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一本勝負

大敷で漁れた大きな鰤や鯛、沢山の鯵や飛魚、シマメなどを朝に仕入れて、ひたすら捌く日々。こうして贅沢に魚を扱えるのは、海と漁港が近くにあって、小中学校の給食に使われて食べてくれる人がいるから出来ること。恵まれた環境で学べていることに、とてもありがたみを感じている。

魚の命をいただくからには、絶対無駄にしない覚悟で臨むけれど、まだ先生のように鮮やかな包丁捌きを出来る程の技量はなく…三枚おろしでは骨に身を残し過ぎたり、梳き引きする時に、鰤のお腹に痛々しい切り傷を作ってしまったり…。その度、魚にごめんなさいと心の中で唱える。
どうして失敗するのか、どうやって包丁を動かしたらいいのか、その都度先生にアドバイスをいただく。教えてもらった時は、まだ理解が追いついていない事が多いけど、やっていく内にそういう事だったのかと腑に落ちて、意識的に練習に落とし込む。
成長速度が、亀の歩みのままでは困ると分かっていつつも、出来なかったことが出来るようになる実感が湧いた時に嬉しく思う。
早く魚が気持ち良く綺麗に捌けるように、小さい魚から大きい魚まで、ただ数をこなすだけにならないよう心がけて、手早く丁寧に頑張っていきたい。

5月も終わりを迎える頃、賄い作りを3人組で担当した。春夏の狭間で野菜が少ない中、季節感やメニュー構成、彩り、盛り付けをどうするかなど、考える事は沢山。賄いだから、在庫にあるものを見てその場で考えないといけない…けど、3人のアイディアをワンプレートにまとめるため、事前に話し合って内容を決めた。調理はほぼぶっつけ本番なので、味付けのバランスや香り、食べやすさと食感の良し悪しまでは考えが及ばず…。仲間と先生の食べた感想から、反省・改善点などを教えてもらう。
思いつきであれこれやってみたけれど、調理に関する知識や工夫が、自分の知っているものより何通りもあることが分かった。他のグループの賄いからも、学ぶ事が沢山ある。
まずは提供時間の厳守を第一に、効率よく調理を進める段取りを常に考えて、その上で美味しく作るための知識や技術を活かしていく大切さは、いよいよ実践らしくなってきたなと感じる。

魚を捌く、料理を作って提供する、その他にもこの一年を通して学ぶ全てのことが、当たり前だけれど一度きり。同じ日はまたとない事を、島にいるとしみじみ感じる。ここでする失敗も、いつの日か成功に繋がるはずと信じているけれど、一回だけの試みで成功か失敗かが決まり、やり直しができない物事という意味では、"一本勝負"以外に適した言葉が見つからない。

↑ 田んぼの植え継ぎ後、海でクールダウン
↑ 5月の満月(フラワームーン)を防波堤から

1番の目標は、魚を捌く時間を早く且つ丁寧に!
あとは時間厳守!

(文:島食の寺子屋生徒 小澤)