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11月「続ける」

   8年ぶりの開催となった「崎村だんじり」で幕を開けた11月。激しく揺れる神輿。気合いの入った声。終始圧倒された。

〈崎村だんじりの様子〉
〈島伝統の正月飾りを名人から教わる〉
〈ボランティア先の農園で、産業文化祭へ出店〉
私はパンプキンスープを作った!

   11月はだんじりを始め、地域の行事や手仕事に携わることができ、この年にこの島で過ごしていることをとても幸せに思う。

〈11月に出会った島の植物〉

 「崎村だんじり」の直会に向けて、夜中3時半から始まった120個の弁当作り。海士町役場「新庁舎竣工式前夜祭」の43名分の会席料理。どちらもこれまでにない数で、お祝いの華やかな料理が入る。

    長く続く、歴史に刻まれる行事に華を添える食事。大仕事に緊張感が増した。また、これらが実践のピークと聞き、寺子屋での時間が終わりに向かっていることへの寂しさが重なった。

〈崎村だんじりの弁当〉
〈新庁舎竣工式前夜祭の会席〉

   先月のnoteに記した目標。
「慌ただしい実践の中でも、食材を“上手に”使う」

“上手に”とは…

◯不揃いな食材も当たり前として扱い、切り方を考えてお客様にはどれも同じに見えるように仕上げること。

◯無駄にしないこと。在庫管理をしっかりとして、適切に保存すること。魚や野菜の食べられるところは料理に使えるようにきれいに捌いたり切ったりすること。

    一つ一つの食材を同じように見せるため、似た大きさのものを選んだり、切り方を揃えようと意識したりした。意識はするものの包丁技術が伴わない。まだまだ修行が必要だ。まずは真っ直ぐに切るところから!

    無駄にしないということに関しては、野菜くずや魚のあらを出汁にする他、今月は渋柿の皮やみかんの皮を干したり、ブリの肝や胃袋などの内臓を炊いたりして、食材を丸ごと使う方法を学ばせてもらった。

    しかし課題は残る。冷凍したら日持ちするものが冷蔵庫に置いたままで、使えなくなってしまうことがあった。野菜が傷んでしまったり、ラップや袋にきちんと包まれず乾燥してしまったりすることもあった。仕込み中は時間に追われて難しいこともあるので、帰り際に確認するようにしたい。

    多くの実践を通して、身に付いてきたと感じられることは、段取りを考えられるようになってきたこと。

    これまでは自分たちで決めた段取りの順番が検討違いなことが多々あり、先生から「それは直前やで」「こっちを先にやらなあかんで」などの指導を受け、打合せで決めたことが全く意味をなさないことがあった。それが最近では自分たちで決めたものにズレが少なくなっている。

    段取りを考える打合せは、毎回欠かすことがない。続けてきた成果がきっと出ている。

    事前打合せはとても大切で好きな時間。他のメンバーの作業を把握して、厨房でのみんなの動きを想像する。コンロや調理台など、場所や器具は限られる。それらをどの順番で誰が使うのか。オンテー(テーブルに料理をセッティングする)までの段取りが出来上がると、人、時間、道具がぴたっとくる感じがして気持ちがいい。「きっと上手くいく!」と思える。実際は所々に想定外があるけれど。

〈当日の段取りメモ〉

   仕込みや盛り付けなどの作業中、厨房はとても静かだ。全員がそれぞれの役割に黙々と取り組む。

    事前にしっかり話しているから、自分の仕事が分かって動ける。安心して任せているから、自分の作業に集中できる。メンバー同士、密なコミュニケーションを続けて築いた信頼関係。それが作り出す空気なのだろうと思う。仕込み中ふと全体を見回して、自分がその一員であることに喜びを感じる。そして、ずっとは続かないかけがえのない“今”を噛み締める。

〈仕込みの様子〉

    今月末から、寺子屋メンバーが3つのグループに分かれ、それぞれのグループが海士町で働く方々に弁当を作る「島食の留学弁当」が始まる。

    グループはシェアハウスごと。性格、生活習慣、好みなど、きっと一番に知り合う仲。一番多く食事を共にした仲。それぞれグループで、どのような弁当が出来上がるのか、とても楽しみ。

   私たちのシェアハウス「離れ」の弁当のテーマは「海士の風景」。食べてくれる方それぞれの思い出が蘇るような弁当にしたい。

    「離れ」での最近の会話は、99%弁当について。意見をたくさん出し合える関係、環境。妥協なくやり切ったと言える、私たちらしい弁当を作りたい。

(文:島食の寺子屋生徒 小松)