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12月「詰める」

   あられがよく降る。こたつでみかんを食べてお茶をする。暖房やお風呂で顔が真っ赤になる。そんな毎日になった12月。認めたくないけれど、しっかり冬が来て、2024年が終わろうとしている。どんどんと過ぎていく日々。休みの日も予定を詰めて、一時も無駄にしたくないと時を惜しんでいる。

〈12月に出会った島の植物〉

【留学弁当を終えて】

    お品書きから仕入れ、段取りなど全て考え、海士町で働く方々に弁当を作る「島食の留学弁当」。11月末から4週連続!

    始めの3週はシェアハウスごと3グループに分かれて取り組んだ。私たち「離れ」の弁当のテーマは「海士の風景」。

    お品書きの考案は、食材からでもなく、作りたい料理でもなく、イメージから始まった。「明屋海岸のハート岩を作りたい!」「灯台、三郎岩はできないかなあ」「船は?」「波は?」表したい物に食材や料理を当てはめていくのはとても新鮮だった。風景と食材を頭の中でぐるぐるさせて、何が岩になるのか、波になるのか考える。そして料理を考え出す。

    右上の焚き合わせに明屋海岸。左上は北側の風景として島後、三郎岩。右下は崎の風景として木路ヶ崎灯台、漁船に大漁旗、紅白餅に崎だんじりの飾りであるスダジイの葉を添えて。海士の風景を散りばめた弁当を作ることができた。

   8月に初めて留学弁当に取り組み、今回が2回目。1回目に比べ、お品書きの組み立て方が身に付いてきたと感じた。五味が重ならないこと、料理ごとに食感が異なるようにすることなどが、自然と意識できるようになっていた。

    例えば、味噌を使ったおかず2種類のうち、一つは酒粕の味を強くして違いを出した。また、オレンジのものが多くなったので、南蛮漬けは盛り方を変えて紅くるり大根のピンクが表に出るようにしたり、紅白餅風団子をお品書きに追加したりして、どちらの枠も彩りがよくなるようにした。

    味、盛り付けには課題が多くあった。担当した焚き合わせは、薄味の物と濃い味の物の差が極端で、濃い物の後に薄い物を口にしたら、ほぼ味を感じないくらいになってしまった。盛り付けは、上下に重なっているところがあり、せっかく作った一品が見えなかった。

    成果も課題も得られた2回目の留学弁当。たくさん試作して、ぎりぎりまで話し合った。二転三転したり、行き詰まったり、散々話し合って結局振り出しに戻ったり…。これがベストだね!となっても、しばらくすると「こうしたらいいと思うんだけどどうかなあ?」と再び始まる話し合い。言いたいことを言える仲だからできた。いつでも聞いてくれて、アイデアを実現させようと諦めずに一緒に考えてくれたから、最後まで妥協せずやり切れた。思いの詰まった弁当になった。

   なっちゃん、もえちゃん、本当にありがとう!

〈4月27日撮影・西ノ島にて〉

   4週目は留学弁当FINAL。115この弁当作り。8人全員で1つの弁当を考えた。

    私は坂元と八寸(右下)を担当。それと、隠岐牛を使った一品を。テーマは「御褒美」。1年の終わりに、ちょっと贅沢な弁当でうれしい気持ちになってもらえたらいいなと、みんなで考えた。

    同じ時期に会席の営業や小中学校給食へのクリスマスケーキ作りも重なり、頭も体も追いつかない。じっくりと考える間もなく、全力でできなかった悔しさが残るものになった。

    それでも、全員で1つのものを作る面白さや難しさを味わうことができた。自分では思いも付かないメニューや、これまで扱ったことのない食材の調理に挑戦する仲間がいて、どのようなものが出来上がるかわくわくした。一方で食材や味付け、調理法の重なりには何回も調整が必要で、弁当全体をバランス良く構成する難しさを感じた。

    どんなときにも感じるのが、仲間がいるありがたさ。常に「手伝って」と自分から頼ってばかりの私だが、本当に追い込まれたときには誰かにお願いする段取りも考えられないときがある。そんなとき、「手が空いたよ」「これをやったらいい?」「自分がこの作業をやるのでメインの調理に行ってください」と、先を読んで声を掛けてくれる。そして、私の思いを汲みながら進めてくれる。本当に頼もしくて安心して任せられる。そんな信頼できる仲間ができたことが、とてもうれしい。

【2024年の漢字】

   今年の漢字はこれに尽きる。4月の習字教室で「今の自分」を表す言葉として書いた「幸せ」の文字。あのとき感じていた「毎日幸せ」という気持ちは、2024年を終えようとする今もずっと同じ。

    食の道を歩み始められたこと。
    たくさん学べていること。
    毎日、おいしいごはんを食べていること。
    季節を感じて、目一杯味わえていること。
    地元の方によくしてもらっていること。
    仲間に支えられていること。
    
    幸せが詰まった毎日。幸せ者だ。

【再び京都へ】

    夏の京都研修でお世話になった「京料理鳥米」さんへ。日本の伝統的な料理であるお節料理を、長く続く日本料理店で学ぶことができる、とても貴重な機会だ。注文したお客様たちは、とても楽しみに待っているだろう。健康や幸せを願いながら食べる大切なひとときのために、少しでも力になれたらうれしい。まだ真っ直ぐに切ることができないので、包丁の作業は引き受けていいか迷うが、どんな仕事も丁寧に取り組みたい。そして、店主の田中さんや料理人の方々からたくさんのことを学んで帰りたい。

(文:島食の寺子屋生徒 小松)