアトルはカナダに近く中南米系の移民が少ないことや、寒冷な気候なども相まって全米でも治安が良い都市とされる。加えて距離が近いことで日本人が比較的多い都市でもある。にも関わらず激しい暴動が発生したことは驚きであった。
シーホークスは主力選手に黒人選手が多い。というより主力に白人選手がほぼいない。NFLはMLBに比べて黒人選手の比率が大きいとはいえ、昨年ある程度の活躍を見せた白人選手はFBベロア、TEホリスター、ディズリー、Cハント、ブリット、あとはスペシャルチームのKマイヤーズ、Pディクソン、LSオットくらい。通年活躍したのはスペシャルチームの3人だけで、残りの選手は16試合を通して活躍出来ていない。ディフェンス陣はほぼ黒人選手のみだと言っていい。そんなシーホークスは黒人差別に関して素早く反対の声明を出し、それはHCキャロルもそうであった。
中でも積極的に発信を行なったのはQBウィルソンとWRメットカーフ、WRロケットあたりだろうか。ウィルソンといえば最早郷土の英雄となりつつあるスターダムな選手であるが、彼の談話は日本人である自分にとって驚きのものだった。
ウィルソンが「西海岸にいるのに」と語ったのはどういう意図か分からない。西海岸が比較的差別的ではないのにということか、西海岸で自分を知らない人間がいるのかということか、あるいはその他か、どれかは分からない。所詮他国であり、居住経験もない以上その空気感は察する他ない。
ただウィルソンは世界で最も盛り上がるスポーツの、最も輝くポジションのスタメンで、世界一になった選手である。その当時はまだルーキー契約だが、将来的に100億単位の額を得る選手である。見た目で差別されるという事象の根の深さがそこにある。
もっと言えば、彼の祖父は大学の学長、父は弁護士、母は看護婦であり、妻は歌手であり、彼は信心深いクリスチャンであり、社会貢献活動に積極的であり、リーダーシップに優れており…
最近話題になった京都大学・望月教授は在住時の経験からアメリカを嫌い、日本に研究の拠点を置くようになったという。
多様性を謳うが中身は伴っていない…その意味がほんの少し分かったような気がする。