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早苗月のいろは

 春めいていた季節は夏に向かっている。大阪に住んでいた時は、ゴールデンウィークが過ぎたと思ったらすぐに真夏の日差しが照りつけていたのに、まだ少し肌寒く日差しもやわらかい。そんな季節のグラデーションを楽しむ日々。
 5月は初めての離島キッチン、まかない担当や、地域の方の田んぼのお手伝いがあり、毎日が充実していた。気がついたらいつのまにか5月が終わっていたような感覚。
迷っていたけど日本料理を学びに寺子屋に来てよかった。と心から思う。

 崎地区の田んぼのお手伝いの後、  夏を先取りして海に飛び込むみんなを撮影  5月の海は美しいけど、やっぱり寒い
 お米農家さんに機械植えを体験させていただいた  でこぼこの田んぼで真っ直ぐに植えるのは  想像以上に難しい

◯魚をさばく


 5月になると、毎日のように大敷の漁港に仕入れに行くようになった。鯛と鯵くらいしか魚の姿を知らなかったような私は、目の前で仕分けされていく色んな種類の魚たちに目が釘つけになっていた。
 漁港のピンと張ったような緊張感と、思ったよりも静かな魚の様子が印象的だった。それは一匹ずつ釣って締める活締めと定置網の野締めでは、漁の方法が違うからだということを知った。
 初めて魚をさばいた時、血抜きされていないから当然だけど赤い血が流れた。魚にも人間や牛と同じように骨があって、内臓があって、心臓が動いている。嫌いではないけど、なんとなく敬遠していた魚との距離がグッと近づいた気がする。お肉が大好きだったけど、新鮮な魚の味を知ってからは、魚の方が好きになった。
 魚をさばく数が増えるごとに、身の取り残しが減り、フィレの形が整ってきて嬉しい。
それでも最後の骨抜きで身がぼろぼろになったり、どうしてもお腹をすくときに穴が空いてしまうので、先生に「変な形やな」と笑われてしまう。だけど一匹さばくごとに上達してきている。はず、、

だんだん平政とハマチを見分けられるように

◯離島キッチン

 どうなることかとドキドキしながら迎えた初回の離島キッチンは、なんとか無事に終わった。
満足のいく大根のつまでさえできないのに、お客様にお料理を提供するなんてできるの?と、不安で心配で仕方がなかった。
 仕入れのため漁港や農家さんのところへ行ったり、山に入ってフキの葉を収穫したりと、今の季節にとれる海士町産の素材を求めて車を走らせた。今の時期にないものはないし、あるもので作るしかない。あるものだけでお料理を作るのは、不自由だけど、すごく楽しい。

 当日は、勝手の分からない厨房で緊張した顔のみんなと、先生の指示を頼りに一生懸命手を動かした。
今回は醤油アレルギーのお客様や生物が食べられないお客さまがいて、気遣うことも多くひやひやした。
 私はマイペースな性格で、自分のしている作業に集中しすぎて周りが見えなくなることが多いけれど、厨房の中はワンチーム。自分の作業をしながらも全体が見えていないといけない。
そして、お客様に伝えられるように全てのお料理の味付けや、食材のこと、作っている生産者の方についても理解していないといけない。
 離島キッチンを通して、新しく自分の課題が分かり、もっと海士町のことや食材のことを学びたいという気持ちが強くなった。

5月22日離島キッチン箱膳

◯まかない

 3人1組になって、11人分のお昼ご飯を作るまかないも始まった。どれだけ事前に段取りをし、準備をしていても想定外のことばかりだった。ワンプレートを作るのに彩りや味のバランス、盛り付け、食べやすさを考えて作っていると、時間は本当にあっという間。雫にもなってない(?)雨の降る中、木の下で食べた。みんなのコメントや感想にドキドキしたけど、率直な言葉だからこそ、すごく勉強になった。
 下味をつけることの大切さ、ご飯のお供にするのか、箸休めのさっぱりした味にするのかなど一品一品に意味を持たせること、味のメリハリをつけること、素材の味を生かすこと。課題は多いけど、学んだことを生かし、もっと美味しいまかないを作って喜んでもらいたい。
 他のチームが作ってくれるまかないを食べるのも勉強になった。春を名残り惜しむようなまかないや、寺子屋で学んだことを詰め込んだまかない。まかないを食べる側になることで、いいアイデアをもらったり、自分だったらこうするかな?と考えたり。
食べることが大好きで、料理を本当に学びたいと思っているみんなとこうやってお互い高めあえる時間を大事にしたいと改めて思った。

◯6月絶対に達成する目標

料理の工程には、必ず美味しくなる意味がある。

”なぜこうするのか常に考えて料理をする”
”段取り・片付け上手になり、時間を必ず守る”
の2つを目標に6月も頑張ります!

(文:島食の寺子屋生徒 前田)