見出し画像

やっと今、『入り口』

崎だんじり祭りから始まって、食の感謝祭、産業文化祭、新庁舎竣工式…と島がいつも以上ににぎやかだった11月。数年ぶりの復活!という行事もあり、それぞれの行事にお弁当の仕出しや野点企画、会席、生産者の方の出展お手伝いなど様々な形で関わるチャンスをいただいて、本当に幸運だなぁ…と思う。地域の歴史の中に自分たちがいる時間が編み込まれていくのを感じて、これまで住んだどの場所でも感じたことがなかった新しい感覚。

▲崎だんじり祭り!お神輿の迫力と、華やかな飾り。そして何より、地域のご年配の方々の嬉しそうなお顔が印象的でした。お弁当は炊き合わせを担当。120個以上のひろうすを先生にたくさん怒られながら揚げたのも今はいい思い出…

▲食の感謝祭
茶道経験者のさきちゃん&もえちゃんの凛とした姿が素敵でした。
勇木さんのお茶碗は一度手にとると、ずっと触って眺めていたくなる不思議。
写真はないけれど、隠岐神社に奉納するお寿司の酢飯を作らせていただけたのもすごく嬉しかった!

▲新庁舎竣工式 
みんな大好きお餅投げ!やさしい方がお餅を分けてくださってほっこり。
前夜祭は離島キッチンで。これもきっと、数十年に一度の行事。

▲産業文化祭
ムラーズファームさんのお手伝い 大盛況!

* * *

そして11月の最後。このnoteを書いている今、留学弁当のお届けを明日に控えている。
※留学弁当:私たち生徒がお品書きを考えて作り、島のみなさんにお届けする企画。

前回の留学弁当から約4か月。昼の箱膳、夜の会席、仕出しのお弁当とたくさんの実践を重ねてきた。竣工式前夜祭の43名会席前日に「今年の会席は今回で終わりか、あと1回あるかどうかだと思う」と先生からお話があった時には、あぁ本当にもう終わりが近づいているんだ、という寂しさと焦りが入り混じった気持ちになったけれど、ここ数日留学弁当の準備を進めながら、寺子屋で学んできたことによる自分の変化も、少しずつ感じている。

「はじめにお弁当の軸になるテーマから考えること。食べる方に何を感じてもらいたいか?メインの食材は何か。それはどんな味や食感を持っていて、生かすにはどう調理するのか?それを補う味・食感・調理法で周りを固めていくといいかな。」これは京都研修で鳥米の田中さんからいただいたアドバイス。学びをもとに今回のチームでは、「つくりたいもの、食べたいものを出し合ってみよう!」からスタートした前回とは全く違うアプローチで挑戦。

実践してみて発見したことは2つある。一つは出てくるお品書き案の幅がぐんと広がるということ。食べたことがあったり、授業で作ったことがあるという自分の中のストックだけではなく、表現したいことにぴったりな料理法を自分で探しに行こう、勉強しよう!と思うようになった。春頃、図書館で一度手に取った日本料理の本を今改めて見ると、これは習ったことの応用だなとか、こんなやり方があるのかという驚きとかいろんなことが頭を駆け巡って、以前より断然面白い!と感じていて。

そしてもう一つは、自分の“季節センサー”が前より敏感になっているぞ!という発見。都内で会社勤めをしているときには、テレビの天気予報士のお姉さんの服装や通勤電車のつり革広告、街のイルミネーションで「ああ、今年もこんな季節がやってきたんだなぁ」と気付くくらい。特に通販の仕事をしていると常に3~6か月先のことを考えているので、真夏にクリスマスやおせちを考えたりして季節感がごちゃごちゃに…(笑)

でも、島に来て山や畑で食材や敷葉を収穫したり、大敷でお魚を見たり触れたりする時間を重ねてきた今、お弁当を食べていただく方に“今日の海士”をめいいっぱい感じてもらいたいなと考え始めると「10月と11月ってどちらも『秋』だけど、島の景色も食材も、空気も全然違う!これを表現したい、伝えたい。」とはっきりと言い切れる自分がいて、これはちょっとした驚きとうれしい発見だった。

具体的なお品書きを考えていく中でも、これまでの実践の積み重ねの中で学んだことがじわじわと効いてきている感じがする。甘味、酸味、苦味、辛味、香り、脂感、ほっくり感、ねっとり感、みずみずしさなどなど…食材自体が持っている個性は様々。味の記憶をもとに、在庫や仕入可能な食材リストを見ながらそれらを生かすにはどう調味・調理したらいいか?と考えるようになったり、反対にほしい食感や味を持った食材を仕入れることができないか相談してみたり。試作ができるのは今回も2日間と限られた時間だったけれど、気持ちの面では「お弁当が埋まらなかったらどうしよう…!」と不安でいっぱいだった8月と比べると、わくわくしながら取り組めているなぁと思う。

▲亀田商店さんのお豆腐で手揚げお稲荷さんに挑戦!本番うまくいきますように…
晴れているうちに、食材と敷葉も調達完了!

* * *

この11月で離島キッチンでの実践のピークを終えて、先月のnoteに書いた全体の課題(事前の確認、当日のオンテーまでの時間の意識と優先順位の整理など)については、前進したぞという手ごたえがあった。厨房やホールでのみんなとの会話が変わったし、先生からも段取りに関する指摘より、盛り付けやもっときれいに切るための包丁の使い方など、技術的な指導をいただく時間が増えたように思う。言われることに必死についていくという段階は卒業できたけれど、それは本当にやっと、料理をする人としての入り口に立ったのかな…という感覚。

先生が仰る「まな板の上の仕事」で言えば、思い描いたようにならない、通りに手際よく進まないという“自分の手”に対するもどかしさで最近は苛々することもたくさんあった。この苛々は、以前はなかったもの。前向きに考えれば、自分ができていないぞという自覚と焦りがでてきたのは、目指すべきところと自分のギャップが見えてきたということで、一歩前進なのかも…(?)離島キッチンでの実践は、もう数えられるほどしかないけれど、自分の頭で思い描く動きと、手の動きを近づけていくための反復練習を冬から春に向けての間の課題にしたい!


▲秋の夕暮れ
▲母屋の玄関にも秋。
植物博士さやちゃんが一つずつ集めた葉や実で作ってくれたリースはとってもかわいい!

(文:島食の寺子屋生徒 河野)