6月振り返り②(塩は2時間がお好みで)
週に1回のお弁当。献立組立は先生に相談しながらも、自分の舌で確かめながら考え抜いていく。とてつもなく難しく思える料理の行程にも、シンプルなパターンが見えそうになったり。ひとつひとつの試行錯誤が、自分の感覚として身に付いていってほしい。
聞き手:恒光(島食の寺子屋・受入コーディネーター)
話し手:出野、武田、長谷川、三橋(島食の寺子屋生徒)
恒光:長谷川さんはどうだった?GOサインを出すまで、ぎりぎりまで粘る感じがあった。
長谷川:あっという間だった。武田さんの番が終わって、あぁ次だなって。そしたら、もう「あれ、あれ?やばい、やばい。」って。
恒光:武田さんのお弁当の日から何日空いたの?
武田:みんな5日くらいの間隔でした。
長谷川:土日挟んだら月曜日に仕込み開始だから、土日の間に家で試作をしてみたり。まるどマーケットがたまたまあったから、ムラーさんのところの野菜を見て、「じゃがいもを扱おう」ってなって。ズッキーニあるなぁ、食べよう。きゅうりあるな、食べよう。全部家に持って帰ってたべて。焼く、揚げる、生、湯がくをして食べてからお品書きを決めました。
どちらかというと自分はコンセプトを大事にしちゃう人間なので、コンセプトはずっと頭の中にあって。コンセプトは、ストーリーもそうだし、見た時の印象も含めて、全部まるっとの自分のゴールのイメージがあったから。器の選定と色味の出し方は、調理法と同じくらい重視していたから、どういう風にお弁当箱の中に収まるかっていうのは、ずっとお弁当箱もカバンに入れていて。
お弁当の中にどう入るかが全てで。教室の中でどれだけ美しく作れても、結局はお弁当の中でどうなるかだから、そこを自分が意識しないと忘れてしまうことだから。先生はそれを無意識にやっているんだろうけど、自分の場合は弁当箱が目の前にないとサイズ感もわかんないから。松花堂弁当の一升がどれくらいのサイズで、そういうところが食材をどう調理するかと同じ位に意識していた。
恒光:実際に野菜を齧ってみて、手を加えてまた味を確かめてみるって、寺子屋の考え方の根源でもあるんだけど、実際にやってみてお弁当という結末にどのように繋がった?
長谷川:ちょうど、それをnoteに書いているんですよ。実験過程をまとめるつもりで。
一例だけ挙げると、レタスで。ラウンドレタスを、①普通に湯がく色止め、氷水。②それと塩水2%で湯がく、で氷水。③それとシンプルに塩水につける。という3種類をやって。えぐみ、色味、食感と全部よかったのが、塩水1.5%でやるのが、なぜかまろやかになった。ただ湯がくのと比べてもえぐみがない。
レタスって普通サラダとかで生で食べるじゃないですか。生で食べるみたいなのを覆そうみたいな。前に家でレタスを湯がくことがあって、湯がくことで「しゃきっ」じゃなくて「こりっ」が出てくる。葉物がもっている繊維の歯ごたえが水分が抜けることで出てくる。
それをサラダじゃなくて和え物という形で活かそうと。そういう面白さを出したいというのは、家で試作しながら出た結論で。白和えという形で入れた。
恒光:次回もレタスが出てきた時は、その手法はひとつの引き出しになるね。
長谷川:なりますね。実際に仕入れたのはグリーンリーフで、ラウンドレタスよりアクが強いから、どうしても黒ずんじゃって「これは白和え大丈夫かな?」って。
だから、どの野菜を使うとか、どの時期の野菜を使うかによって個体差がある。だから、今回の手法が通じない時もある。だから、その時は同じように目の前にある素材と向き合って、なにが一番良いのか自分で腹落ちするまでやるしかないかなと思う。
恒光:詳しいところは今度またnoteで聞くとして。最近、みんなの会話で塩分濃度がいくつっていうのが、ホットワードな気がして。あれって、なんのことを話してるんかなって。
長谷川:先生の指示の中でけっこう多いんですよ。野菜にしろ魚にしろ。とりあえず、塩を使ってなにかしらするんですよ。それが、1だったり3だったり1.5だったりするわけですよ。
恒光:その数字は傾向があったりするの?
長谷川:あります。先生の弁当に鱸の焼き物があったと思うんですけど、あれは3%で。
なんで3%かっていえば、あれは塩焼きにするから、食べた時に塩の味を感じられるような状態に終わる。それが2%になると、塩味までいかない。下味くらいに落ち着くし、魚の臭みもとる。中に入っている血液とかが出ていく下処理っていう意味で魚をつけたり。
恒光:1%は?
長谷川:1%だと、野菜をしなっとさせて巻きやすくする為とか。
恒光:魚の1%はないの?
長谷川:一回やりました。ただ、臭みがとれない。海水が3.5%だから、そことのギャップが開く。
恒光:この実験は生徒の方から、やりたいって伝えたの?
三橋:たまたま魚がいっぱい入った時があって、その時に実験でやりました。
長谷川:飛魚でそれをやって、明らかに違う。
恒光:飛魚基準だね。
長谷川:食べて覚えているから、先生の指示がなぜその数字か?が自分なりに分かるレベルにはなったかなと思います。
恒光:他の魚でも同じ基準で通じるのかな?
長谷川:多少は違うと思うけど、大筋では合っていくと思う。先生からいつも言われるのは、1か2か3が多いので(笑)
三橋:魚は3が多い(笑)
長谷川:その他には「ひとつまみで良いよ」って時もあるし。それは野菜の色出しの時ですけど。
恒光:逆に考えると3択、もしくは4択くらいのシンプルなものだね。
三橋:でも、漬ける時間は調節が必要。身の厚さとか常温なのか冷蔵なのかとか。
長谷川:でも、最近の先生の傾向は2時間(笑)
恒光:傾向って、なに?(笑)
長谷川:先生の指示を聞いていると、だいたい氷水で2時間。を好んでらっしゃる。
個人的には冷蔵庫のなかじゃなくて、氷水をいれて常温がいいのかなと。冷蔵庫の中だと身が引き締まってしまうから。緩ませるという意味でも常温。
恒光:シンプルなようで、難しい課題だね。
2021年7月3日収録@島食の寺子屋校舎での放課後