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無邪気さ

春一番のような風も吹き始め、とうとう冬も終わりかなという雰囲気が出てきた。今回の冬は、例年より雪が多く降った気がする。すごく積もるわけではなく、日中に吹雪いたり、夜のうちに静かに降って朝には真っ白な世界になっていたり。

都会でも地方でも、雪が降ったら普段と違う風景が広がっているはずなのに、自然の近くにいるとなぜか雪景色も様々に感じる。雪で首を垂れるススキ。普段は緑に紛れている鳥たちも雪の中では、浮き出るようにに見えてくる。

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なにもかもが異世界に見えて、うきうきしていた。もう暫く雪が降らないのかと思うと、遊び場を取り上げられた子供のような、残念な気持ちになっている。

そんな気持ちを引きずりながらも、楽しかったことは楽しかった。
近くに芹をとりにいく時も、わざわざ雪が降っている日に出かけて、寒い寒いって言いながらも芹摘みを楽しんでいた。雪解け水が流れていて、足元はずぶずぶで、泥の中に手を突っ込んで。そして、帰る時には沢の水で、泥のついた芹を洗う。本当に子供のように遊んでいた。

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ここ最近は、こんな風に楽しむことが、料理でもまず大事なんじゃないかと思い始めている。島食の寺子屋に通う生徒たちの殆どが飲食の経験がない。お金を頂いてお客様に料理を出すことも、友達に料理を振る舞うこともなかった生徒が、料理で人に喜んでもらう仕事をしようと飛び込んでくる。どうしても最初は恐る恐る料理を出す。

それでも、「これ美味しいね!」と直接言ってもらえる機会もある。
そんなときは、料理を出した生徒はとても無邪気な笑顔をしている。素直に喜ぶし、それで喜んでもらうことは、とても大事だと思う。

(文:受入コーディネーター 恒光)