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年満月のいろは

 気づけば今年も残すところ1週間となりました。3回の留学弁当に続いて、ファイナル弁当、桜風舎の忘年会会席、小中学校のクリスマスケーキ作りと毎週実践の予定があり、目まぐるしく日々が過ぎていきました。

◯留学弁当について
チームごとの留学弁当、そして寺子屋生徒全員でつくる留学弁当ファイナルがありました。
私たちが担当したお弁当の頃(11月末)の海士町は、季節が秋から冬へとグラデーションのように移り変わっていくのが楽しい時期でした。青々とした柿の葉から、鮮やかな朱色や黄色とにぶい枯葉色が混じりあって美しさを見せていたり、銀杏が淡い黄色から深い色に変化したり。食材も小蕪や大根、葉物野菜がだんだんと増えていき、春の頃と比べて寒さにあたって、野菜の甘みが感じられるようになりました。前の週に仕入れていた野菜でも、次の週にはワンサイズ大きく成長していて、野菜の発注の時は調整が難しかったです。先生は八百屋さんじゃないのだから、いつでもほしい大きさのものが入るわけではない。ということを常々おっしゃっていましたが、仕入れを自分たちでするのが久しぶりで改めて難しさを感じました。
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大敷では芋鰹フィーバーの時期があった。脂がのって美味しかった。
でも仕入れではほしい魚が少なく、みんなでじゃんけんするほど。
福井さんの原木椎茸のほだ木起こしのお手伝い。重い原木の上からハンマーでカーンカーンと叩いて菌を起こす作業をした。その後、寒さや雨に当たると椎茸が出やすくなるそうで、天気や気候をよんでおられることを知る。タイミング良くお手伝いできたことに感謝。

10日後くらいに椎茸が出てきたと聞き、見せていただいた。ひとつひとつ袋をかぶせて雨風から守ってあげる。手間がかかっている。
収穫のタイミングが悪く、留学弁当ファイナルの椎茸カツに使いたい量が取れないかもしれないと聞き、生産現場に行き様子を知ることができてよかったと思いました。実際にはほしかった量の立派な椎茸を届けてくださいました。都合をつけてくださったことが分かり、本当に感謝です!椎茸カツは大人気でした☺︎

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 お豆腐から薄揚げを作って、稲荷寿司を作ったり、おからを湯煎にかけてパウダーにした卯の花まぶしだったり、冷たいお弁当に温かさを感じてもらう工夫だったりと、それぞれがチャレンジをした留学弁当でした。
嬉しかったのは、先生から「あと一歩」という言葉をいただいたことです。また、一つのお料理を出した時は自分のベストを尽くしているはず。だけどそれで満足するのではなく、もっとこうしたら良かったのではないかと、考えないといけないし、自分(先生)は考えていると話してくださいました。
 料理のいろはを一通り学んでみたけれど、まだ作ったことのない料理を試してみたい気持ちが勝って、より良くするためにその先を考えることはできてなかったように思います。料理に限らずだと思いますが、何かを修練するには「反復」を怠ってはいけないと思います。
和食の基本中の基本である、出汁の引き方ひとつとっても、いまだに納得のできる出汁が引けないことが悔しいです。煮炊きものに適した出汁と、お吸い物に適した出汁は目指す味が違うのですが、その違いを狙ってひくにはまだまだ反復と改善が必要そうです。
出汁をひく、食材を切る、魚をさばく、下茹での加減。新しいことにチャレンジしつつ、基本に立ち返って、料理のベースをしっかり作っていきたいです。

留学弁当ファイナル テーマ「ごほうび弁当」
〜今年1年お疲れさまですという労いと自分へのごほうびという気持ちをこめて、ご馳走をつめこみました〜
島の方々に配達の風景

食べ終わった方がおいしかったよ〜ありがとうと言葉をいただいて、良いお年を〜と挨拶をする。気持ちがいい。幸せいっぱい。食べてくださった方ありがとうございました!

◯おだしの世界
 そう思ったきっかけの一つに、卒業生の武田さんの講座がありました。武田さんは岡山のブリコールと雲という日本料理店で3年間働いておられます。寺子屋での学びと職場での学びをかみ砕いて「だし」について授業してくださいました。 
 武田さんの働いているお店では、鰹昆布だしではなく、基本的に昆布だししか使わないそうで、和食=鰹昆布だしと思っていた私にとって目からうろこのお話しでした。昆布だしの三つの役割として、「美味しいを強めすぎない」「素材の味を引き出す」「」と考えておられます。
武田さんが作ってくださったのは、大根、人参の椀種に鶏出汁をはった碗物でした。武田さんは生の人参と大根をスライスして口に入れ、素材の味を見てから、お椀の中でどのように食材を光らせたいかを意図して、切り方を決めていたのが印象的でした。大根は歯ごたえも残したいから、茹ですぎない。人参はシャキッとした生の食感も残しつつ、、、その茹で時間は2分ほどの短時間で、えー!そんなに短くていいの?とびっくり。
鶏だしは島食でやっている寺子屋では使わないお出汁ですが、鰹昆布だしとの違いを知れて、とってもおもしろかったです。手羽先を入れてしばらく火にかけた出汁の味、そこに昆布を入れて火にかけた出汁の味を比べさせてもらいました。お肉だけでも美味しいけれど、なにか物足りない、奥行きがない、水っぽく後味が透明な印象でした。一方で昆布を入れた後の出汁は、”何か足りない”の部分をさりげなく補完しているという言葉がいいのか?”美味しい”の完成形ではないけれど、近づいた!という感じがしました。

そして最後に、完成したお椀をいただきました。冬の大根の甘み、みずみずしい歯ごたえを残した人参、柚子のふくよかな香りとそのお出汁をまとめていただいた時、”美味しい”という一つの丸が出来上がったように思いました。
そうか!料理は良さを引き立てあう食材の組み合わせ、切り方、味付けがあるのかあと大発見。さらにそれがコースのお料理としてお出しする時、それぞれの引き立て方が変わってくるはず。一品ずつ完全な美味しいを目指すのではなく、一つの碗、一つの”かいせき” 料理を俯瞰して完成させることを目指すものなんだ!と学びになりました。
といってもそれができるようになるには、基本をしっかりすること、引き出しを増やすことが大事です。
これからも寺子屋での1年間の学びを経て、経験を積まれている先輩にお話を聴く機会、交流の場があったら嬉しいなと思います。

◯寺子屋みんなでつくるなにか
 桜風舎忘年会、クリスマスケーキ作り、留学弁当ファイナル、と後半になると寺子屋生徒みんなでつくる何かが多くなってきました。

クリスマスケーキ〜
みんなのアイデアが詰まったケーキが出来上がりました。子どもたちが喜んでいたと聞いて、本当に嬉しい!
8人だとまとまらないかな、みんなの希望が反映されるだろうか?と不安に感じる間もなく、みんなのチームワーク力の高さにいつも引っ張ってもらっています。
段取りを整えて、リーダーシップをとってくれる人、細やかなフォローとこまめな連絡をしてくれる人、ここぞ!という時に力を発揮して助けてくれるスーパーマンみたいな人、アイデアマン、丁寧でプロ意識をもっている信頼できる人。
駆け抜けたまさに”師走”のスケジュールの中、いろんな場面でみんなのセンスや魅力がきらりと光っていたなぁと思います。
全員で作り上げるなにかは、残りわずかとなってきた日々であとどれくらいあるのでしょうか。
今年はこれまでいろんな人との出会いや言葉、体験から蒔いてもらっていた種が、少しずつ芽吹いてきたように思います。
一安心という気持ちや、ここからが本当の始まりだ!と気合いをいれたくなる気持ち、夢と今の自分との差とタイムリミットに焦る気持ちといろんな感情でいっぱいです。ですが、水をやって心をかけて、この芽を大切に育てていきたいです。ということで、今年の漢字は「芽」とします。
明日から1週間、おせちの京都研修が始まります。このような機会と縁を繋いでくださったことを無駄にしないように、正直に誠実に丁寧に励もうと思います。
新年を笑顔でみんなと再会できますように。
みなさん今年もありがとうございました!
良いお年を〜!

(文:島食の寺子屋生徒 前田)