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自然と付き合う 道具を使う

雨の予報が幸いにも外れて、午後に外へ出かけ寺子屋農場の畝を構うことができた。

そこは、生徒たちが入塾して必ず通る桂剥きに使う大根があった畝で、1ヵ月ほど放ったままだった。ここ数日の雨と温かさで、自然と雑草が生え始めていた。

草刈り機があれば、半時間ほどで片付けられるだろうと思っていたけど、地を這うように生える草と、土の中で毛細血管のように張めぐされている根を前にして、草刈り機の刃はただただ草の表面を滑るだけ。

ならば、管理機を使って力任せに根こそぎ土を起こそうとしたら、管理機の刃に根っこや細かい草が絡まって、管理機も満足に動きそうになくなる。機械に頼るのを諦めて、仕方なく自らの手で地道に起こすことにした。

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鍬を手に取り、振りかざしては振りおろし、雨上がりの湿った土と一緒に根を掻き出す。その行為を10回ほど繰り返したところで、「こんな原始的な道具で、いつ作業が終わることやら。。」と心の中で呟いてしまった。

機械を使えず手作業に変わる。それだけで、極めて効率の悪い作業になったと、決めつけふてくされていた。

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遅々と進む作業に、ぼんやりと身を任せていたら、通りがかりの方に「あんた何してるん?」と話しかけられた。一連のことを話したら、「こっちの方がいいんじゃない?」と四つの爪が付いた「爪鍬」というものを貸してくれた。今まで自分が使っていた鍬と、なんの違いが生まれるかと心の中で思ってしまったけど、好意は有難く頂戴するということで使い始めたら驚くくらいに違った。

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振り下ろすとサクッと土に入り込み、引けば根っこがプツプツと音を立てて切れていく。倍速で手を動かしながら、最初に使っていた鍬の無能さを嘆いていたが、最初の鍬の使い方を誤っていたのは自分じゃないかと、ようやく気付きはじめた。

草が絡んですぐに使えなくなる管理機は、そもそも草がある環境で使われていることを想定して製造されたわけじゃないのかも?とか、草がない環境ってあり得るの?とか。
さらには、農機具メーカーはどんな風に商品開発をしていくのだろうか?などと、目の前の手仕事に関係ないようなことにまで、興味が膨らみ始めた。

この4つ爪がついた道具を考え出した人は、間違いなく一度は自然と向き合って、そこから出した最適の答えが爪鍬という形で。そして、それが今も一般的な道具として世の中に出回っている。

一方で、Amazonやホームセンターの商品棚にずらりと並ぶ道具を、適切に買って適切に使いこなしている人は、自分も含めてどれくらいいるのだろうかとも思った。

便利な道具に囲まれた今では、どの道具を選ぶかにお金と時間をかける。
その一方で、道具を使う前から考え始めるという地点は、意外にも稀有で貴重な地点なのかもしれない。

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水ぶくれが破れたのを見て、少しは稚拙な皮が剥けてくれたかなと勝手に期待している。

(文:島食の寺子屋 受入コーディネーター 恒光)