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半年の節目 9月を終えて

寺子屋に入学してから半年になる節目の9月。まだまだ、ずーっと先のことだと思っていた京都研修も終わり、中旬からは稲刈り・栗拾い・お芋掘りと秋の味覚オンパレード。大好きな秋がやってきた!とほくほくした気持ちになりながらも、こうしてあっという間に卒業の日も来るんだろうな…とちょっぴり切ない気持ちで過ごす日々です。

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【京都研修で学んだこと】

京都研修で訪問したのは、嵐山・松尾大社の「鳥米」さんと宇治の「辰巳屋」さん。お店の厨房を見学した後、お昼の松華堂弁当と夜の会席料理をいただき、食材や料理、お店のことなどたっぷり質問させていただけるとっても贅沢な研修でした。
京都研修に向かう前、8月の留学弁当(私たち生徒がお品書きを考えるところからお届けまでを担当する企画)を経て、「日本料理らしさ」とは何だろう?とずっと考えていました。今回の研修はそのヒントをつかむチャンスだ!と思い、鳥米の田中さんに質問してみると「季節を感じられることかなぁ」と、とてもシンプルなご回答。でもお話を伺っていくうちに、季節を感じられる料理を作るためには、料理人として身につけるべき視点や技術、感覚がたくさんあるのだということがわかってきました。
例えば、
・献立はお客さまに何を食べさせたいかではなく、何を感じてもらいたいか、という視点から考える
・メインにする旬の食材の食感と味を軸に、それとは異なる五味五感の食材や調理法で組み立てていく
・食材に味付けをするのではなく、調味する(もともと持っている味が際立つように調えるという感覚)
・あしらいや食材の色味などお皿の上での表現に加えて、料亭なら部屋から見えるお庭も一つの要素(ご自身でお庭のお手入れもされている)

また、「そのために今は経験すること、広げること。疑問に思うこと、違いを知ること。いろんな食材をとにかく食べる!それが引き出しを増やすことになるし、皆さんが今いる場所(海士町)はそれができると思う」と田中さんが気持ちを込めておっしゃっていたのが印象的で、改めて寺子屋で学べる残り半年を大切に過ごしていきたいな…と思いました。

▲鳥米さん、辰巳屋さんのお料理の一部。
一皿の中に料理人さんの意図と技術がたっぷり詰まっている。

八寸は左から右に食べていくと、おいしく感じられるように盛り付けてある。焼き魚は両端を丸めて焼くことで、しっかり焼けている部分とそうでない部分の食感の違いが生まれ食べ進めるのが楽しい。など、食べる側にも知識があるほど、より楽しめるのが日本料理なんだ…とその奥深さを実感しました。

ーおまけ:京都研修前後のひとり旅-
今回は、海の京都伊根町と大阪天満へ。酒蔵の方、定置網漁船の漁師さん、料理屋さんのご夫婦・大将など、旅先でこんなにたくさんの方とじっくりお話しするのは初めて。日本料理を学んでいるという”幹”があることで、知りたいこともお話できることもたくさん。卒業したらまた店においでと声をかけてくださって、自分も料理の道を歩き始めたんだという実感が沸いてきた旅でした。
また、お客さまにどんな体験をしてもらいたいかという発想を広げていくためには、こうして自分自身もいろんなお店に行って体験することがとても大事だなぁ…と感じた時間でした。

▼向井酒造(伊根町):女性の杜氏さんの古代米紫小町でつくる「伊根満開」で有名な酒蔵さん。

▼定置網漁船に乗船(伊根町):この日はシイラが大漁。カジキマグロや鰆も。こちらの定置網では、だしに使われるカタクチイワシを獲るため、小さい網目のものを使っているそう。

▼醤食堂(伊根町):とうもろこしと栗の天麩羅で、夏から秋への季節の移ろいを実感!

▼YADO ARASHIYAMA(京都嵐山):朝にほっとする食事の前の「お迎えだし」と、よりおいしく味わっていただくための盛り付け(時計回りに食べるのがおすすめですというご案内)

▼いわ月(大阪天満):料理に合わせてお酒を、お酒に合わせて料理を…と大将にペアリングのポイントを伺いながら楽しめるお店。写真はスパイスが効いた柑橘のきんつばと日本酒のペアリング。

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【サステナブルシーフードレシピの考案】

研修から海士町に帰ってきた私たちを待っていたのは、これまでにない新しい課題「FOOD MADE GOOD 未来のレシピコンテスト」に向けたレシピの考案と試作でした。今年は「サステナブルシーフード(=水産資源や生態系の保全に配慮した魚介類)」を使用したレシピがテーマ。大敷で水揚げされる未利用魚をメイン食材に、調理工程で出るフードロスなどにも配慮しながら、レシピを作っていきます。

私は今年の7月に採った「天草」と、未利用魚の「小さな伊佐木」、「アカモク」をメインのサステナブルシーフードとして組み込み、京都研修中に学んだことを思い出しながらメニューを考案していきました。

メニュー名:小さな伊佐木とアカモクの天草寒天寄せ

私たちが作るのはすべて島の食材を使っている料理ということもあり、食べる方には「海士町の自然」を感じていただきたいなと考え、海の中に広がるふさふさの海藻の森と小さな魚たち、崎みかん畑、季節ごとにいつもたくさんの恵みを分けてくれる森…そんな崎の大好きな景色をイメージした寒天寄せにしました。
また天然の天草を使ってみたくて、寺子屋同級生のさきちゃんとつばさくんに多大なるご協力をいただいて、夜な夜な手作業で不純物を取り除いていくおそうじ。1時間ほど煮詰めた天草と、伊佐木の骨でとった出汁を寒天の地にしました。
海藻焼酎「わだつみの精」で香りづけしたアカモクと一杯醤油に漬け込んで焼いた伊佐木、その上に摘果みかんと山椒の葉・実をトッピングして、爽やかな風味をプラス。今回は食感にも着目して、ネバネバのアカモクとホロホロの焼き魚を入れてみました。

サステナブルな料理とは何か?と考えると、切り口はたくさん。今食べている食材を無駄なく使い切ること、今食べられていない食材をおいしく食べられるようにすること。今回、私が考案したレシピはお店での提供を前提にしたレシピですが、環境へのインパクトを考えると、ご家庭で簡単に再現できるレシピや商品に落とし込み、食べたい!という人を増やして流通量を増やしていくことも、大事な要素だと感じます。

海士町の近海でも、水温の上昇やガンガゼ(ウニ)の発生によって、磯焼けが進んでいるとのこと。海に潜った時にも、たくさんのウニを目にしました。ウニは「生食」「高級食品」のイメージがあり、風味が苦手という方もいらっしゃり、現状なかなか日常食として活用される食材ではありませんが、ウニ味噌、ウニソース、ウニ豆腐など、調理に活用しやすい加工品にして料理店に卸したり、ご家庭向けにはウニコロッケ、ウニ麺、ウニグラタンなど、定番家庭料理にウニを盛り込んだ半調理品などを作ってみたら面白そう!と思いました。
ウニはまだ調理したことがないので、チャンスがあれば寺子屋でチャレンジしてみたいです。

(文:島食の寺子屋生徒 河野)