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『五等分の花嫁』へのキモチ〜一花の場合〜

ようやく言えそうです

まさかこんなにアニメにハマるとは思っていなかった。気付いたら、アニメを見るのが日課になっているし、キャラクターを演じる声優への興味関心も止まらず、アニメ沼&声優沼ににハマっていく毎日だ。

そのきっかけになったのが『五等分の花嫁』。純粋に好きな作品というのもあるんだけど、この作品に出会う前後でアニメに対する向き合い方がガラリと変わった事もあり、大事な作品でもある。

「好きなものは語らなくて良いのでは?」という変な気の迷いも一瞬あったのだけど、やっぱり言葉にしておこうと踏ん切りがついて、『五等分の花嫁』が好きだという気持ちを書く事にした。

五つ子の物語という事で、当然1本でまとめきれるはずもなく、五つ子それぞれの視点と主題歌を中心とした音楽の観点からこの作品の魅力をまとめていきたい。ちなみに、原作&映画のオチに触れるのでまだ観てない& オチを知りたくないという方はご注意を。

『五等分の花嫁』あらすじ

まず『五等分の花嫁』のあらすじから。男子高校生のフータローが割の良いバイトとして家庭教師の仕事を紹介されるのだが、その教え子が同級生の五つ子の女の子。長女・一花、次女・二乃、三女・三玖、四女・四葉、五女・五月の5人で中野家の五つ子だ。勉強嫌いな彼女たちはフータローを突っぱね、一方のフータローはバイトの報酬のために四苦八苦しながら勉強を教えようとする。そんな彼、彼女らの関係は高校生活の色んなイベントを経て変化し、気付けば恋愛に発展、5年後にフータローと五つ子の誰かが結婚する。

では、「五つ子の中の誰がフータローの花嫁になるのか?」がこの『五等分の花嫁』のテーマなのだけど、アニメの展開としては、シーズン1、シーズン2、そして完結編となる今回の映画という流れになる。その映画では、高校生活最後の文化祭が物語の中心となり、フータローはその最終日で五つ子の中の誰かに自分の想いをしっかり告げる事になる。彼は五つ子の誰にその想いを告げるのか、未来の花嫁は誰なのかが、映画の1番の見所だろう。


あらすじ〜一花の場合〜


そんな五つ子の中から今回は長女・一花をピックアップする。彼女は五つ子の長女という事もあって、フータローに対してもお姉さんという姿勢で接する事が多い。一方で、しっかり者のように見えて、部屋は汚い、眠っている間に着ている服を脱ぎ捨ててしまうなど実はだらしない一面も持っている。大まかにではあるが、そんな一花に注目して映画までのあらすじを追いかけてみる。

シーズン1では、一花の夢である女優の仕事をフータローに後押しされて、学業と女優業の両立を目指していく事になる。そんな応援もあり、彼女は早い段階からフータローの家庭教師にも協力的な姿勢を見せていく。当初は彼にとって良き友人というポジションだったのだけど、花火大会、林間学校とイベントを重ねるうちに、無自覚ながらもそれが恋心に変わっていく。

ここまでを見ている限りだと、かなりヒロインに近い立ち位置だったとも言える。実際、お姉さんキャラではあるのに、時にフータローにだけ見せる弱さにキュンとする瞬間も多くて、「一花が花嫁になるんじゃないか?」と感じられる場面も沢山あった。

続くシーズン2では、フータローへのが恋心少しずつ一花の言動にも見えてくるようになる。不器用ながらも自分のできる範囲でアプローチしていく姿が可愛い。とは言え、まだその想いに踏み切れない部分もあり、1番早くフータローへの恋心を見せた三女・三玖へのサポートに回ってしまう事もあって、思うように進まない。

そんな中でも、嫌いだったフータローへの気持ちを一変させて積極的に「好き」を貫く次女・二乃の姿と、恋を通じて明らかに変わっていく三玖の姿に、自分の想いをどうするべきなのか一花は迷う。そんな彼女を四女・四葉が背中を押し、自分の恋心を優先すると決めた一花は女優らしく嘘を巧みに使いこなして、フータローへの恋アプローチを仕掛けていく。三玖に変装して、一花がフータローの事を好きだと告げることで自分の事を意識させたり、修学旅行ではまたもや三玖に変装して、三玖からフータローへの告白を阻もうとしたりする。結果として、その計画は失敗してしまう。フータローの気持ちを自分に振り向かせるどころか、自分達が昔に出会っていた事実さえも彼に嘘だと思われてしまうなど、その信用も失ってしまう。当然、五つ子の仲も険悪なものにしてしまう。

最終的には、一花は自分の失敗に気が付き、告白に勇気の出ない三玖の背中を押すことで罪滅ぼししようとする。一方で、フータローに対しては、「全部嘘だよ」と伝える事で、全てを無かったことにして自ら身を引いてしまう。そんな言葉をうっすら涙を浮かべながら伝える一花の姿には、仕方ないなと思う反面、あまりに可哀想な終わらせ方だと思ってしまう。また、そんな一花に対して、信じられないというキツい言葉をフータローが放ったことを思うと余計に胸が痛む。

ここまでが映画までの一花に関わるあらすじだ。かつてはフータローとかなり近い距離にいたはずなのに、自分の気持ちを優先したためについた「嘘」が、結果的にフータローへの恋心を諦める事になってしまったのが一花の現在地だと言える。(もちろん、フータロー自身がどう感じていたのかは分からないけれど)


映画で要注目な一花のシーン


そんな一花だが、今回の映画はかつての失敗をちゃんと糧にして成長した姿が非常に魅力的に映った。実際、友人と映画の感想をシェアしている中で、彼女の印象がグーンと良くなっている気がしたし、僕自身、何度も映画を観る度にそんな彼女の姿が好きになっている。そう、一花にとって今回の映画は見事に救いの場所になっている。

話は逸れるが、それは映画公開までの間で一花を演じる花澤香菜のファンになってしまい、もはや役柄を関係なく彼女の声が好きだという「花澤香菜フィルター」がかかっているのもあるだろう。ただ、そのフィルターを除いたとしても一花が魅力的に映っているのは間違いなくて、そのポイントを個人的にお気に入りなシーンをピックアップしながら書いていきたい。

それは公園でのフータローとのキスと良き友人として彼の背中を押すの2つシーンだ。なお、台詞に関しては正確さのためと引用元をはっきりさせたいという事で原作の漫画から引用する事にした。

自分の気持ちに素直になるということ

まずはフータローと公園でのやり取りから。場面としては、文化祭で五つ子のうちの一人が倒れたという事で、一花は仕事を切り上げて病院に向かう。その帰り道をフータローが一花を送ってあげることになる。その道すがら、五つ子の誰かを選ぶと決めたものの、やっぱり誰も選ばないと考えているフータローに一花はアドバイスをする。

「昨日キスの話したじゃない? 二乃 三玖 四葉 それに五月ちゃん 問題です フータロー君は誰だったら嬉しいですか?」(注1)

思わぬ質問に慌てるフータローに、一花は公園にある自販機でジュースを買ってきて欲しいとお願いする。フータローが飲みたいもので良いよとそこまで難しくもないお願いに彼はまた悩む。そんな中、一花は飲み物を選ぶヒントを投げかける。

「紅茶が二乃 お茶が三玖 ジュースが四葉でコーヒーが五月ちゃんね」(注2)

単に飲み物を選ぶのではなく、五つ子が好きな飲み物を参考に上げる、飲み物を選ぶ=五つ子を選ぶというちょっとずる賢いアドバイスになっているのはさすがお姉さんというところだろう。かなり悩んだものの、フータローは最終的にある飲み物を買う。

ちなみに原作映画共に、このタイミングでフータローが何を買ったのかは分からないのだけど、原作では、

「何固まってるんだ… あいつが勝手に言い出したこと… 適当に選びゃいい くだらない つーか 買わなきゃ済む話だ」(注3)

というフータローの台詞があり、僕自身ここを読んでいて「あ、フータローは飲み物を選ばなかったのか」と読んでしまった。その後に飲み物を持っているように見えないのも影響していると思う。映画を観るまでは、フータローは飲み物を買わなかったと誤読していた事に気が付かなかった。実際に映画のこのシーンで飲み物が取り出し口に落ちる「ゴトン」という音がするのだけど、ようやくそこで気が付いた。そう、このタイミングでフータローは飲み物を選ぶ=五つ子の誰かをもう心の中で決めていたのだ。

その後の展開を先取りすると、五つ子の一人を選ぶ告白シーンになり、バルコニーで待つ一花のカットに公園で購入した飲み物が差し込まれ、「フータローの選んだ飲み物=彼が選んだ五つ子」という伏線が効いてくる。一花の魅力から話は逸れてしまうのだけど、これはアニメだからこそできる表現であって、伏線の効果を抜群にさせるのと同時に原作を補完するという意味でも非常に素晴らしい演出だと思う。お気に入りのシーンだ。

さて、先ほど引用した一花の2つの台詞だが、パッと聞いてもどちらにも一花という選択肢が綺麗に抜けている。

彼女に関するあらすじで書いたように、きっとここにはシーズン2での罪悪感が働いているのだろう。全部嘘だよと言い切ってしまった事で、彼女自らフータローの中で自分が選ばれる可能性を消している。こうもサラッと「私は選ばれないのだ」と決めてしまえる一花の気持ちに切なくなる。もう何度もこのシーンを見ているのだけど、振り返る度にこの選択には胸が痛む。

あえて、花澤香菜フィルターでこの台詞を振り返るとするならば、自分を選択肢に入れないという悲しい台詞なのに、変な温度感を感じさせないままに表現できてしまう彼女の演技も凄いと思う。

そんな悲しい選択肢を投げかけられたフータローは相変わらずの鈍感なのか、優しいのか分からないけれど、一花がその選択肢に入っていない事に気が付かない。

「単純に あれは五人の中の誰かなんだ お前だって…そうだろ…」(注4)

と照れながらフータローはこの台詞をいう訳だけど、普段は鈍感なのに大事な場面で優しさが滲み出てくるのが彼の魅力なのかもと思った。

そんな彼の優しさ、素直になれていなかったのは自分なのかもという想いが芽生えたのか、思い立ってフータローにキスをする。突然のキスからの落ち着いたタイミングで、

「同級生の女の子となんてなかなかできないイベントだから思い出にしなよ あ 聞き忘れてた」「嬉しかった?」(注5)

という台詞には、かつてのお姉さんキャラクターだったあの一花が戻ってきたようで、思わず見ているこちらもキュンとしてしまう。

「素直な気持ちを大切に…なんて そうだよね フータロー君が誰を選ぼうと関係ない この気持ちはまだ しばらく静まりそうにないや」(注6)

確かに嘘でみんなを傷つけてしまったけれど、その想いを否定したり、自分で選択肢から外したりする必要なんてなくて、最後まで自分の気持ちを大切にすること。罪悪感にずっと囚われた一花はようやく解放されたんだと思う。先ほどの「嬉しかった?」という台詞も、フータローに自然体でいられた自分を取り戻した事を瞬間とも感じられる。結果がどうであれ、彼女にとって非常に大事なシーンだったことは間違いない。


背中を押せる強さ

自動販売機でのアドバイスもあってか、フータローは最終的に四葉を選ぶ。一方の四葉もずっと温めてきた想いは隠し切れないとその気持ちに応えるものの、まだやることがあるというので一旦お付き合いは保留になってしまう。思ってもみなかった展開から一夜明け、そんな四葉に戸惑うフータローはその気持ちを一花に相談する。その話を聞いた一花自身も戸惑う。

私は選ばれず、フータローと四葉の気持ちは通じ合っているけれど、2人はまだ付き合っていない。フータローはまだ誰のものにもなっていないのなら、私にもチャンスがあるんじゃないか。もしも、ここでそう一花が動いていたら、きっと同じ事の繰り返しになっていただろう。あの時よりも自分の想いに素直になった彼女は恋のライバルとしては厄介かもしれない。でも、一花はもう間違えない。

「ほら シャキッとする!」「四葉は好きって言ってたんでしょ じゃあ両想いじゃん くよくよしてたら嫌われちゃうよ」(注7)

と力強くフータローを励まし、その気持ちに間違いはないのだとしっかりと背中を押す。好きだった彼にに選ばれなかった事実をしっかり受け止めた上で、励ましの言葉をかけられる。その強さに一花の成長を顕著に感じられて何だか嬉しくなる。

加えて、ここでシーズン2の二乃の「誰が選ばれたとしても祝福したかった」という言葉がフラッシュバックするのも良い。彼女の中で気持ちの区切りがついたのもあるんだろうけれど、ようやく二乃の気持ちが分かった事もあり、その上でフータローと四葉をしっかり見守ってあげようという気持ちも感じられる。


花嫁にはなれなかったけれど

ここまでの2つのシーンを通じて、自分の気持ちに素直になりつつも、頼れるお姉さんでいられる事が一花自身の大きな成長なのではないか。確かにフータローの花嫁にはなれなかったけれど、恋愛で悩み、失敗し、そして強くなるそんな姿は間違いなくヒロインだと言える。そして、僕の中では大好きなヒロインの一人だ。一花にとって見事に救いの場であると同時に、鑑賞を重ねる度に彼女が好きになるのは増しているのはこういう成長にグッと来るからなのだ。

今回は一花に注目したが、今後も二乃、三玖、四葉、五月とそれぞれの映画での魅力を語っていく。どの子もそれぞれの形で恋愛(あるいは友情)を通じての成長を描かれていくのだけど、この分け隔てない目線こそこの『五等分の花嫁』の魅力だと思う。物語の中でもキーワードとして登場する、「どんな時も五等分」という言葉はキャラクターだけでなく、作り手のこういう部分からもちゃんと感じられるが、それがこの作品が愛されるポイントだとも思っている。

ごときすの話 〜一花の場合〜

さて、ここまで原作、アニメ1期&2期、そして映画に渡り、一花の魅力を語ってきたけれど、そんな彼女がしっかりと報われる世界線も存在する。それが、ゲームとしてリリースされている「映画『五等分の花嫁』 ~君と過ごした五つの思い出~」(略称 ごときす)だ。
なんとこのゲームでは、原作&映画ではフータローの告白相手が四葉だったのが、それ以外の一花、二乃、三玖、五月を選んだパターンを見ることができる。映画の話は逸脱してしまうのだけど、こういう世界線もあり得たかもしれないのと、IFストーリーだとしても納得できてしまうくらいの素晴らしい展開なので、最後にその魅力を書き残しておきたい。
ゲームは「初めに五つ子の誰に告白しますか?」という画面から始まるのだが、もちろんここでは一花を選ぶ。ゲームは文化祭での告白シーンから始まる。映画であれば、四葉の所に向かうのだけど、今回は一花が待つバルコニーへと向かう。

いざ、フータローが自分の目の前に現れた時の一花のリアクションが堪らない。本来のシナリオ通りに、自分が選ばれっこないと思っていたのか、フータローが間違えて自分の所に来たんじゃないか、あの子は〇〇にいるよと懸命に否定する。そこまで自分のところには来ないと諦めていたのかと胸がキュッと切なくなる。

でも、このIFルートではそんな一花をちゃんと救ってあげられる。ちゃんとフータローは一花が好きだからここに来たんだと伝えるんだけど、それを受けての一花の台詞が凄く好きだ。

「私は君を好きになっても良いんだね。」(注8)

この台詞を書くだけでもちょっと鳥肌が立つ。それくらいに重い言葉だ。先ほど映画の中で取り上げたシーンのように「私は選ばれない」と諦めていたこともあって、彼女の中で信じていた可能性はかなり低かっただろう。この台詞に即して言うならば、選ばれないと言うことは好きになる資格はないとまで思い込んでしまっていたのかもしれない。そういった気持ちが垣間見えるからこそ、この台詞の重みがずっしりのしかかってくる。そして、一花はようやく報われたんだなと、プレイしているこちらも嬉しくなってしまう。

そんな彼女とフータローが告白後にどんな結末を迎えるのか、卒業旅行で恋人としての距離感を縮めていくかはぜひプレイを。

注釈& 参考資料

▼注釈
注1 春場ねぎ 『五等分の花嫁』フルカラー版 12巻 2021年 講談社 p 137-138
注2  同上 p139
注3  同上 p140
注4  同上 p143
注5 同上 p147-148
注6  同上 p150
注7 春場ねぎ 『五等分の花嫁』フルカラー版 14巻 202 年 講談社 p35
注8 株式会社MAGES. 映画「五等分の花嫁」 ~君と過ごした五つの思い出~ 2022年6月2日発売

▼参考資料
春場ねぎ 『五等分の花嫁』フルカラー版 2021年 講談社
神保昌登監督 映画 五等分の花嫁 松岡禎丞 花澤香菜 竹達彩奈 伊藤美来 佐倉綾音 水瀬いのり出演 2022年 ポニーキャニオン
株式会社MAGES. 映画「五等分の花嫁」 ~君と過ごした五つの思い出~ 2022年6月2日発売

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